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第二部
44話 久々の父上と兄上。正徳寺にて1
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それから、私と信長くんの内政チート(仮)は、はっきり言って困難を極めた。
「ぜんっぜん遊べねーじゃん!なんで俺だけー!」
「それはこっちのセリフよ!なんで私が内政チートしなきゃならないのよ!天下人になるんでしょ!?」
「そんなジイみたいなこと言うなって!もうやだ!全部ミツやって!」
「こらーーーー!」
家督を継いだって別に今までと変わるものじゃないと思ってたら、意外とやることが多くて信長くんは苦手な執務に追われた。
私も、戦に出してもらう為にもまずは家の中のことをちゃんと片づけて、とお手伝いしたのだが、いかんせん生まれついての脳筋姫。戦国時代の政治や情勢に疎いのもあって、あまり戦力にならなかった。
内政チートって、やっぱただ現代人が転生したってだけじゃなくて、転生先の地頭の良さとか、前世でちゃんと勉強してたかとかが重要なのね。
わたわたしてる夫婦を見かねてか、今なら取り入れると思ってか、じいやさん以外の家臣のみなさんがよかれと手や口を出してきて、それらの対応も大変だった。
ちなみにこの間、信長の親戚が戦しかけてきたりした。(オイ!)
しかしこの我儘おぼっちゃま信長くん、「皆やっといて~」と放り投げるも何気に人選が上手い。
適当にやってるようで案外適格、と、内政得意な十兵衛が言っていた。
長男のくせに甘え上手というかなんというか……これもいずれ覇王になる子の資質なんだろうか。
そしてようやく、十兵衛が苦虫を噛み潰したような表情で嫌々組んでくれた、兄上との三者面談の日が来た。
丁寧な手紙でやりとりして日取りと場所を決めて、連れてく人数を揃えて馬を用意して……全部十兵衛がやってくれた。ありがとう、ごめん。
お天気も晴れてて絶好のピクニック日和。なので、久々に父上と兄上に私の手料理でも、と思って厨房を借りてお菓子を焼いた。
「帰蝶様、これはなんですの?」
「うーん、プチパンケーキ、のつもりが……」
「ぷちぱん?」
美濃でもよく作ってた、パンケーキのお持たせ版。のつもりだったんだけど……
「どらやきとも言います」
「どらやき……ですの」
連れて来た侍女のあさちゃんが、可愛く小首をかしげた。あとでこの子にも一個あげよう。
ピクニック感を出すために入れた竹製の手提げを、あさちゃんに手渡しお願いする。
実はこれ、十兵衛と二人で作ってるうちに、厨房で作り置きのあんこを見つけて調子に乗り、間に挟んだらどら焼きが爆誕してしまったのだ。
いやいやこれは駄目でしょ。高価な砂糖を使いすぎるとまた父上に怒られ……と味見だけでやめようと思ったのだが、
「帰蝶、これ美味しいよ!道三様にも召し上がっていただくべきだよ!!」
と珍しく興奮した十兵衛のゴリ押しにより、手土産はどら焼きになった。
前から思ってたけど、あの子ぜったい甘いもの好きよね。
信長くんも甘いもの作ってあげると喜ぶし、趣味あうんだから仲良くやってよ。
指定されたお寺まで着いたら、十兵衛を含むお伴のみなさんには待機していてもらって、私と信長だけが部屋に入る。
部屋には最初から兄上がいて、しまったと思った。
立場的に、お待たせしてしまったのはよくない。心なしか、久々に会った妹に向けるにはちょっと怖めの目つきだ。お会いしてないここ数年で、目つきの悪さに拍車がかかったのでなければ。
「お初にお目にかかります。織田上総介信長です」
「お久しぶりです、義龍兄上」
斎藤家代々の悪役顔の兄上に臆することなく、信長はピッと整えた背を折って綺麗に礼をした。私もそれに続く。
「なんだ、裸で走り回ってるって聞いたのに、まともな格好してるじゃねえか。つまらねえな」
「私が着せたんですよ」
裸はだいぶ尾ひれがついてるけど、いつもの格好で兄上の前に出たりしたら、ぶった斬られちゃうのは必至。
私の渾身のスタイリングに、兄上も満足してくれたようでよかった。
まあ、織田家では最強を誇ってる(と思う)信長と、斎藤家最強の兄上でどっちが勝つか、見てみたい気もしたけど。
それにしても、皺のない新品の袴を穿いて髪も整えると、めちゃくちゃ見目が良くなるこの夫。
これはアレだ、いつも天然元気系少年のスチルしかなかったキャラが、突然礼服スチルが発表されて乙女達が「尊……」と呟いて死ぬやつ。
アイドルだったら推してる。(今世3回目。)
「それと、なんだあれ。鉄砲と槍の重装備の奴らばっか連れてきやがって、どっからの急襲かと思ったぞ」
「えっ銃はせっかくいただいたので、ちゃんと使ってるのを見せようと……」
「槍もあった方がかっこいいだろ?」
「阿保か!」
怒られてしまった。
そろそろ本題へ移りたいところだが、怖いので先にどらやきを納めておこう。
「あ、兄上、今日は久々にお菓子を焼いてきたんです。一緒にいかがですか?」
「あ?お前まだそんなままごとみてぇなことしてんのか」
「ままごととは失礼な!私は毎回本気で作ってますよ!お茶を淹れてもらっておやつにしましょう!?ね!!?」
商談の席には甘いものと飲み物は必須。あとは場を和ませるトークよ。
「ぜんっぜん遊べねーじゃん!なんで俺だけー!」
「それはこっちのセリフよ!なんで私が内政チートしなきゃならないのよ!天下人になるんでしょ!?」
「そんなジイみたいなこと言うなって!もうやだ!全部ミツやって!」
「こらーーーー!」
家督を継いだって別に今までと変わるものじゃないと思ってたら、意外とやることが多くて信長くんは苦手な執務に追われた。
私も、戦に出してもらう為にもまずは家の中のことをちゃんと片づけて、とお手伝いしたのだが、いかんせん生まれついての脳筋姫。戦国時代の政治や情勢に疎いのもあって、あまり戦力にならなかった。
内政チートって、やっぱただ現代人が転生したってだけじゃなくて、転生先の地頭の良さとか、前世でちゃんと勉強してたかとかが重要なのね。
わたわたしてる夫婦を見かねてか、今なら取り入れると思ってか、じいやさん以外の家臣のみなさんがよかれと手や口を出してきて、それらの対応も大変だった。
ちなみにこの間、信長の親戚が戦しかけてきたりした。(オイ!)
しかしこの我儘おぼっちゃま信長くん、「皆やっといて~」と放り投げるも何気に人選が上手い。
適当にやってるようで案外適格、と、内政得意な十兵衛が言っていた。
長男のくせに甘え上手というかなんというか……これもいずれ覇王になる子の資質なんだろうか。
そしてようやく、十兵衛が苦虫を噛み潰したような表情で嫌々組んでくれた、兄上との三者面談の日が来た。
丁寧な手紙でやりとりして日取りと場所を決めて、連れてく人数を揃えて馬を用意して……全部十兵衛がやってくれた。ありがとう、ごめん。
お天気も晴れてて絶好のピクニック日和。なので、久々に父上と兄上に私の手料理でも、と思って厨房を借りてお菓子を焼いた。
「帰蝶様、これはなんですの?」
「うーん、プチパンケーキ、のつもりが……」
「ぷちぱん?」
美濃でもよく作ってた、パンケーキのお持たせ版。のつもりだったんだけど……
「どらやきとも言います」
「どらやき……ですの」
連れて来た侍女のあさちゃんが、可愛く小首をかしげた。あとでこの子にも一個あげよう。
ピクニック感を出すために入れた竹製の手提げを、あさちゃんに手渡しお願いする。
実はこれ、十兵衛と二人で作ってるうちに、厨房で作り置きのあんこを見つけて調子に乗り、間に挟んだらどら焼きが爆誕してしまったのだ。
いやいやこれは駄目でしょ。高価な砂糖を使いすぎるとまた父上に怒られ……と味見だけでやめようと思ったのだが、
「帰蝶、これ美味しいよ!道三様にも召し上がっていただくべきだよ!!」
と珍しく興奮した十兵衛のゴリ押しにより、手土産はどら焼きになった。
前から思ってたけど、あの子ぜったい甘いもの好きよね。
信長くんも甘いもの作ってあげると喜ぶし、趣味あうんだから仲良くやってよ。
指定されたお寺まで着いたら、十兵衛を含むお伴のみなさんには待機していてもらって、私と信長だけが部屋に入る。
部屋には最初から兄上がいて、しまったと思った。
立場的に、お待たせしてしまったのはよくない。心なしか、久々に会った妹に向けるにはちょっと怖めの目つきだ。お会いしてないここ数年で、目つきの悪さに拍車がかかったのでなければ。
「お初にお目にかかります。織田上総介信長です」
「お久しぶりです、義龍兄上」
斎藤家代々の悪役顔の兄上に臆することなく、信長はピッと整えた背を折って綺麗に礼をした。私もそれに続く。
「なんだ、裸で走り回ってるって聞いたのに、まともな格好してるじゃねえか。つまらねえな」
「私が着せたんですよ」
裸はだいぶ尾ひれがついてるけど、いつもの格好で兄上の前に出たりしたら、ぶった斬られちゃうのは必至。
私の渾身のスタイリングに、兄上も満足してくれたようでよかった。
まあ、織田家では最強を誇ってる(と思う)信長と、斎藤家最強の兄上でどっちが勝つか、見てみたい気もしたけど。
それにしても、皺のない新品の袴を穿いて髪も整えると、めちゃくちゃ見目が良くなるこの夫。
これはアレだ、いつも天然元気系少年のスチルしかなかったキャラが、突然礼服スチルが発表されて乙女達が「尊……」と呟いて死ぬやつ。
アイドルだったら推してる。(今世3回目。)
「それと、なんだあれ。鉄砲と槍の重装備の奴らばっか連れてきやがって、どっからの急襲かと思ったぞ」
「えっ銃はせっかくいただいたので、ちゃんと使ってるのを見せようと……」
「槍もあった方がかっこいいだろ?」
「阿保か!」
怒られてしまった。
そろそろ本題へ移りたいところだが、怖いので先にどらやきを納めておこう。
「あ、兄上、今日は久々にお菓子を焼いてきたんです。一緒にいかがですか?」
「あ?お前まだそんなままごとみてぇなことしてんのか」
「ままごととは失礼な!私は毎回本気で作ってますよ!お茶を淹れてもらっておやつにしましょう!?ね!!?」
商談の席には甘いものと飲み物は必須。あとは場を和ませるトークよ。
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