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消毒という名の快楽地獄
庵の欲しいもの
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「何かあったのか?」
運転している瀧雄の代わりに電話に出た龍之介が亮にそう問うた。すると亮はまさか龍之介が出るなんて思ってもいなかったらしく少し焦ったように挨拶をし始める。
『わ、若ですか!?お疲れ様です。』
「瀧が今運転中だからな。代わりに俺が出たんだ。」
『そうだったんですね。』
「それより要件はなんだ?急用か?」
亮は普段あまり電話をかけない。ましてや今瀧雄達は仕事中だ。亮もそれを知っている。そんな状況で電話を亮がかけてきたので龍之介は正直心配だったのだ。もしかしたら庵に何かあったのかもしれない…と。だがそんな心配は無用だったようで龍之介の思っていたことの斜め上を亮は話し始めた。
『いえ、急用ではないんですが庵がパンを食べたいと言ってるので瀧に頼もうとしたんです。』
「パンか…。」
『お忙しいので無理は言いません。庵もテレビを見てボソッと嘆いた程度なのでもし良かったらなぁって思って。』
龍之介はそう言われて悩んだ。だって分からないから。パン屋になんて龍之介は行かない。パンを食べるとしてもあったものを食べる。そんな龍之介だからパンに詳しくない。そのため龍之介は庵の好物を知るために亮に再び問いかけた。
「おい亮。」
『はい。』
「何パンがいいか庵に聞いてくれ。」
『…若。ありがとうございます。』
亮はそう返事をすると携帯から少し離れた。そして歩き始めたようで龍之介の方にも亮の足音が聞こえてきた。
『庵!』
電話も向こうの亮が庵の名を少し大きな声で呼んだ。どうやら2人は少し離れているようだ。亮が歩いていた時からそれは感じていた龍之介だが思っているよりも離れていたらしい。ということは亮は庵にサプライズがしたいということになる。まぁそうすれば必然的に庵の喜ぶ姿が見れる。亮はそれを狙っているのだろう。しかしそれは叶わぬ夢になってしまった。だがそれでも庵の好物を聞いて庵が1番欲しいものをあげられる。それは亮にとってもとても嬉しいことだからまぁ結果オーライだろう。そして亮は庵との会話が終わったようで再び龍之介に話しかけた。
『若。お待たせしました。』
「待ってない。んで、庵はなんと言った?」
『庵は塩?がついててそれにバターもついているパンが食べたいそうです。なんか学校にいってた時お金無くて買えなかったけどずっと食べたいって思ってたらしいですよ。』
亮のその言葉を聞いて龍之介は思わず首を傾げそうになった。そんなパンがあるのか…と。だが塩とバターだ。絶対に美味しい。龍之介は自分まで食べたくなってしまった。そのため…。
「分かった。瀧に探させてみる。」
『若、本当にありがとうございます。お気をつけてお帰りくださいね。』
「ああ。」
『では、失礼します。』
亮のその言葉を聞いて龍之介は電話を切った。そしてすぐさま瀧雄に話しかける。
「瀧、お前パン屋知ってるか?」
「んーそうですね…。」
瀧雄はそう言い少し悩んでいる様子だった。そんな瀧雄をみて龍之介は不思議がる。どうして悩む必要があるのか…と。
「知ってるには知ってますけどちょっと入りずれぇかも…。」
「は?なんでだよ。」
「若い女が多いイメージのパン屋でして…。」
「ちゃちゃっと買って帰ればいいだろ。」
龍之介はそう言ったが瀧雄は顔をしかめる。それにはちゃんとした理由がある。その理由というのは…。
「…もちろん若も来ますよね?」
「行かねぇよ。」
「…はは、ですよね。」
初めから期待はしていなかったものの龍之介にそう言われて瀧雄は落ち込んだ。本当に入りにくいのだ。しかも瀧雄は今スーツを着ている。そんな状態で女が多いパン屋なんかに入ったらと考えるだけでゾッとする。一応瀧雄も男だ。女の視線は気になるのだ。痛々しいあの視線が…。そのため行きたくなかった瀧雄だが全ては庵のため。だから行かない訳にはいかなかった。
「分かりました。とりあえずそこ目指します。」
「ああ。」
そんなこんなでパン屋に着いて瀧雄は本当にちゃちゃっと買ってきた。相当店の中が息苦しかったらしい。瀧雄はまるで仕事終わりのようにやつれていた。
「はは、そんなに大変だったか?たかがパンを買ってくるだけだろう。」
「笑いすぎですよ若…。てかそういうふうに言うなら若が行ってくれば良かったじゃないですか…!」
「なんで俺が行かないといけねぇんだよ。こういうのは部下の仕事だろ?」
「…そうですね。」
瀧雄はそういうとハンドルに頭をつけてため息をついた。そして瀧雄は思った。こんな状態で運転できない。なので…。
「俺はもうほんとに疲れました。なので若が運転してください。」
「たく、仕方ねぇな。」
「え?いいんですか?」
まさか了承してくれると思わなかったので瀧雄は目を点にして龍之介を見た。そんな瀧雄を見て龍之介は微笑む。
「いいっつってんだろ。早く退け。」
「あ、ありがとうございます…。」
瀧雄はそうお礼を言うと一旦車の外に出た。そして助手席側から車に乗り込む。それを確認した龍之介は車を発進させた。そこから数十分ほど車に乗り家に着いた。
「若、運転ありがとうございました。」
「たまにはな。」
「助かりました。」
「そうか。」
龍之介はそう言うとそこからは何も話さなかった。そして歩き続けた。庵が待っているであろう部屋を目指して…。
運転している瀧雄の代わりに電話に出た龍之介が亮にそう問うた。すると亮はまさか龍之介が出るなんて思ってもいなかったらしく少し焦ったように挨拶をし始める。
『わ、若ですか!?お疲れ様です。』
「瀧が今運転中だからな。代わりに俺が出たんだ。」
『そうだったんですね。』
「それより要件はなんだ?急用か?」
亮は普段あまり電話をかけない。ましてや今瀧雄達は仕事中だ。亮もそれを知っている。そんな状況で電話を亮がかけてきたので龍之介は正直心配だったのだ。もしかしたら庵に何かあったのかもしれない…と。だがそんな心配は無用だったようで龍之介の思っていたことの斜め上を亮は話し始めた。
『いえ、急用ではないんですが庵がパンを食べたいと言ってるので瀧に頼もうとしたんです。』
「パンか…。」
『お忙しいので無理は言いません。庵もテレビを見てボソッと嘆いた程度なのでもし良かったらなぁって思って。』
龍之介はそう言われて悩んだ。だって分からないから。パン屋になんて龍之介は行かない。パンを食べるとしてもあったものを食べる。そんな龍之介だからパンに詳しくない。そのため龍之介は庵の好物を知るために亮に再び問いかけた。
「おい亮。」
『はい。』
「何パンがいいか庵に聞いてくれ。」
『…若。ありがとうございます。』
亮はそう返事をすると携帯から少し離れた。そして歩き始めたようで龍之介の方にも亮の足音が聞こえてきた。
『庵!』
電話も向こうの亮が庵の名を少し大きな声で呼んだ。どうやら2人は少し離れているようだ。亮が歩いていた時からそれは感じていた龍之介だが思っているよりも離れていたらしい。ということは亮は庵にサプライズがしたいということになる。まぁそうすれば必然的に庵の喜ぶ姿が見れる。亮はそれを狙っているのだろう。しかしそれは叶わぬ夢になってしまった。だがそれでも庵の好物を聞いて庵が1番欲しいものをあげられる。それは亮にとってもとても嬉しいことだからまぁ結果オーライだろう。そして亮は庵との会話が終わったようで再び龍之介に話しかけた。
『若。お待たせしました。』
「待ってない。んで、庵はなんと言った?」
『庵は塩?がついててそれにバターもついているパンが食べたいそうです。なんか学校にいってた時お金無くて買えなかったけどずっと食べたいって思ってたらしいですよ。』
亮のその言葉を聞いて龍之介は思わず首を傾げそうになった。そんなパンがあるのか…と。だが塩とバターだ。絶対に美味しい。龍之介は自分まで食べたくなってしまった。そのため…。
「分かった。瀧に探させてみる。」
『若、本当にありがとうございます。お気をつけてお帰りくださいね。』
「ああ。」
『では、失礼します。』
亮のその言葉を聞いて龍之介は電話を切った。そしてすぐさま瀧雄に話しかける。
「瀧、お前パン屋知ってるか?」
「んーそうですね…。」
瀧雄はそう言い少し悩んでいる様子だった。そんな瀧雄をみて龍之介は不思議がる。どうして悩む必要があるのか…と。
「知ってるには知ってますけどちょっと入りずれぇかも…。」
「は?なんでだよ。」
「若い女が多いイメージのパン屋でして…。」
「ちゃちゃっと買って帰ればいいだろ。」
龍之介はそう言ったが瀧雄は顔をしかめる。それにはちゃんとした理由がある。その理由というのは…。
「…もちろん若も来ますよね?」
「行かねぇよ。」
「…はは、ですよね。」
初めから期待はしていなかったものの龍之介にそう言われて瀧雄は落ち込んだ。本当に入りにくいのだ。しかも瀧雄は今スーツを着ている。そんな状態で女が多いパン屋なんかに入ったらと考えるだけでゾッとする。一応瀧雄も男だ。女の視線は気になるのだ。痛々しいあの視線が…。そのため行きたくなかった瀧雄だが全ては庵のため。だから行かない訳にはいかなかった。
「分かりました。とりあえずそこ目指します。」
「ああ。」
そんなこんなでパン屋に着いて瀧雄は本当にちゃちゃっと買ってきた。相当店の中が息苦しかったらしい。瀧雄はまるで仕事終わりのようにやつれていた。
「はは、そんなに大変だったか?たかがパンを買ってくるだけだろう。」
「笑いすぎですよ若…。てかそういうふうに言うなら若が行ってくれば良かったじゃないですか…!」
「なんで俺が行かないといけねぇんだよ。こういうのは部下の仕事だろ?」
「…そうですね。」
瀧雄はそういうとハンドルに頭をつけてため息をついた。そして瀧雄は思った。こんな状態で運転できない。なので…。
「俺はもうほんとに疲れました。なので若が運転してください。」
「たく、仕方ねぇな。」
「え?いいんですか?」
まさか了承してくれると思わなかったので瀧雄は目を点にして龍之介を見た。そんな瀧雄を見て龍之介は微笑む。
「いいっつってんだろ。早く退け。」
「あ、ありがとうございます…。」
瀧雄はそうお礼を言うと一旦車の外に出た。そして助手席側から車に乗り込む。それを確認した龍之介は車を発進させた。そこから数十分ほど車に乗り家に着いた。
「若、運転ありがとうございました。」
「たまにはな。」
「助かりました。」
「そうか。」
龍之介はそう言うとそこからは何も話さなかった。そして歩き続けた。庵が待っているであろう部屋を目指して…。
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