血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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日常

立て直し

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どれほど泣いてどれほどの涙を流したか分からない。庵はそれほど泣きわめいていた。そして数十分が経った頃だろうか。やっと庵が落ち着いてきて嗚咽がだんだんと聞こえなくなってきた。そんな庵の頭を龍之介はずっと撫でていた。

そしてその頃リビングにいた亮と瀧雄は…。



「なぁ瀧。」

「なんだよ。」

「庵、大丈夫だと思うか?」

「は?どういう意味だ。」

「だから普通に戻れるのかなって思ってよ。」



亮がそう言うと瀧雄は大きくため息をついた。そして瀧雄は亮に…。



「戻れるかなと思って?ふざけてんのかお前。」

「はぁ?ふざけてねぇよ。俺は真面目な話をしてんだ。」

「だったら尚更だ亮。」

「は?さっきからお前何言ってんだよ。」

「あのな亮、庵が元の生活に戻れるか戻れないかじゃねぇんだよ。なんとしてでも戻してやるんだよ。俺たちがな。」



瀧雄がそう言うと亮はハッとしたように息を飲んだ。そんな亮に瀧雄は話し続けた。



「だから亮、お前も強くなれよ。今は組長が犠牲になってくれてんだから俺らも頑張るぞ。庵が笑って過ごせるようになるまでな。」

「…ああ。」



瀧雄は分かっていたのだ。龍之介が自分たちのために庵と2人っきりになったということを。そしてそれを亮に伝えた。その事実を知った亮は当然気持ちを切り替えた。

そんなことがリビングで行われていたちょうどその時寝室ではーーー。



「…りゅう。」



涙が完全に止まり落ち着いた様子の庵が龍之介の名をどこか寂しそうにそう呼んだ。そんな庵の様子を伺いながら龍之介は返事をした。



「どうした庵。」

「…俺の事捨てないで。」

「…………。」



何を言い出すのかと思えば庵は捨てないでだなんて戯言を言った。龍之介が庵を捨てるはずなんてないのに。龍之介は言ってしまえば庵を監禁してしまうほど庵に執着しているのだ。だから捨てるなんてことがあるはずないのだ。そのため龍之介は…。



「捨てる訳ねぇだろ。何言ってんだ。」

「…ほんとに?」

「あったりめぇだ馬鹿。仮にもしお前が俺から離れようとしても俺は絶対に離してやらない。そのぐらい俺はお前に執着してんだ。だからな庵、変な事を考えなくていい。ここがお前の居場所なんだから。」

「おれの…?」

「ああ。もう周りの目を気にして生きなくていい。お前らしく生きろ。」



庵の過去を調べ尽くし全てを知っている龍之介はそう言った。もう庵にあんな思いをして生きて欲しくないから。そしてそれを庵に知って欲しかったから。だが庵は龍之介からそう言われても不安そうにしていた。そのわけは…。



「そんなことしたらバチが当たっちゃいそうだね…。」

「バチか…。」



庵は幸せすぎて怖いのだ。何か不幸なことが起こるかもしれないから。そんな庵の嘆きを聞いて龍之介は庵に微笑んだ。



「それを言うなら俺の方だな。」

「…どうして?」

「そりゃ幸せだからだ。それに俺はこれまで酷い事ばかりしてきたからな。お前は知らねぇだろうが昔の俺はかなり酷かったんだ。」

「…でもりゅうは俺に優しい。」

「お前だからだ。」



庵を愛しているから。こんな存在に出会えるなんて龍之介は思えなかった。思いもしなかった。だから龍之介は自分でも驚いている。人を殺さずに生きている自分に…。庵と出会ったとこで龍之介はヤクザとは程遠いほど優しい人物になってしまったのだ。そんな龍之介に庵は…。



「龍の過去がどんなでも俺は気にしない。」

「そうか。お前は優しいな。」



と、龍之介は言って庵の頬に軽くキスをした。それも何度も何度もだ。その龍之介からのキスが終わると庵は龍之介のことを真剣な顔をして見た。



「ねぇりゅう。」

「なんだ?」

「ほんとのこと教えて。」



庵がそう言うと龍之介は思わず身構えてしまった。それもそのはず。今の庵の口からは何が出てくるか想像すら出来なかったから。そのため龍之介は身構えたのだ。そんな龍之介の顔を見ながら庵は話し始めた。



「龍のお父さん…本当はどこにいるの?」

「…………。」



龍之介は黙り込んでしまった。迷ったのだ。本当のことを言うべきかどうかを。そんなふうに黙り込んでしまった龍之介を見て庵は…。



「…生きて、ないの?」



と、言った。そんな庵を見て龍之介は腹を括った。本当のことを言おう、と。龍之介は庵に嘘をつきたくなかったから。



「そうだ。親父は死んじまった。」

「それって…俺が連れ去られたことに関係してる?」

「そうだな。けどこの事件がなくとも親父は益田に殺されてただろうな。そもそもの元凶はあいつがラットだと俺らが気づけなかった事だからよ。」



そういうことで龍之介は庵を庇ったつもりだった。いや庇ったと言うよりかは庵は悪くない。そう伝えたつもりだった。しかし庵にはそれが伝わっていなかったようで庵は物凄く罪悪感に包まれた表情になってしまった。



「庵。そんな顔をするな。お前は何も悪くない。むしろこんな事に巻き込んじまって悪い。怖い思いをさせちまったな。」

「…違うよ龍。この事件は俺のせいだ。ごめんなさい…。」

「もう何も言うな庵。過去に何があろうと誰が何を言おうと悪いのはお前じゃない。」

「…でも、」

「でもじゃねぇ。お前は悪くない。なら殺人事件で殺された方が悪いのか?」

「…それは違うっ、」



庵は泣きそうな声でそう言った。自分のせいで人が死んでしまった。その罪悪感に潰されていたのだ。決して庵は悪くないのに。だからそれを伝えようと龍之介は必死に庵を抱きしめ説得するように庵に話し続けた。



「そうだろ?お前はそれを言ってるんだ。これが仮にお前が過去に栗濱にレイプをされたことが原因で起こったのなら尚更お前は悪くない。何も悪くねぇ。」

「……………っ。」

「だからな庵、お前は何も責任を感じなくていい。」

「………うんっ、」

「責任を感じるべきは俺だ。お前の母親すらも殺してしまったからな。」

「…違うよ龍。あれは、俺の母さんじゃない。バケモノだ。」



確かに庵の母親はクソ野郎だった。庵はあの女に母親らしいことを何ひとつとしてされてないのだから。しかし龍之介はあの女が庵を殺さず生かしておいてくれたことだけは感謝している。そうじゃなければ今の幸せは無いのだから。



「そう言ってやるな庵。あの女がいなきゃ俺とお前は出会えなかったんだからよ。」

「そうだね…。」



と、庵は少し表情を明るくしてそう言った。そんな庵を見て龍之介は…。



「よし庵。暗い話はここまでだ。顔を上げろ、な?」

「うん………っ。」

「泣くな庵。男だろ?」

「…うっ、ん、」



涙がせっかく止まったのにまた庵は泣き始めてしまった。だから龍之介は今度も庵を強く抱き締めた。お前は独りじゃない。それを庵に伝えるために。そして龍之介は庵に…。



「庵。」

「なに…?」

「俺はこの組を1から立て直すつもりだ。お前は俺を支えてくれるか?」

「もちろんだよ、龍。」

「ありがとうな。」

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