血の繋がりのない極道に囲まれた宝

安達

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脱獄

庵の心情の変化

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*庵視点











































「ああ、そういや親父の件でお前に伝えとかなきゃなんねぇ事があるんだ。」



しばらくの間2人で何も言わずに俺たちは抱き合ってた。そんな沈黙を破って龍が俺にそう言い出した。だから俺はちょっと身構えてしまった。自分から言ったこととはいえ龍のお父さんが亡くなったという話を聞くとどうしても罪悪感に包まれてしまうから。



「…なに?」

「そんなに身構えなくていい。」




俺があまりにも身構えてしまったから龍にそう言われてしまった。俺はなにかする度に龍に気を使わせてしまう。その度にそんな自分が嫌になってしまう。



「ごめん龍。話して大丈夫だよ。」

「無理してねぇか?お前が聞きたくないなら俺は話さねぇよ。」

「ううん、大丈夫。聞きたいから聞かせて。」



本当は聞きたくない。何も聞きたくない。今は龍と2人で静かに過ごしていたい。だけどこれ以上俺は龍に変な気を使わせたくなかったから聞きたくないという気持ちを悟られないようにそう言った。そしたら龍は俺の頭を撫でてほっぺにキスしてきた。その後ゆっくり話し始めたんだ。俺の聞きたくない話を…。



「親父はな、死ぬ事で俺達を守ってくれたんだ。特にお前をな。」

「え、どうして…?」



そういう展開になってるとは想像してなかった…。俺を助ける?なんのために?なんのメリットがあるの…。俺なんかを助けても何も変わんないのに…。



「まぁ元々親父は長くはなかったって言うのもあるがお前は俺を変えてくれたからな。」

「…俺そんなこと、してないよ。」



変えてもらったのは俺の方だ。俺はずっと死にたかった。誰にも言ってないしそれを口にしたことはないけどね。生きてる意味がわからなかった。けど絶対に幸せになってやるって気持ちで生きてきた。俺だって…家庭がめちゃくちゃだって俺は幸せになれる。それが証明したかったから。けどそれが龍と出会ったことで叶った。龍のおかげで。



「いいや、してるんだ。お前は俺の過去を知らねぇからそういう風に言ってくれるんだろうが親父は全部知ってるからな。俺が過去に何をしてきたのか。だからそれを変えてくれたお前に親父はもの凄く感謝してたんだ。」

「そうなの…?」

「ああ。だからきっと親父はもう大丈夫…そう思って自分を犠牲にしてまで俺達を生かしてくれたんだと俺は思ってる。」



自分を犠牲にして…。そこまでして守るってかっこいいな。これが本当の親の姿なんだろうな…。そんな風に俺が龍に悟られないように落ち込んでいると龍が俺の顔を鷲掴みにしてニコって笑ってきた。



「だからな庵、大切に生きような。親父がくれた命だ。死ぬなんて思わないでくれ。」



そっか…。そうだよね…。龍は直ぐに俺の変化に気づくから俺が死にたいって思ってることに気づいてたんだ。



「どれだけ辛くとも絶対に命だけは絶つな。約束してくれるか?」



どんなに…。俺は今その壁に直面してる。あの事件はもちろん辛かったよ。痛いのも嫌だったし苦しいのも辛かった。けどそれ以上に龍のお父さんが死んでしまった事実を受け入れられなかった。俺のせいで死んだから。俺のせいで益田さんが動き出してしまったから。だから俺は龍にそう聞かれて…。



「…わかんない。わかんないよ。」

「そうか。」



きっと龍はこのまま俺と居たら不幸になる。実際俺のせいでまた1人死んでしまった。お母さんだってそう。俺が生まれなければ死ぬ事はなかった。ああもう駄目だ。一度ネガティブな考えをしたら取り戻せない。どうしよう…。悪いのは俺なのに。なんか…泣きそうだ…。そんな風に俺が自分に打ちのめされそうになっていると…。



「庵。下を向くな。分かんねぇなら俺が守ってやるから。お前が自ら生きたいと思うようになるまでずっとな。」

「……………。」



どうして?どうしてそんなこと言ってくれるの?俺のせいで龍のお父さん死んじゃったんだよ…。



「今は辛くとも時間が解決してくれる。いつかまた安心して過ごせるようになる。その日まで俺が全力でお前を支えてやる。」

「…………。」



なんでだよ…。龍もいつかは俺の事捨てる可能性だってあるのになんでそんな期待を持たせるの?俺は幸せを知らなかった。だから幸せから不幸になるのが余計に辛いんだ…。それだったら俺はその前に龍から離れた方がいいのかもしれない…。どうしよう…。もう俺には逃げるって手段しか残されてない…。



「りゅう…。」

「なんだ?」

「仕事…行かなくていいの?」



俺はさりげなく龍のことを探ってみた。いつまでここにいるのか。ずっと龍がここにいられたら俺は逃げることが出来ないから。俺が逃げることで龍が幸せになる。それなら俺はここからいなくなった方がいい。なのに…。



「基本的に俺は顧客リストの管理とかパソコンで出来る内容の仕事が多いからな。だから大丈夫だ。お前の傍にずっといてやれる。」

「…そっか。」



じゃあ逃げられないな。暫くは龍たちに見張られて生活することになるだろうから。多分龍達は俺が自殺すると思ってる。だから四六時中見張られてるんだろうなぁ。どうしよう。これじゃあほんとに逃げられないよ………。けど本音は逃げたくない…。ここにいたい。龍とみんなと死ぬまで暮らしたい。けどそれじゃダメなんだ。俺がいるとみんなが不幸になるから…。



「庵?」



俺があんまりにも考え込んでしまったからか龍がそう俺の名前を呼んできた。それも心配そうに。だから俺は…。



「なに?」



笑顔でそう答えた。元気だよって龍に伝えるために。少しでも早くこの家から出るために。



「…いやなんでもねぇよ。そろそろリビングに戻るか?」

「ううん、ここにいる。それとちょっとだけ1人になってもいい?」

「……………。」



さすがになにか怪しまれたかな…。俺が1人になりたいなんて言うのは珍しいから。しかもあんなことがあったあとでさっき泣きわめいてたからな。だからもしかしたら龍は俺を1人にしてくれないかもしれない。けど言わなきゃ分からない。だから俺は静かに龍の返事を待った。すると…。



「分かった。お前がそうしたいならそうしろ。俺らはリビングにいるから困ったらいつでも呼べ。」

「ありがとう。」


俺がそう言うと龍は口と頬にキスをしてきた。やめてよ。せっかく逃げようと決心したのにそんな嬉しいことをされたら緩いでしまう。けどダメだ。俺はここから逃げる。ここから出るんだ。そんなことを俺は考えながら寝室を出ていく龍を笑顔で見送った。
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