完結!【R‐18】獣は夜に愛を学ぶ(無垢獣人×獣人にトラウマを持つ獣人殺し)

路地裏乃猫

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殺意

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 それから、どれほど求め合ったかわからない。

 気付くと、いつしか周囲には朝の匂いが漂いはじめていた。森の朝はまず匂いから始まる。清澄な朝露の香りが鼻腔をくすぐると、間を置かずに今度は空が白みはじめる。

「リク」

 背中を包むぬくもりに、そっとロアは囁きかける。何だかんだで獣化したこいつは暖かいな、なんてことを思いながら。

「……朝、だな」

 今もお前は、俺の知るリクか。そう、本当は問いたかったのだけど、今の今まで散々貪り合っておいてそれはないだろうと思い直し、ぐっと問いを呑み込む。仮にリクが獣性に堕ちていたとして、その責任の一端は間違いなくロアにあるのだから。

 だとしても、ロアは求めざるをえなかったし、それはリクも同じだろう。やがて――

「うん、だね」

 返されたのは、ロアの知る無垢な声色。そのことにロアは密かに胸を撫で下ろす。が、考えてみればとんでもない話だ。あの獣人が、欲望を知ってなお正気を、理性を保っている。一度それを味わうと、それこそ日がな一日獣欲に狂う種族が……

 そんなロアの感動はしかし、不意に肌を刺した気配で帳消しになる。

「気付いてるか、リク」

 なおも背中をリクに預けたまま問う。すると肩越しに、「うん」と即答が返ってくる。

「あいつだ。間違いない」

「相変わらず殺意がダダ漏れだ。あんな調子で、よく獣人殺しで食っていこうと思ったもんだよ」

 吐き捨て、それでも念のために身を起こす。下に含んでいたリクのものがずるりと抜け、中に吐かれた精がごぼりと溢れる。それにしてもとんでもない量だ。が、考えてみれば、それこそ一晩じゅう銜え込んでいたのだ。

「また随分と出したな……」

「うん……ごめん」

「まあいい。後で温泉で洗い流せば済む話だ。お前も来い。酷い臭いだ」

 うなだれるリクの鼻を指で軽く弾くと、ロアは、きのう鎧と一緒に投げ捨てた剣をふたたび手に取り、鞘から抜く。と、それが合図だったかのように頭上で地面を蹴る音がする。

 その頃にはロアもリクも元いた岩の上を飛び去り、充分に間合いを取っている。その岩に――

「ロアぁアアア!」

 ガッ、と岩を穿つ鈍い音とともに降る黒い影。一瞬きらりと目に閃いたのは襲撃者の持つ白刃だろう。その刃の主は、仕留めそびれた獲物を目だけで追いかけながら、うう、と低く唸る。

 まるで獣だ、とロアは思う。単に人間に化けた獣人とも違う、魂そのものが獣に堕ちた何か。

「相変わらず礼儀がなっちゃいないな、ゲイン」

 ロアのいつもの軽口に、しかしゲインは、なおも獣の唸りで答える。普段なら、たとえ本意でないにせよ笑えない冗談で虚勢を張るゲインが、今は、そんななけなしの余裕すら失っているらしい。

「よくも……俺のロアを……ロア=リベルガを」

「……は?」

「返せェ! 俺の、俺だけのロア=リベルガを! ……憎悪と怒りで剣を振るう、最強の獣人殺し。俺の……」

「いや……いきなり何の話だよ」

 さすがに意味がわからない。怪訝な顔で問い返すと、なおもゲインは返せと吠える。参ったな、とロアは小さく溜息をつく。酒に酔っているのか、あるいは妙な幻術にかかっているのか。何にせよ今のゲインは素面しらふで付き合える相手じゃない。

「返さねぇなら……殺す。この手で、てめえを」

 そしてゲインは、一度はくうを切った刀の切っ先をふたたびロアに向ける。相変わらず言っていることは胡乱うろんだが、纏う殺意は間違いなく本物だ。

 なら、逆に話は簡単だ。とりあえず殺せばいいのだから。

「やってみな」

 刀を構え、ゲインを見据える。そんなロアの視線を遮るように立ちはだかる壁。いや、柔らかな毛に覆われた金色のこれは、いつの間にか見上げるほど大きくなったリクの逞しい背中。

 その背中をなおロアに向けたまま、振り返らずにリクは言った。

「俺に任せて、ロア」


※次回の更新は11月1日午後10時を予定しております。また、第十回BLコンテストも始まりました。よろしければ投票いただけると幸いです。
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