性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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 砦の魔法使いの一人が、僕を怒鳴る。

「なんなんだ貴様は!! 砦の魔法使いのくせに、砦の決定に逆らうのか!!?? だいたい、貴様は森の魔物退治をしているんじゃなかったのか!? それなのに、なぜこんなところをフラフラしている!! しかも、勝手に許可を出しただと!!?? どういうつもりだ!! お前にそんな権限があるはずないだろう!!」
「は、はずないって言われたって…………ぼ、僕だって、一応砦の魔法使いです!」
「黙れっっ!!」

 ……色々聞いたくせに黙れってなんだよ……しかも、また怒鳴るし……

 随分頭に血が昇ってるみたいだけど、彼らの怒りの矛先は、すでに警備隊じゃなくて僕の方に向いているみたいだ。

「さては、全て貴様の仕業だな!!?? 貴様がそいつらを先導したんだろう!! ふざけた真似をして……来い!! グレヴロオル様の前で説明してもらう! それから厳しい罰を受けるんだな!」

 ……そういうことを言い出すと思った。

 僕は、警備隊の隊長に振り向いた。そして、「行ってください」と小さな声で言う。
 すると、隊長は焦った様子で言った。

「き、貴様っ……どういうつもりだ!!」
「僕が連れて行かれている間に、砦に制限を解かせるための証拠を集めてください」
「ふざけるな! 俺たちを助ける気か!」
「僕たちも、このままだと魔物退治しにくくて困るんです!! 砦の魔法使いのが魔物退治をしていないなんて思われるのも嫌だし……お願いします!!」
「貴様っ……ま、待て! 貴様はどうなるんだ!?」

 どうって、僕は砦に連れ戻されるだけ。

 僕が先導したと言えば、警備隊のことが貴族たちに報告されることもないだろう。

 その間に、警備隊とヴァトズフィウズ様たちとで、なぜ砦が制限だの許可だのと言い出したのか調べてもらう。それが必要のないものだと証明できれば、制限はなくなり、警備隊が責められることもなくなり、全て解決するはずだ。

 警備隊の隊長に背を向けて、僕は、砦の魔法使いたちに振り向いた。

「分かりました。僕は砦に行きますから……」
「早く来い!! グレヴロオル様の前でお前のしたことを全て話すんだぞ!」
「わかりましたから、引っ張らないでください!!」

 そう叫ぶ僕の腕を、砦の魔法使いのうちの一人が強く掴む。

 大人しく連れて行かれようとした僕だけど、突然、力強い腕に包まれた。
 ヴァトズフィウズ様が僕を引き寄せて、抱き寄せてしまったんだ。

「あ、あのっ……ヴァトズフィウズさま?」

 びっくりして見上げても、彼は僕を離してくれない。じっと僕を見下ろして、少し怖い顔をしていた。

 どうしたんだ?
 もしかして、勝手な行動をしたから怒っているのか?

「あ、あのっ……僕、だ、大丈夫ですっ……! 僕が砦に戻っている間に、魔物はいないって証拠を集めてください! そしたら、許可なんかいらなくなって、森にも自由に入れるようになって、魔物退治もしやすくなります! そしたら……また一緒に街を歩いてください!!」

 少しの間だけだ。少し我慢すれば、すぐに戻ってこれる。

 それなのに、ヴァトズフィウズ様には、にべもなく「嫌だ」と言われてしまう。

「…………な、なんで…………」
「…………砦には、帰さない。俺たちは部隊だ。ずっと一緒だ」
「……え…………」

 こんな時に、何を言っているんだ。部隊じゃないって言ったのに……

 抵抗しようとしたけど、僕を見下ろすヴァトズフィウズ様の目があって、彼がとても真剣な顔をしていて、僕は、胸をひどく刺されたような気になった。

 僕……何か悪いことをしちゃったのか?

 ……だって、ほんの少しの間なのに。

 僕だって、砦に帰るつもりなんてない。ほんの少しの間、砦に戻ろうとしただけだ。

 それなのに…………なんで、そんなことを言うんだ?

 しかも、僕はそれが嬉しいなんて……

 ヴァトズフィウズ様は砦の魔法使いたちに振り向く。

「こいつの言っていることは、最初から最後まで全部口から出まかせだ」
「ちょっ…………ヴァトズフィウズ様!?」

 何を言い出すんだ。せっかく上手くいきそうだったのに。

 焦る僕だけど、ヴァトズフィウズ様は、砦の魔法使いたちを睨んで続ける。

「許可を出したのは俺だ。一緒に行こうと言ったのも、俺だ。文句があるなら俺に言え」

 そう言うヴァトズフィウズ様のもとに、一匹の使い魔が降りてくる。それは、僕を追い回していた時に使っていた、竜のようなあの使い魔だ。

「森の中なら、使い魔に見て回らせた。この辺りを飛ばしたが、確かに魔物はいない。お陰で、せっかくの素材を手に入れるチャンスが台無しだ。どうしてくれる?」
「そのようなことを言われても困ります。我々はグレヴロオル様にっ……」
「だったらグレヴロオルに指示を仰ぐんだな」

 言われて、魔法使いたちはひどく悔しそう。だけど、今度は怒鳴ったり手を出したりはしない。ヴァトズフィウズ様に手を上げれば、彼の一族が黙っていないからな……

 そして、ひどく苛立ったように、こちらに向かっていった。

「このことは、グレヴロオル様に報告しておきます! あなた方もっ……ここにはここのルールがあるのですから! あまり無茶なことばかりなさらないようにっ!!」

 苛立ち紛れにそう言って、魔法使いたちは去っていった。
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