性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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48.どうだって聞かれても……

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 強く抱き寄せられて、ヴァトズフィウズ様の体と僕の体の間に隙間がないくらい。

 僕は、今度はあまりにそばにいることに驚いていた。

 な、なんで、こんなに近いんだ!??

 これだけそばにいると、見上げたらすぐに目があって、顔を合わせているだけで、恥ずかしくなる。

 ついさっきまで、嫌われたくない、そんなことしか考えられなかったのに、今は訳がわからないくらいの距離の近さが落ち着かなくて、ひどく鼓動が早くなっていく。

 え…………え、っと……

 なんで……こうなってるんだっけ……

 あ、そうだ。突然、抱き寄せられたんだ。

 でも、なんでこんなことされてるのか分からなくて、それで…………

 だめだ。状況が分からなくなってきた。何してるんだ……僕は。

「あ、あの…………ヴァトズフィウズ様…………」

 どうしよう……なんでこんなことされてるのか、さっぱり分からない。

 だけどこのままだと、疑問の答えに、同情以外のものを期待してしまいそう。

 僕はもう、絶望なんかしたくない。

 だって、僕がこんなことされるはずがないんだから。今まで、殴られたことしかなかったんだし。

 これは…………その……

 あっ……!! あれだ!

 きっと、僕が一族に会って、怯えているように見えて……だから、慰めてくれてるんだ!! 泣き出しそうに見えたらから、慰めているだけ。そうに決まってる!

 それなのに、ドキドキしたりして、どうかしてるんだ。

 大丈夫ですって言ったら、きっと離してもらえる。

 離して……もらいたくないような気もするけど……

 そう言わないと、僕はどんどん誤解を続けてしまう。

「あ、あの…………ヴァトズフィウズ様!!」

 平気な顔をしなきゃ。

 そう努めているからか、こんなにそばにいるのに、やけに声が大きくなってしまった。

 そんなことをして、また恥ずかしさと後悔が湧いてきて、今度はどんな声を出していいのか分からない。

「あ……え、と…………僕、本当に大丈夫です…………あ……そうだ! これから、ヴァトズフィウズ様……い、一族に会いに行かないといけないんじゃないですか? 僕……大丈夫ですから…………そちらの方に行っていただいていいんですよ?」

 我ながら、下手くそなことばかり言う口だ。そっちに行けばいい、なんて、微塵も考えてないくせに。

「遅れると話しておく」
「そ、そんなのダメですっ……!」

 僕のために、ヴァトズフィウズ様が一族にあえないなんて、ダメだ。

 一気に焦りが増す。

 僕なんかのために、ヴァトズフィウズ様に迷惑をかけるわけにはいかない。

 暴れて力を入れると、ヴァトズフィウズ様の力が緩んだ。

 だけど、その腕から逃げ出すには至らない。
 彼が僕を離そうとしたんじゃなくて、僕が暴れて苦しくならないように、気を遣ってくれているだけなんだろう。

 僕じゃ、この腕から逃れられそうにない。

 それが少し苦しいのに、嬉しいなんて……

「あっ…………ぶ、部隊でもっ……こんなことしないですよ? あ、えっと……早くっ……」

 冗談みたいに笑って、僕は、もう一度、顔を上げた。

 だけど、ヴァトズフィウズ様は笑っていなくて、僕が怖くなるくらい、真剣な顔をしていた。

 …………い、いつもなら、少し暴れたり嫌がったら離してくれるし、部隊のことだって、まだダメか、なんて言って笑ってくれるのに……

 どうしちゃったんだ。

「……あ……え……と、ヴァトズフィウズ様…………あの…………」
「…………部隊がこうしているのはおかしいか? それなら……恋人ならどうだ?」
「へっ……?」
「好きだ」
「…………え…………????」
「リュイウェリレクは、どうだ?」
「へっっ!!??」

 どうだ? どうだって、聞かれてもっ…………

 え……えーーっと…………

 言われたことも、まだ僕は理解できていないのに。
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