性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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50.ここにいてもらわなくては困る!

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 とにかく、帰ろう。

 そう思って、僕は街を飛んだ。

 そして気づいたら、冒険者ギルドまで来ていた。

 しかも、ちょうどドアが開いて、僕は中に突っ込んでしまう。

「わわわっ……!!」

 大きな音を立てて、ギルドの受付まで飛んで、カウンターに顔面からぶつかった。

「い、いったーーーー……」

 ギルドの中は強化されているから、壊れることはなかった。だけど、僕の顔は強化なんかされていないから、やっぱり痛い……

 顔馴染みの受付の人が、うずくまる僕を見下ろして、驚いていた。

「あれ? リュイウェリレクさん? 何してるんですか? 魔法に失敗したんですか?」
「す、すみません…………いたた…………」

 カウンターのそばで座り込んで、顔をさする僕に、みんなが振り向いている。

 さすがに恥ずかしい……何してるんだ、僕……

 そんなことをしていたら、ルイトシオレトさんが近づいてきた。

「……大丈夫か? 何してるんだよ……お前」
「……あ、あの、ちょっと飛んだらここまで吹っ飛んで……」
「……ちょっと飛んだだけで、そんなことにはならないだろ……何があったらそうなるんだよ」
「す、すみません…………その、ちょっと……あ、び、びっくり……して…………」
「びっくり? そんなにびっくりすることがあったのか?」
「へっ…………いや……あの……」

 そんなにって…………

 ちょっとキスされたくらいだ。少しだけ、頬に唇が触れただけだ。

 なんで……あんな…………

 あ、もしかして……キスしようとしたんじゃなくて、たまたま唇が当たったとか、そんなのかもしれない……

 そんな訳ない…………

 だって、告白だってされたし!!

 ……だけど、なんで僕がそんなことされてるんだ!?

 僕はこれからどうしたらいいんだよ……

 ……ヴァトズフィウズ様、一族に会ったらすぐに戻ってくるのかな……

 じゃあその後、僕はヴァトズフィウズ様に会ったら、どんな顔したらいいんだ??

 ヴァトズフィウズ様になんて言おう……

 頬に触れる。さっきキスされた感触が、まだそこにあるみたいで……

 心臓が変だ。

 なんだか妙に高鳴ってる。

「どうしよう…………」

 ぼそっと呟いたら、ルイトシオレトさんが首を傾げた。

「何をだよ……お前、今日は変だぞ? どうした? 何かあったなら、相談に乗るぞ」
「…………」

 ルイトシオレトさん……優しい……

 だけど、こんなこと相談していいのかな……

 悩んでいたら、今度はギルドにいる冒険者たちを押し退けて、警備隊のロストフィトテイド隊長が歩いてくる。

「おい!! 貴様っ……!! いきなり飛び込んでくるなど、危ないだろう!! 捕縛するぞ!!」
「すみません……気をつけます……」

 答えながら、頭を下げる僕。

 ルイトシオレトさんが「そんなんで捕縛なんておかしいだろ」と言ってから、心配そうに僕に振り向く。

「どうしたんだ? お前……顔色が悪いぞ」
「え……?」
「魔物退治で頑張りすぎたんじゃないのか? 明日も行くんだろ? もう寝た方がいいんじゃないか?」
「…………えっと……明日は、砦に戻ろうと思うんです。少し用があって……」
「はあ?! なんだよ、戻るって! すぐ街に帰ってくるんだろうな!?」
「え……?」
「え、じゃねーー!! どうなんだよ!?」

 そう言って、ルイトシオレトさんは僕に詰め寄ってくる。

「すぐ帰ってくるんだな!? 俺は嫌だぞ! お前がいなくなるなんて!!」
「え……えっと…………な、なんで……」
「なんで!? なんでって…………そ、そんなことっ……聞くんじゃねーよ!!」
「え…………」
「お、お前らはなあっっ!! ………………俺のお得意様なんだぞ!」
「お、お得意様?」
「魔法の道具だって使い方荒いからすぐ壊すし、素材も安く譲ってもらえるし、二人だけで魔物退治に行くからどんどん強化が必要になるし!! こんなにありがたい二人組、もう二度と見つからないかもしれないんだ!! い、今のうちに捕まえておかないとな!」
「…………お世話になってます」

 彼の言っていることは事実だ。彼の魔法の道具がなかったら、僕らはとっくに全滅していたかもしれない。

 ルイトシオレトさんの腕は確かだし、僕らじゃなくても、他にもお客さんはたくさんいそうだけど……

「あの……もう少し、強化をお願いしてもいいですか? 明日、森を通る時に魔物が出るかもしれないので……」
「だったら明日までに揃えておく! いいか!? 絶対に、早く帰ってこいよ!!」
「は……はい!! でも…………あの……ルイトシオレトさんなら、きっと僕ら以外にも整備を頼みたいお客さんはたくさんいると思いますよ?」
「ばあああああか!! お前、馬鹿だろ本当に!! なんで分かんねーーんだよ!! 俺は、お前らにここにいて欲しいんだ!!」
「え………………」

 僕らにって…………なんで……

 戸惑っていると、ロストフィトテイド隊長まで怒鳴り出した。

「全くだ。勝手に帰るなど、どういうつもりだ!! 貴様らにはここにいて、我々警備隊に協力してもらわなくては困る!!」

 恐ろしい顔で詰め寄ってくる隊長。

 さっき捕縛するとか言ってたくせに……

 彼の隣では、部下のベレアレールさんが耳を塞ぎながら、「ギルドの中で大声出さないでください」って言ってるけど、隊長は聞いてないみたいだ。

「勝手に砦に帰るなど、許さんぞ!」
「そ、そんなこと言われても……ロストフィトテイド隊長、落ち着いてください……僕が帰っても砦との協力は継続できるように……」
「砦と、じゃない!! ふざけたことを言っていると、貴様、投獄するぞ!」
「そんな無茶な……」
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