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55.俺と行くぞ!
しおりを挟む森の中は、激しい光に包まれていた。魔物はほとんど破壊されているのに、いくつも小さな魔物が集まってきている。ヴァトズフィウズ様の魔法の光が、そこかしこで見えた。
「ヴァトズフィウズ様っ!!!!」
僕が叫ぶと、森の中で魔物と対峙していた彼はすぐに振り向いて、手を振ってくれる。
僕は、ヴァトズフィウズ様のところまで飛んで、破裂の魔法をかけた。
すると、ヴァトズフィウズ様の周りの魔物は全て弾けて消えていく。ヴァトズフィウズ様は、僕のやろうとしていることに気づいて、自分の周りだけ消去の魔法で僕の魔法を消していたから、無傷だ。
彼は、駆け寄る僕に微笑んだ。
「すごいな…………この魔法は……」
「あ、ありがとうございます…………すみません。余計なお世話かと思ったのですが……」
「いいや。来てくれて嬉しいぞ!!」
そうヴァトズフィウズ様が言って、いつもと同じその笑顔を見たら、僕はホッとした。
だけど……
同時に、あの時の告白のことまで思い出す。
……な、なんだか、また恥ずかしくなってきた…………
どうしよう…………告白の返事もまだ決めていないのに、勢いでここまで来ちゃった……
「え、えっ……と…………あ、その……」
言い淀む僕に、彼は顔を近づけてくる。
「どうした? リュイウェリレク」
「え……あの…………」
「……酒の匂いがする。それも、なかり強い酒だ」
「へっ…………!? え、えっと……そ、そうですか?」
「酒を飲んでいたのか?」
「え!? は、はい…………みんなで、少し……あ、あのっ……!! ヴァトズフィウズ様も一緒に飲みませんか?」
「……そうだな…………」
言って、ヴァトズフィウズ様は僕に迫ってくる。
そばまで寄られて、僕は数歩下がった。
「え…………あ、あの……」
「俺も行く」
「あ……よ、よかった!! 僕も……い、一緒に行きたくて……」
「そうか! だったらこれからは必ず俺も連れて行け!」
「え…………? か、必ず?」
「俺の知らないところでリュイウェリレクがやけに強い酒を飲まされていたら、嫉妬するだろう?」
「はい??」
何のことかと思ったけど、顔を覗き込むようにされたら、ひどく顔が近い。
後ろに下がろうとしたけど、なぜか動けない。顔を背けるだけで、精一杯だ。
「あ、えっ……と…………嫉妬って…………」
そんなの、する必要ないのに……
は、恥ずかしいのか……? どんどん心臓が高鳴っていく。
僕も、ヴァトズフィウズ様が僕じゃない人と酒を飲んでいたら……嫌かもしれない。
何言ってるんだ……恋人でもないくせに。
僕は、そうなりたいけど……
まだ戸惑う僕に、ヴァトズフィウズ様は、ニッと笑った。
「……今度は俺も連れて行けよ」
「あ…………は、はい……も……もちろん、です…………」
僕だって、一緒に行きたい……だけど、そんなこと言っていいのかって思って、まだ恐る恐るだ。
「…………あ、えっと……戻りましょう……えっと……みんなのところまで……」
言いながら、僕は彼から顔を背けて、逃げるように歩き出した。
余計なお世話だった……よな……こんなところまで追ってきて。ヴァトズフィウズ様が魔物なんかにやられるはずないって、分かっていたのに。
それでも、ヴァトズフィウズ様に会いたかった。離れているのは寂しかったんだ。
僕は、どうしてもこの人のそばにいたいらしい。
早く、あの砦を出なきゃ…………
もう、僕の一族に使われていた僕でも、フォルゲソスの武器だった僕でもなくなって、彼と向き合いたい。
それには……
考えていたら、後ろから手を握られて、引き寄せられた。
すっかり警戒心なんてなくなっていた僕は、そのまま彼の腕の中に収まってしまう。
「あ…………」
無意識に見上げる僕に、ヴァトズフィウズ様は、どこか得意げに微笑んだ。
「あの…………」
「今度は俺も連れていかないと、許してやらないぞ?」
「え…………っっ!!」
その唇が、僕の頬に触れる。くすぐったくて、熱くて……物足りなくなる。もっと僕は、ヴァトズフィウズ様のそばにいたい。
けれど、ヴァトズフィウズ様は僕を捕まえていた腕を解いて、僕の手を引いて歩いていく。
思えば、ヴァトズフィウズ様が来た時からこうだった。あの砦を出る決意ができたのも、ヴァトズフィウズ様のおかげだった。
「あのっ…………ヴァトズフィウズ様っ……!」
呼びかけると、ヴァトズフィウズ様は立ち止まって振り向いた。
「……? どうした?」
「あっ…………えっと……あ、あのっっ…………さ、さっきの……告白の返事……少しだけ、待ってくれませんか?」
ぼそっと言うと、ヴァトズフィウズ様は驚いたような顔をして、しばらく、僕を見つめていた。
そして、いつもみたいに笑顔で言う。
「いつでもいい! 帰るぞ、リュイウェリレク!! それから、飲みに行くぞ! 俺と!!」
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