性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
54 / 61

54.その方がいい

しおりを挟む

 酒場を出た僕は、魔法で飛んで、ヴァトズフィウズ様が魔物退治に行ったあたりを目指した。

 夜の森は暗いけど、夜中の魔物退治になら慣れている。

 木々の上を飛んでいくと、大きな岩が集まる辺り見えて来た。

 ヴァトズフィウズ様が魔物退治をしているのは、あのあたりか……

 砦の魔法使いたちが素材を集める拠点のすぐそばじゃないか。あの辺りには、最近素材を集めるために、砦の魔法使いたちがテントを張っているって、オフィトイン様が話していた。

 魔法の明かりを強くして、辺りを見渡すと、幾つも並んだテントが見えて来た。きっと、砦の魔法使いたちのものだ。

 僕は、テントの前に降りた。そこにいたのは、二人の見張りだ。知っている奴らだった。しかも苦手な奴ら……フォルゲソスの手下たちじゃないか。

 近づいたら何か言われるかと思ったけど、彼らは僕から顔を背けただけ。

 代わりにテントから出てきたのは、オフィトイン様だった。

「リュイウェリレクさん!!」
「オフィトイン様……! こ、こんなところで、オフィトイン様も魔物退治ですか?」
「怪我人の救護です。魔物たちにやられてしまって……リュイウェリレクさんは、どうしたんですか?」
「僕は……その……ヴァトズフィウズ様にお会いしたくて……」
「ヴァトズフィウズ様に? わっっっっ!!!!」

 オフィトイン様は、ひどく驚いて、尻餅をつきそうになっている。どうやら僕が連れていた、ヴァトズフィウズ様の使い魔を見つけたようだ。

「え……え!!?? ヴァトズフィウズ様!? え……な、なんで?! だって、魔物と戦っていたんじゃ…………」
「あ、えっと……これ、使い魔なんです」
「つ、え!?? お、大きくないですか? なんで……こんなものが……」
「ヴァトズフィウズ様が送ってくださったんです。ヴァトズフィウズ様はどこですか?」
「もう退治が終わる頃だと思います。先ほど、魔物を破壊する光が見えたので……あとは周りに集まった、小さな魔物を退治するだけです」
「もう……そんなに……?」

 さすがヴァトズフィウズ様だ。少し遅かったかな……早く無事を確認したい。

「あ、あのっ……! これ、使ってください!!」

 僕は、持ってきた魔法の薬を差し出した。

「ありがとうございます!! 助かります……あ!! ヴァトズフィウズ様と一緒に、彼の一族の方もいらっしゃいます。魔物もまだいるので、どうかお気をつけて……」
「はい!! ありがとうございます!」

 オフィトイン様にお礼を言って、僕はテントから離れ、また空に飛び上がろうとした。

 すると、背後から声をかけられた。

「おいっ…………!! リュイウェリレク!」

 何かと思って振り向けば、そこにいたのはフォルゲソスだ。

 以前の魔物退治の時に砦まで送ってから、その後無事なのかと思っていたけど、大丈夫だったようだ。
 よかった……これなら、ヴァトズフィウズ様が責められることはない。あの時彼に任せてしまって、申し訳なく思っていたんだ。

 早くヴァトズフィウズ様のところに行かないと……

 けれど、そう思って走り出すと、背後からまた呼び止められた。

「おい!! 待て!!」
「え……? えっと……何か用ですか?」

 もしかして、この前砦に置いてすぐに帰ったこと、怒ってるのか? 何も言わずにさっさと砦を出ちゃったからな……
 だけど、こっちだって急いでるのに。

「何か用ですか?」
「…………もう一度、やり直さないか?」
「………………?」

 やり直す? なんのことだろう?

 相手が何を言っているのか、さっぱりわからない。

 一体……なんのことだ??

「……えっと……何を、ですか?」
「婚約をだ!! その……もう一度、婚約をやり直さないか?」
「………………え? 婚約?」
「し、していただろう! まさか、忘れたのではないだろうな!」
「……ああ……そうですね……すみません。その……忘れてて…………」

 素直に正直に言うと、フォルゲソスはひどく焦り出す。

「わ、忘れる!? 忘れるか!? 普通!!」
「はい……忘れます。だってずっと、婚約者っていうより武器だったし…………フォルゲソス様だって、僕を武器としか思ってないですよね? だから、つい…………」
「ふ、ふざけやがって…………」
「すみません。してましたね…………じゃあ、僕はこれで失礼します。急ぐので」
「お、おいっ……! 待て!! ……やり直せると思うんだ!! もう一回、婚約しないか?」
「え? しません」
「…………」

 する訳ない。
 婚約のこと思い出したら、婚約破棄の時、一発くらい魔法で撃っておきたかったことも思い出してしまったんだ。

 僕は、彼に手を振った。

「じゃあ。失礼します! 僕、急ぐので!!」

 そう言って走り出すけど、まだ背後からフォルゲソスが言う。

「おいっ……ま、待て!! お前、正気か!? お、俺がもう一回婚約してやると言っているんだぞ! 今ならまだ許してやる!! 後悔するぞ!!」
「しないです! 婚約するくらいなら、後悔した方がいいです!!」

 言って、手を振って、僕は魔物の気配がする方に飛び出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...