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54.その方がいい
しおりを挟む酒場を出た僕は、魔法で飛んで、ヴァトズフィウズ様が魔物退治に行ったあたりを目指した。
夜の森は暗いけど、夜中の魔物退治になら慣れている。
木々の上を飛んでいくと、大きな岩が集まる辺り見えて来た。
ヴァトズフィウズ様が魔物退治をしているのは、あのあたりか……
砦の魔法使いたちが素材を集める拠点のすぐそばじゃないか。あの辺りには、最近素材を集めるために、砦の魔法使いたちがテントを張っているって、オフィトイン様が話していた。
魔法の明かりを強くして、辺りを見渡すと、幾つも並んだテントが見えて来た。きっと、砦の魔法使いたちのものだ。
僕は、テントの前に降りた。そこにいたのは、二人の見張りだ。知っている奴らだった。しかも苦手な奴ら……フォルゲソスの手下たちじゃないか。
近づいたら何か言われるかと思ったけど、彼らは僕から顔を背けただけ。
代わりにテントから出てきたのは、オフィトイン様だった。
「リュイウェリレクさん!!」
「オフィトイン様……! こ、こんなところで、オフィトイン様も魔物退治ですか?」
「怪我人の救護です。魔物たちにやられてしまって……リュイウェリレクさんは、どうしたんですか?」
「僕は……その……ヴァトズフィウズ様にお会いしたくて……」
「ヴァトズフィウズ様に? わっっっっ!!!!」
オフィトイン様は、ひどく驚いて、尻餅をつきそうになっている。どうやら僕が連れていた、ヴァトズフィウズ様の使い魔を見つけたようだ。
「え……え!!?? ヴァトズフィウズ様!? え……な、なんで?! だって、魔物と戦っていたんじゃ…………」
「あ、えっと……これ、使い魔なんです」
「つ、え!?? お、大きくないですか? なんで……こんなものが……」
「ヴァトズフィウズ様が送ってくださったんです。ヴァトズフィウズ様はどこですか?」
「もう退治が終わる頃だと思います。先ほど、魔物を破壊する光が見えたので……あとは周りに集まった、小さな魔物を退治するだけです」
「もう……そんなに……?」
さすがヴァトズフィウズ様だ。少し遅かったかな……早く無事を確認したい。
「あ、あのっ……! これ、使ってください!!」
僕は、持ってきた魔法の薬を差し出した。
「ありがとうございます!! 助かります……あ!! ヴァトズフィウズ様と一緒に、彼の一族の方もいらっしゃいます。魔物もまだいるので、どうかお気をつけて……」
「はい!! ありがとうございます!」
オフィトイン様にお礼を言って、僕はテントから離れ、また空に飛び上がろうとした。
すると、背後から声をかけられた。
「おいっ…………!! リュイウェリレク!」
何かと思って振り向けば、そこにいたのはフォルゲソスだ。
以前の魔物退治の時に砦まで送ってから、その後無事なのかと思っていたけど、大丈夫だったようだ。
よかった……これなら、ヴァトズフィウズ様が責められることはない。あの時彼に任せてしまって、申し訳なく思っていたんだ。
早くヴァトズフィウズ様のところに行かないと……
けれど、そう思って走り出すと、背後からまた呼び止められた。
「おい!! 待て!!」
「え……? えっと……何か用ですか?」
もしかして、この前砦に置いてすぐに帰ったこと、怒ってるのか? 何も言わずにさっさと砦を出ちゃったからな……
だけど、こっちだって急いでるのに。
「何か用ですか?」
「…………もう一度、やり直さないか?」
「………………?」
やり直す? なんのことだろう?
相手が何を言っているのか、さっぱりわからない。
一体……なんのことだ??
「……えっと……何を、ですか?」
「婚約をだ!! その……もう一度、婚約をやり直さないか?」
「………………え? 婚約?」
「し、していただろう! まさか、忘れたのではないだろうな!」
「……ああ……そうですね……すみません。その……忘れてて…………」
素直に正直に言うと、フォルゲソスはひどく焦り出す。
「わ、忘れる!? 忘れるか!? 普通!!」
「はい……忘れます。だってずっと、婚約者っていうより武器だったし…………フォルゲソス様だって、僕を武器としか思ってないですよね? だから、つい…………」
「ふ、ふざけやがって…………」
「すみません。してましたね…………じゃあ、僕はこれで失礼します。急ぐので」
「お、おいっ……! 待て!! ……やり直せると思うんだ!! もう一回、婚約しないか?」
「え? しません」
「…………」
する訳ない。
婚約のこと思い出したら、婚約破棄の時、一発くらい魔法で撃っておきたかったことも思い出してしまったんだ。
僕は、彼に手を振った。
「じゃあ。失礼します! 僕、急ぐので!!」
そう言って走り出すけど、まだ背後からフォルゲソスが言う。
「おいっ……ま、待て!! お前、正気か!? お、俺がもう一回婚約してやると言っているんだぞ! 今ならまだ許してやる!! 後悔するぞ!!」
「しないです! 婚約するくらいなら、後悔した方がいいです!!」
言って、手を振って、僕は魔物の気配がする方に飛び出した。
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