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53.言っていい
しおりを挟む僕は慌てて、首を横に振った。
「あ、あのっ…………ち、違うっ……そうじゃなくて…………あのっ……た、ただ、僕はそのっ……ち、ちょっと手を繋いでみたくて……」
慌てていたら、ヴァトズフィウズ様の使い魔が、僕に手紙を渡してくれる。
今日は行けない、そんな連絡だった。
行けないって………………そうか……
ここには来れないってことか。
どうしたんだろう……魔物退治の途中で、何かあった? それとも、一族の人と何かあった?
何があったんだ?
僕は、行ったらダメなのか? 何かあったのなら、手伝いたいのに……
なんで行けないんだろう。
僕のこと、ヴァトズフィウズ様は部隊って言ってくれたのに。
好きって……そう言ってくれたのに…………
どうしよう…………ヴァトズフィウズ様に会えないことがひどく心配だし、寂しい。
まだ返事の内容も考えてないくせに、会えないって分かったら、ますます会いたくなった。
魔物退治に時間がかかっているなら、朝になったら帰ってくるかな……
だったら、待っていればいいのか?
朝まで待てば、ちゃんとヴァトズフィウズ様は会いに来てくれる。だから、それまで我慢すればいい。それだけなんだけど…………
俯いていたら、ルイトシオレトさんが心配そうに言った。
「なあ……大丈夫かー? お前」
「え…………あ、うん……」
「……あいつが心配か?」
「え…………」
心配……??
もちろんだ。
ここ数日、ずっとヴァトズフィウズ様と一緒だった。
…………だったら今みたいな時は特に、ヴァトズフィウズ様のそばにいたいのに…………
そうか……だからこんなに、ヴァトズフィウズ様のことばっかり考えちゃうのか? 心配だから…………
な、なんだか、違う気がする!
彼のそばには今、一族の強力な魔法使いがいるんだろう。だったら、僕の心配なんか必要ないのかもしれない。
だけど……それでも、ヴァトズフィウズ様のそばにいたい。
あの砦を出てから、ずっと一緒だったじゃないか。だったら今の魔物退治だって、一緒に行きたい。
「…………やっぱり、一緒にいたいです」
「は?」
「……ま、魔物退治だって……ヴァトズフィウズ様と部隊なのは僕なんだし、一緒に行きたくて……」
「部隊? 普段あれだけ違うって言ってるのにか?」
「うっ…………」
確かにそうだ。
普段からあれだけ、部隊じゃない、なんて言ってるくせに……
いつも「部隊だろー」って言われるたびに違うって言っておきながら!!
恥ずかし紛れに一気に酒を飲む。すると、ルイトシオレトさんを驚かせてしまった。
「お、おいっ……どうしたんだ? お前っ……そんなに飲んで、大丈夫か?」
「……大丈夫です…………気を紛らせたいんです!」
だって、いつも一緒だったのに、今日は急にヴァトズフィウズ様がいない。宿だってずっと隣で、何かあれば、すぐに会えたのに。
黙り込んでしまう僕に、今度はベレアレールさんが口を開いた。
「それ、言っていいと思います」
「……え?」
「寂しいんですよね? それ、ヴァトズフィウズ様に言っていいと思いますよ」
「そ、そんなこと……言えません。だって、僕が勝手に寂しいだけで、いつも……部隊だって断っているのに…………」
「ヴァトズフィウズ様は、そっちの方が喜ぶんじゃないんですか?」
「……」
ヴァトズフィウズ様が? そんなまさか……
だって、完全に僕のわがままじゃないか。ただ寂しいだけで、ヴァトズフィウズ様だってそんなこと言われたって、困るはずだ。
告白のことだって…………まだ返事ができないのに。
だけど……
そもそも、あんなこと言っておいて、会えないなんてっ……ひどいじゃないか! 僕だって、今は話したいのに。
普段、あれだけ部隊だぞって言うくせに、なんで僕を連れて行ってくれないんだ?
今日は一族と会うって言っていたけど、なんで僕は行ったらダメなんだ?
戦力にならないって思われた?
ずっと一緒に戦って来たのに?
僕は、ずっとヴァトズフィウズ様と戦いたいのに、ヴァトズフィウズ様は……そうじゃないのか?
ヴァトズフィウズ様だって、ずっと部隊だって言ってくれたのに。なんで今だけダメなんだ?
僕は立ち上がった。
「あっ……あの…………ご、ごめん、なさい…………あ、ぼ、僕…………ヴァトズフィウズ様に会ってこようと思って……」
ドキドキしながら言うと、ベレアレールさんは微笑んだ。
ルイトシオレトさんも、腕を組んで言う。
「行くんなら気をつけていけよ? 酒、飲んでるんだし。魔法、失敗するなよー」
「は、はい!! あ、ありがとうございます!!」
二人に頭を下げる僕に、急に隊長さんが飛びついてくる。
「なんだー? どこか行くのかーー? 勝手な真似は許さんぞーーー……行くなー!!!!」
い、行くなって言われても…………
投獄するなんて言ってたくせに、今は行くなーーって言って引き止める彼を、ベレアレールさんが止めている。
「すみません……本当に。隊長!! 起きてください!! もう帰りますよ!!」
「ダメだ! リュイウェリレクが行っちゃうじゃないか!!」
僕に手を伸ばしてくる隊長さんに、僕は振り向いた。
「……僕、ちゃんと戻って来ますから…………あ、ありがとうございます!!」
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