性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
61 / 61

61.もう絶対に離してもらえない気がする

しおりを挟む

 ヴァトズフィウズ様は、僕に向かって微笑んだ。

「部隊に入らないか?」
「……えっと…………入りません。だって、僕は僕の行きたいところに行きたいし……そんなことに、みんなを付き合わせるわけにはいきません。でも……ヴァトズフィウズ様のことは、好きです。部隊じゃなくても、会いに行きます」
「…………リュイウェリレク……」

 彼の唇が、今度はまだ怯えている僕の唇に触れる。

「んっ…………」

 柔らかなそれが、少し触れただけなのに、ゾクゾクする。緊張で硬くなった体が、その唇の感触で蕩けていくようだ。何度も唇を吸うようにされて、力が抜ける。気持ちよくて、だんだんその腕に身を預けてしまう。もう拒むことなんて出来なくて、ゆっくり開いた唇から、ずるっと、彼の舌が入ってきた。

「…………っっ!!」

 口の中まで、丁寧に彼に弄られて、今さら腰が引けそうだったけど、簡単に抱き寄せられる。すでに逃げる手段を失っていた僕は、そのまま彼の思うままに嬲られ続けるしかなかった。奥まで舌を刺し込まれて、苦しくて喘ぐこともできないのに、だんだん体も彼の意のままに昂っていきそう。

 僕は動けなくなっていくのに、抱き寄せる力は強くなっていくから、少し怖くなりそうだ。このままじゃ、ずっとその手に弄ばれたくなりそう。

「…………あ、ヴァトズフィウズ様…………ま、待ってっ………………」
「ん……? 嫌か?」
「だ、だって…………僕、ここを出る準備をしないと…………」
「なんだ……もう行くのか? そうだな……」

 彼はもう一度、僕にちゅって優しくキスしてくれた。

「だったら行くぞ!」
「え…………」
「二人で、リュイウェリレクの行きたいところにだ!」
「でも……僕にそこまで構ってていいんですか?」
「もちろんだ! 俺は、リュイウェリレクを離すつもりはないからな」
「…………」

 ヴァトズフィウズ様がそう言うと、なんだか本当に……離してもらえない気がする…………







 それから僕は、砦を出る準備を整えた。
 ヴァトズフィウズ様はオフィトイン様と砦を管理する話をして、数日後に砦を出ることができた。

 フォルゲソスとグレヴロオル様も砦を追われることになったらしく、何か言われるかと思っていたが、気づいたらいなかった。

 砦を出る手続きは、ヴァトズフィウズ様が手伝ってくれて、これから砦を担って行く予定のオフィトイン様も、快く頷いてくれた。

 オフィトイン様には、丁寧に挨拶をして、これから彼を支える従者の方々にもお別れを言って、砦を出たら、すっきりした。

 集めた素材の一部は砦に収めることにしたけど、ヴァトズフィウズ様とオフィトイン様までもが他のものは持っていけと言ってくれて、これからの旅費の足しにすることにした。

 だから、随分街まで持っていく荷物が多い。大量の素材を袋に入れて、僕はヴァトズフィウズ様と砦を後にした。

 これだけの荷物を持って歩くのは初めて。一部を売ったら、収納するための魔法の道具ももう少し用意しよう……魔法の道具のおすすめのお店は、ルイトシオレトさんが案内してくれるらしい。

「わわっ……!!」

 森を歩いていたら、担いでいたリュックから落ちそうになった素材を、隣を歩いていたヴァトズフィウズ様の手が受け止めてくれる。

「大丈夫か? リュイウェリレク」
「ヴァトズフィウズ様……あ、ありがとうございます」

 お礼を言うと、ヴァトズフィウズ様は「せっかく一緒に旅に出るんだ。これくらいさせろ!」と言って笑う。

「今日はどこへ行くんだ?」
「えっと……これから街に向かって旅の用意をして、それから、森を越えて港の街に向かおうと思ってます。それから、その近くにある魔法の研究が盛んな都市にも行きたくて……」
「そうか……あそこは魔法だけでなく、魔法に関する素材も、多く取引されている。行けば魔法についての知識を深めるだけでなく、威力を上げるための勉強にもなるはずだ。俺が案内する!」
「は、はい!! あ、ありがとうございます!! でも……あの、砦を出てきて、本当によかったんですか?」
「もちろんだ。俺も、リュイウェリレクと行きたい!!」

 そう言って彼は微笑むけど、ヴァトズフィウズ様、護衛なんかもまるでつけていないし、大丈夫なのかな……?

 護衛の方は一緒に行かないんですか、と聞いても、「俺はリュイウェリレクと二人でいたい」と言うだけだったし……

 このまま二人での旅になりそう。それは嬉しいんだけど、道中、ヴァトズフィウズ様のことは僕がお守りしたい。僕だって彼とこうして歩けて嬉しいんだから。

「僕も……一緒に行きたいです!」

 精一杯答えて、僕は彼と、最初の目的地を目指すことにした。

*性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください*完
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました! 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

処理中です...