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2.役立たずって、私のこと
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本当に…………私、一体、何をしているんだろう……
そう思いながら、私は書庫に向かって走った。
先ほどのように、婚約者のオーテクルテスファー様が私を罵倒するのはしょっちゅうで、私は四六時中、馬鹿にされてばかり。
ここは、彼のお父上、ロクデラッド・クリウレル様が治める領地にある城。
この領地は、王国の中でも魔法の研究が盛んで、領主様の城には多くの魔法使いたちが住み、日々、魔法の研究を行なっている。
そんな中、次の領主だと言われているのが、オーテクルテスファー・クリウレル様。彼の権力は絶対だ。
領主様のご子息、ご息女の中でも最も強い魔力を持ち、その魔法も強力で、魔法使いとして王都でその名を知らない者はいないという。
そのオーテクルテスファー様の婚約者に選ばれたのが私、フィレイルイラル・リウィルテ。
幼い頃から、魔力はそこそこあったけど、平凡なもので、魔法はむしろ下手くそだった。それでも、突然私の屋敷にやってきて、彼に婚約者だと言われた時は、嬉しかったのに。
オーテクルテスファー様が微笑んでくださるのは、私ではない方々の前でだけ。私に対して何か言うのは、何か言いつける時だけ。ついでにその言葉は、使用人の方に話すときよりも、よほど冷たい。
むしろ、使用人の前で話す時の方が、いつもニコニコしているような気がする……使用人たちの間で、評判だっていいのに。
私の前では、いつもあんな風。何かと私を責め立てる。
そろそろ……というより、もうとっくにうんざりしている…………
だって、これでは私はまるで、彼専用の使用人だ。
不本意だと思っているのに、未だに私は、頭を下げることしかできない。
…………あー……私は、何をしているんだろう…………
お陰で今日も、彼の尻拭い。
走ってなんとか辿り着いた書庫では、冷たい視線が飛んできた。
「遅い……何をしていたのです?」
ずらっと並んだ書庫の前に立って、今度私を叱りつけるのは、書庫を管理する女性、ブークリアス様。真っ黒な長髪の方で、強力な魔法がかかった上等なローブを着ている。強い魔力を持ち、いつも美しい豪勢なマントを身につけた、城でも発言力のある魔法使いだ。
彼女は、城の中にある、領地で一番広いこの書庫を管理していて、それに携わる魔法使いたちにも、ひどく厳しいことで知られている。
そしてその周りには、彼女の従者の魔法使いたち。彼女に魔法を学び、魔法を身に付けるために、貴族たちの屋敷から派遣された方々だ。
今回も、約束の時間に遅れた私に、彼女の目はひどく厳しい。
すぐにブークリアス様の前に出て頭を下げる私。
「申し訳ございません……オーテクルテスファー様のお見送りを……」
「婚約者の見送り?」
彼女の目が鋭くなり、はあああああ、と、深いため息をついた。
「全く……ご令嬢のお遊びでやってるのではないのですよ。こっちは役立たずを使ってやってるのに……感謝くらいしてほしいものです」
「…………」
彼女の言う役立たずというのは、紛れもなく私のこと。
ここで魔法を学び国に貢献するようにと両親に言われていた私だったけれど、私はここへ来て早々、魔物退治の部隊とともに魔物の多い森に連れて行かれて、その最中に結界の魔法の制御に失敗してしまった。
結界で皆を守ろうとした時に、魔力が制御しきれず、結界を自分で破壊して、魔物からの攻撃を受けてしまったんだ。
その時は、怪我をしたのは私だけ。魔力もほとんど失った。
大事にはいたらなかったけれど、その場で魔法使い達を監督していたのが、彼女。
私が責任者となっている時に、そんな馬鹿みたいな事故を起こしたのはあなたが初めてだ! と叫んだ彼女は、怒り心頭に発したよう。
自分の実力も知らずに前に出るからです! と散々詰られた時は怖かったなーー……
城に帰れば、「オーテクルテスファー様の婚約者がでしゃばるから、部隊が危険に晒された!」と言い立てられて、そんな噂はあっという間に広まっていたし……
その場にいなかったオーテクルテスファー様は、「足手まといになるなんて、それでも私の婚約者か!!」と、部隊全員の前で私を詰った。
おかげで私はこの城ではずっと、「来て早々魔物退治の部隊の邪魔をした役立たず」って、後ろ指を指されることになった。
次期当主のオーテクルテスファー様と、城の魔法使いたちを統率するブークリアス様がそうしているのだから、すっかりそういう印象がついてしまったみたい……使用人達までみんなそう言って私を嘲笑っている。
ブークリアス様は、私に振り向き冷たく言った。
「とにかく、さっさと終わらせなさい。向こうに積んである書物を、城にいるカテリスラ家の一族の方々に届けるのです」
「え…………」
それ……どこにいるのか、分からないんじゃ…………
けれど、そんな疑問すら許されるはずもなく、彼女は捲し立てるように続ける。
「あなたのせいで遅れたんです。ちゃんと謝りなさいよ? 社交界での礼節も知らないなんて……淑女とは言えませんよ?」
「はい…………」
淑女……そんなものでないことは、もう自分ですでに分かってるんだけど……
頷く私に、彼女は背をむけ、書庫の方に向かって歩いて行く。
「ふん。辛気臭い女……」
ぼそっと言われた言葉まで、ちゃんと耳に入るから困る。
そもそもこれは、キャデリレーラ様が、一族に配ることが決まっていたもの。それを、彼女は魔法の練習があると言い出し、オーテクルテスファー様がそれならフィレイルイラルにやらせておけばいいと言ったらしい。
それを頼まれたのが、ついさっき。
それで今すでに配れていたら、私の魔法もなかなかのものだなーーって、自慢できたんだけど……
指定されていた書物を棚から抜き出すと、背後から、彼女の従者の魔法使いたちがヒソヒソと話す、冷たい声が聞こえてくる。
「全く……役立たずもいいところだ……」
「本当に……目障りで仕方ないわ!」
そんな陰口が聞こえるのもいつものこと。
構っていないで、早く本を配らなきゃ!!
私は、急いで仕事に戻った。
そう思いながら、私は書庫に向かって走った。
先ほどのように、婚約者のオーテクルテスファー様が私を罵倒するのはしょっちゅうで、私は四六時中、馬鹿にされてばかり。
ここは、彼のお父上、ロクデラッド・クリウレル様が治める領地にある城。
この領地は、王国の中でも魔法の研究が盛んで、領主様の城には多くの魔法使いたちが住み、日々、魔法の研究を行なっている。
そんな中、次の領主だと言われているのが、オーテクルテスファー・クリウレル様。彼の権力は絶対だ。
領主様のご子息、ご息女の中でも最も強い魔力を持ち、その魔法も強力で、魔法使いとして王都でその名を知らない者はいないという。
そのオーテクルテスファー様の婚約者に選ばれたのが私、フィレイルイラル・リウィルテ。
幼い頃から、魔力はそこそこあったけど、平凡なもので、魔法はむしろ下手くそだった。それでも、突然私の屋敷にやってきて、彼に婚約者だと言われた時は、嬉しかったのに。
オーテクルテスファー様が微笑んでくださるのは、私ではない方々の前でだけ。私に対して何か言うのは、何か言いつける時だけ。ついでにその言葉は、使用人の方に話すときよりも、よほど冷たい。
むしろ、使用人の前で話す時の方が、いつもニコニコしているような気がする……使用人たちの間で、評判だっていいのに。
私の前では、いつもあんな風。何かと私を責め立てる。
そろそろ……というより、もうとっくにうんざりしている…………
だって、これでは私はまるで、彼専用の使用人だ。
不本意だと思っているのに、未だに私は、頭を下げることしかできない。
…………あー……私は、何をしているんだろう…………
お陰で今日も、彼の尻拭い。
走ってなんとか辿り着いた書庫では、冷たい視線が飛んできた。
「遅い……何をしていたのです?」
ずらっと並んだ書庫の前に立って、今度私を叱りつけるのは、書庫を管理する女性、ブークリアス様。真っ黒な長髪の方で、強力な魔法がかかった上等なローブを着ている。強い魔力を持ち、いつも美しい豪勢なマントを身につけた、城でも発言力のある魔法使いだ。
彼女は、城の中にある、領地で一番広いこの書庫を管理していて、それに携わる魔法使いたちにも、ひどく厳しいことで知られている。
そしてその周りには、彼女の従者の魔法使いたち。彼女に魔法を学び、魔法を身に付けるために、貴族たちの屋敷から派遣された方々だ。
今回も、約束の時間に遅れた私に、彼女の目はひどく厳しい。
すぐにブークリアス様の前に出て頭を下げる私。
「申し訳ございません……オーテクルテスファー様のお見送りを……」
「婚約者の見送り?」
彼女の目が鋭くなり、はあああああ、と、深いため息をついた。
「全く……ご令嬢のお遊びでやってるのではないのですよ。こっちは役立たずを使ってやってるのに……感謝くらいしてほしいものです」
「…………」
彼女の言う役立たずというのは、紛れもなく私のこと。
ここで魔法を学び国に貢献するようにと両親に言われていた私だったけれど、私はここへ来て早々、魔物退治の部隊とともに魔物の多い森に連れて行かれて、その最中に結界の魔法の制御に失敗してしまった。
結界で皆を守ろうとした時に、魔力が制御しきれず、結界を自分で破壊して、魔物からの攻撃を受けてしまったんだ。
その時は、怪我をしたのは私だけ。魔力もほとんど失った。
大事にはいたらなかったけれど、その場で魔法使い達を監督していたのが、彼女。
私が責任者となっている時に、そんな馬鹿みたいな事故を起こしたのはあなたが初めてだ! と叫んだ彼女は、怒り心頭に発したよう。
自分の実力も知らずに前に出るからです! と散々詰られた時は怖かったなーー……
城に帰れば、「オーテクルテスファー様の婚約者がでしゃばるから、部隊が危険に晒された!」と言い立てられて、そんな噂はあっという間に広まっていたし……
その場にいなかったオーテクルテスファー様は、「足手まといになるなんて、それでも私の婚約者か!!」と、部隊全員の前で私を詰った。
おかげで私はこの城ではずっと、「来て早々魔物退治の部隊の邪魔をした役立たず」って、後ろ指を指されることになった。
次期当主のオーテクルテスファー様と、城の魔法使いたちを統率するブークリアス様がそうしているのだから、すっかりそういう印象がついてしまったみたい……使用人達までみんなそう言って私を嘲笑っている。
ブークリアス様は、私に振り向き冷たく言った。
「とにかく、さっさと終わらせなさい。向こうに積んである書物を、城にいるカテリスラ家の一族の方々に届けるのです」
「え…………」
それ……どこにいるのか、分からないんじゃ…………
けれど、そんな疑問すら許されるはずもなく、彼女は捲し立てるように続ける。
「あなたのせいで遅れたんです。ちゃんと謝りなさいよ? 社交界での礼節も知らないなんて……淑女とは言えませんよ?」
「はい…………」
淑女……そんなものでないことは、もう自分ですでに分かってるんだけど……
頷く私に、彼女は背をむけ、書庫の方に向かって歩いて行く。
「ふん。辛気臭い女……」
ぼそっと言われた言葉まで、ちゃんと耳に入るから困る。
そもそもこれは、キャデリレーラ様が、一族に配ることが決まっていたもの。それを、彼女は魔法の練習があると言い出し、オーテクルテスファー様がそれならフィレイルイラルにやらせておけばいいと言ったらしい。
それを頼まれたのが、ついさっき。
それで今すでに配れていたら、私の魔法もなかなかのものだなーーって、自慢できたんだけど……
指定されていた書物を棚から抜き出すと、背後から、彼女の従者の魔法使いたちがヒソヒソと話す、冷たい声が聞こえてくる。
「全く……役立たずもいいところだ……」
「本当に……目障りで仕方ないわ!」
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構っていないで、早く本を配らなきゃ!!
私は、急いで仕事に戻った。
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