誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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28.お待たせしました

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 領主様と別れてから、私たちは運んだ素材の状態を確認し、昼食を取ってから、キュファリウェスに使用人のための服を貸してもらった。

 ロクデラッド様の城のメイドたちが着ていた服に似ているけど、結界の魔法をかける装飾品が腰の辺りに取り付けられている。仕事中魔物に襲われても、すぐに自分の身を守れるようにするためだろう。

 素材の運搬ですっかり汚れてしまったけれど、風呂に入って体を洗い、そんなものを着ることができて、私は有頂天。裾を上げてまじまじと服を見つめてしまう。

「すごいっっ!! 見てっっ!! キュファリウェス! 似合う!?」
「はいはい……見てるわ。似合ってます」

 なんだか彼女は呆れた様子。

 だけど、仕事が終わって食堂に案内されて、昼食を食べたりしている間に、すっかり打ち解けられたみたい。

 彼女も肩の力が抜けたようで、そんな彼女の様子を見ているのは嬉しい!

 こんな風に話せる相手は初めてで……なんだか感激だ。

「……こんなにハラハラさせられる人は初めてだわ……」

 ……ますます呆れられているような気もするけど……

 ヴィラウレルト様のところへ行って怒鳴られたり、ロズルラト様と追いかけっこをしたり、領主様に出くわしたり……結構怖い思いをさせちゃたからなーー……

 けれど、彼女は心配そうに言う。

「本当に、大丈夫……? テクフィノレク様と魔法の道具の確認だなんて…………もしも、それが動かなかったら……」
「大丈夫!」
「何がっ……!? し、失礼かもしれないけど、言わせてもらうわっ……! あ、あなた、捨て駒にされてるの!! そんな風にあなたを差し出したオーテクルテスファー様が、領主様に対して誠実でいるなんて思えないっっ!! 貴重な魔法な道具を差し出すはずがないわ!! 例え動いたとしても、それがもしも動かなくなったら、何をされるか分からないのよ!?」
「私のことを心配してくれるの?」
「……っ! 悪い!? もうっ……こんなに手のかかる使用人、初めてだわっ……!!」

 その勢いに気圧されてしまいそうな私に、彼女は難しい顔をして言った。

「やはり……一度、領主様に相談した方がいいんじゃない? ……テクフィノレク様は……容赦のない方だし……」

 けれどそこで、部屋のドアの向こうから声がした。

「そこにいるのですか? フィレイルイラル。早くしなさい」

 テクフィノレク様の声だ。

「迎えに来てくださったみたい」
「……断罪に来たのよ。馬鹿ね」
「ばか!?」

 ……なんだかここに来てからよくそんなことを言われているような気がする。

 けれど、そんなことを言いながら、彼女の表情は真剣そのもの。

「フィレイルイラル……気をつけて。私は……あ、明日も素材を運ぶのを手伝ってほしいんだからね!!」
「明日も? それは、明日も私と仲良くしてくれるってこと!??」

 私が嬉しくて言うと、彼女は顔を赤らめてしまう。

「……や、やめなさい!! そんなこと言ってないわ! ただ、使用人の一人として便利だから言ってるだけよ!!」

 騒いでいたら、窓の方から声がした。

「何騒いでんだー? お前ら」

 魔法で開けたらしい窓から勝手に入って来たのは、まだ小さな猫サイズのロズルラト様。

「ロズルラト様……そんなところから急に入ってこないでください……驚いてしまいます」
「俺はお前に急ぎの用があったんだ!」
「急ぎ? 何かご用ですか?」
「俺も行く!!」
「はい?」
「俺も連れてけ!! 魔法の道具が動くか確かめに、外に出るんだろ?」
「はい……そうですが…………ロズルラト様は、城の周辺の見回りがあるのではないのですか?」
「それは副隊長に任せて来た!」

 言って、彼は窓から床に降りる。

 そして、私に振り向いた。

「もともと、今日の見回りは結界が強固な辺りだ。魔物が現れることもないだろ」
「けれど……だからと言って、あなたが一緒にいらっしゃることはありません。部隊の方も、あなたを頼りにしているのではありませんか?」
「まあな!! 俺に変わる隊長はいないからな! だけど、お前も部隊だろ!」
「私が?」
「そうだ! お前も反乱軍だろ!?」
「……違います」

 すっかり反乱軍にされてしまった。どれだけヴィラウレルト様と喧嘩がしたいの……血の気の多い虎さんたちです。

 けれど、彼は一緒に行くと言って聞かない。彼にも譲れないものがあるのかもしれない。

「反乱はしませんが、では、一緒にいきましょう」

 私が言うと彼は「物分かりがいいじゃねーか!」と言って駆け寄ってくる。

「あのっ……どうか、お気をつけて」

 キュファリウェスに言われて、私は彼女に行ってきますと言って、ドアを開いた。

 すると、そこにいたテクフィノレク様は私に向かって激しく怒鳴る。

「早く開けなさい!!」
「へ?!! あ……」

 そういえば、ノックの音がしてから、だいぶ時間が経ってしまった。その間、ずいぶん待たせてしまったのだろう。

 テクフィノレク様は、腕を組んで私を睨みつける。

「人をこれだけ待たせておいて……何をしていたのですか!?」
「これから生き残る準備をしていました。お待たせしてしまい、申し訳ございません」
「全く……グズな道具め…………行きますよ。今度遅れたら、その首を吹き飛ばします」
「はい! 気をつけます!! それと、テクフィノレク様!!」
「……まだ何か用があるのですか?」
「お待ちいただいて、ありがとうございます! こちらからお渡ししたものが役に立つよう、全力を尽くします!」
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