誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐

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30.彼らからしたら

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 私は、テクフィノレク様と対峙した。

「あなたなら、たとえば道具に魔法がかけられていたとしても、その魔法、道具によって、最適な対処ができるはずです」
「……仕掛けられた罠の正体が分からないから、苦労しているのです」
「ですから! 私にお任せください! 私が見てきますので、そこにいてください!! 私は、そのために来たんです!」

 私が、訓練場に突き立てられた魔法の道具に向かおうとすると、テクフィノレク様は、私に小さな瓶を投げて寄越した。

「魔力を回復する薬です。どうせ、魔力なんて残っていないのでしょう?」
「ありがとうございます!!」
「……根っからの馬鹿ですか? 礼など言って……私は、あれの安全性を確かめるには、あなたを犠牲にするのが一番だと思っただけです」
「大丈夫です! 私は、犠牲になんてなりませんから!」

 もらったものを飲み干し、魔法の道具に近づく。

 それに触れてみたら、それは確かに、ただの魔法の道具だ……魔力を注いで試してみても、結界も張れるようだし、多くの魔力を持っているみたい。

 ………………ちゃんとした魔法の道具?

 何度か確認してみるけど、結界を張ることも、結界の魔法の強化も出来る。

 約束通りの物であるはずなのに……むしろ、こうある方が、拍子抜けだ。

 そもそも、それだけ信用できないものを、テクフィノレク様が持って来るかな……途中で破壊することもできたはず。
 ……竜の領主様の意向に従ったのかもしれない。竜の領主様は、寛大そうな方だったし、これで全部なかったことにしてやろうと提案してくださったのかもしれない。

 私は、テクフィノレク様に振り向いた。

「大丈夫です。本当に、ただの魔法の道具です」

 集まっていた誰もが、ほっと肩を撫で下ろしたように見えた。みんな、恐ろしかったのだろう。

 けれど、テクフィノレク様だけは気に入らないかのような顔をしている。

 竜の領主様が、これで全部なかったことにしようと、そう提案してくれることは、私たち、ロクデラッド様側の者たちからしたら、心から感謝しなければならないことだ。

 でも、ここにいる方々、特にテクフィノレク様にとっては、怒りのやり場がなくなってしまったはずだ。

 彼は、ずっと私からは目を背けて、俯いていた。

 私は、テクフィノレク様に歩み寄った。

「テクフィノレク様」
「なんですか……」

 私は、彼の前に片手を差し出した。

 そのてのひらには、先ほどロズルラト様を捕まえるために使った、小さな植物の破片。

 さっきと違って、もう魔力だって回復している。私が手のひらのそれに向かって魔力を飛ばすと、テクフィノレク様の前でパンっと音を立てて弾け飛んだ。威力なんて全くなくて、小さな風船が弾けた程度だけど、相手をちょっとびっくりさせることくらいはできる。

 けれど、そんなことをされたテクフィノレク様は、ますます苛立った様子で、私を睨みつけてくる。

「…………何の真似ですか?」
「私、反乱を起こしたいんです!!」
「……………………は??」
「反乱です!! 手伝っていただけませんか!?」
「…………」

 言うと、彼の顔が見る間に怒りの表情に変わっていく。

「……このっ……どこまでもっ…………人をからかってっ…………!!」

 ついに堪忍袋の尾が切れたらしい彼は、私に向かって魔法を撃ってきた。

 だけど、それは予測できたもの。

 私は魔力を使って体を強化して、攻撃を避けた。
 ふわっと浮き上がった私が彼から離れると、彼の撃った弾は地面に着弾して、爆風が吹く。

 少し離れて対峙すると、ますます彼を怒らせてしまったことが分かった。

「貴様…………」
「……約束したではありませんか…………こちらからお渡ししたものが、確かに役に立つことを証明すると。お渡ししたものは、領主様や他の魔法使いの方々には気に入ってもらえそうですが、あなたにはそうでなかったご様子! でしたら、私にお任せください!」
「…………あなたに何ができると言うのですか……」
「ですから、気に入らないところがあるなら、不満は私にぶつけて下さって結構です!! それに、私と反乱を起こすと言うのはどうでしょう? あなたの怒りはもっともです。私だって腹が立ちます。関係のない方を傷つけるわけにはいきませんけど…………ロクデラッド様とオーテクルテスファー様を蹴飛ばしに行くのはどうですか!? 私も行きたいので!!」
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