好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐

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10.されるはずない!

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 死にたい……

 そう思っていたら、それは声に出たらしい。

 学内の噴水の前。並んだベンチで隣に座るウィセーアが、首を傾げた。

「どうした? いつもにも増して斜め下向きだな」
「俺…………殿下に、不快な思いをさせてしまったんだ……」
「……また可愛い顔して。何があった?」
「か、からかわないで……あの、えと……これ……」

 俺は、持っていた紙袋を開いて見せた。中にぎっしり詰まったものを見て、ウィセーアはすごくびっくりしている。

「うわっ……! なにそれ!! すごっ……もしかして、俺に土産?」
「あ、うん……あ! でも、俺からじゃなくて、殿下から……なんだ……」
「殿下? なんで殿下が…………毒でも入ってる?」
「そ、そんなはずないだろっ……! あの……あの、お弁当屋さんでもらって、でもそれ、ウィセーアので……」
「何言ってるかわからないなー。とりあえず、最初から話してみろよ」
「あ、うん……あ、あ、あと……えと…………あの、その……」

 い、いいづらい……

 だけど、さすがウィセーア。俺がこんな風におろおろすることには慣れているようで、俺が説明するのを待っていてくれてる。

 こいつは大事な親友……殿下とだって、うまくいって欲しい!

「あ、あの……これ……その……弁当屋さんで、殿下がくれたんだ。サービスって言って……だけどこれ、俺のじゃないんだ。殿下が、ウィセーアに渡すはずのものなんだ!」
「……なんで、俺?」

 きた……

 俺は、ビクビクしながら、あの地図が描かれたカードを出した。

「ごめん……見た」
「うん。それで?」
「ほ、本当にごめん!! 悪気はなかったんだ……」
「……なんでそれを俺に謝るの?」
「え?」
「だってそれ、お前に宛てたものだろ?」
「……何言ってるんだ?」
「だって、部屋にこいって言うのは特別なことだから。婚約者しか呼ばないだろ」
「……だから……婚約者って、お前だろ?」
「……は?」
「だ、だから、婚約者はお前だろ?」
「俺、違うけど?」
「……………………え?」

 何を言っているんだ? こいつは。からかっているのか?

 けれど、ウィセーアは、不思議そうに首を傾げている。

「俺が殿下の婚約者なわけないだろ? 俺、好きな奴いるし。なんで、俺だと思ったの?」
「だ、だって……みんな噂してるだろ……! お前が、エクウェル殿下の婚約者だって!」
「確かにそうだけど、それをヴァンフィが信じるのはおかしくない? 婚約者なのに」
「……そっちこそ、何言ってるんだよ。俺が婚約者なわけないだろ!!」
「え……? 求婚されたんだろ?」
「されてない」
「ええええええっっ!!??」

 なんでこんなにびっくりしてるんだ? 俺が求婚なんて、されるはずないのに。

 それなのに、ウィセーアは、大声を上げて、心底不思議そうに聞いてくる。

「だって、指輪!! 渡されただろ!?」
「……渡されるはずないだろ。なんのことだよ」
「はあ!!??」
「そんなの、俺が渡されるはずない……俺、嫌われてるし……まして、指輪なんて……」
「え……ほ、本当に渡されてないのか!?」
「渡されてないよ……見たこともない」
「そんなはずないんだけどなー……だって、エクウェル、渡したって言ってたよ? 指輪も渡して、返事待ちだって……」
「…………それ、お前が、俺と誰かを勘違いしてるだけだろ? 俺がそんなの渡されるわけないじゃないか……」
「うーん…………そんなはずないんだけどなー……本当にもらってない? これくらいの……小さな箱に入ってるはずなんだけど……」

 ウィセーアは、指で宙に拳くらいの大きさの箱を描くけど、もちろん俺はそんなもの知らない。

「何度も言うけど、俺は何ももらってない。俺に指輪なんて、くれるはずないし、求婚だってされてない。されるはずがない」
「うーん。困ったなー」

 ウィセーアは、腕を組んで考え込んでいる。

 不思議なのは、俺も一緒だ。

 どういうことだ? 婚約者はこいつじゃないのか?

 ……じゃあ俺は、殿下が婚約者に宛てたものを全く関係ない人に渡していたのかーーーー!!

 ど、どうしよう……俺はなんてことをしたんだ……!

 い、今からでも、これは殿下にお返ししよう!! 多分もう、めちゃくちゃ嫌われたし、二度と近づくな、くらいのことを言われたけど……せ、せめて、返すだけでもしたい。

「お、俺……殿下に会ってくる……」
「うん。それがいい。それで指輪のことを聞いてきて」
「これ、渡してくる!!」
「は!? それはもういいから!!」

 背後でウィセーアが叫ぶけど、俺は振り向かずに、紙袋を持って、部屋を飛び出した。
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