全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
2 / 96

2.それは不可能な嫌がらせです


 俯いていた顔を上げると、コンクフォージと目があってしまった。
 彼は、涙目でディラロンテに訴える。

「ディラロンテ様!! 見てください!! 睨んでます!! 反省してませんよ!! 俺を背後から襲っておきながら!!」

 またそんな不可能なことを言い出した……

 僕はずっとこの地下にいることを強いられているから、今日は朝からコンクフォージには一度も会っていないのに、どうやって襲うんだよ。

 だけど、僕がそんなことを訴えたところで、ここでは誰も聞いてくれない。
 結局、僕が何をしても、僕が全部悪いってことになるんだ。

 俯いていたら、ディラロンテは僕に向かって、庇うように両手を広げた。

「彼には彼の言い分があるのでしょう。それを聞いてみようではありませんか!」

 すると、誰もがその言葉を称賛して、僕の方に振り向いた。

 なんか言い訳しろってことだろう。

 だけど、言い分と言われても、僕は何もしていないし、嫌がらせもしていない。でもそれは、ここに入れられる前に何度も繰り返し訴えている。もう喉が痛いくらいだ。
 それでも誰にも聞いてもらえず、散々否定され続けたし、今また同じことを言っても、また暴力を受けるだけと知っていて口を開けるほど、僕も学習しない方でもない。

 黙っていると、ディラロンテはため息をついた。

「困りました……何も言ってくれないのですか……私はあなたの言い分を聞こうとしているのに……」

 やけに大袈裟な態度で残念がるディラロンテに、周りの奴らは次々に賛成する。

「もうこんな奴、ここに置いておく必要ないですよ」

 そう言って僕を見下ろした取り巻きのうちの一人が、運悪く、僕が正座した足の下に隠したものを見つけてしまう。そしてそいつは、すばやく僕が持っていたものを取り上げた。

「こいつっ……! 何か持ってます!!」
「返せっ……!」

 手を伸ばすけど、届かなかった。

 その男から鳥籠を受け取ったディラロンテは、酷い顔で僕を見下ろす。

「なんですか? これは」
「…………魔物と戦うための道具です……返して……ください……」
「返せません。こんなものを持っているなんて……許せません」
「な、なんで……ですか…………? ぼ、僕っ……普段から魔物と戦っているんです! だったら、僕がそれを持っていても、別に……おかしいことじゃないんじゃ……」
「黙れっ……!!」

 怒鳴りつけて、ディラロンテは僕を鞭で打った。
 額が切れて、血が流れる。

「お前のような悪辣な男を、私たちはここに置いてあげているのに……そんな態度だなんて……呆れます。ただで済むとは思わないことです」

 そう言うディラロンテに、取り巻きの一人が言う。

「もしかして、その鳥籠で、またあの竜の王子を襲撃する気なんじゃないんですか?」

 それを聞くと、僕は今度は罪悪感で吐きそうになる。

 この男が言っていることは本当で、僕は、この国の竜族の王子、ロティンウィース様を、悪事を働く竜と間違え背後から襲ったことがあるんだ。
 あれは本当に申し訳なかったと思っているし、謝罪もしたいけど……多分もう無理なんだろうな……ディラロンテたちが、僕を解放するはずがない……

 ディラロンテは、その取り巻きを睨みつけて黙らせると、鞭を握ってゆっくり僕に近づいてきた。
 この男はいつも、躾だの指導だのと言って、僕を拷問する。

「押さえていろ……」

 ディラロンテに言われて、僕の右腕をさっきの取り巻きが掴み、コンクフォージが左腕を掴む。

 また鞭で打たれるんだろう。

 だけど、その鳥籠だけは返してもらわないと困る。

 僕は、ディラロンテに頭を下げて懇願した。

「お願いします。どうか、それを返してください。それがないと、魔物と戦えなくなります」

 下げた頭には、水が投げつけられた。さっきの毒入りの水、まだあったんだ。水浸しになった僕を、ブラットルが怒鳴りつける。

「魔物と!? 嘘をつけ!! どうせまた、コンクフォージ様をいじめるつもりだったんだろう!」
「ディラロンテ様!! こんな奴、丸腰で魔物の前に突き出せばいいんです!!」

 続いて喚くコンクフォージに、ディラロンテは微笑んだ。そして、「コンクフォージ様の言うとおりだ!」と言って僕を嘲笑うブラットルも制止して、僕に振り向く。

「構いませんよ。あなたがこの罰に耐えられたら」

 そう言ってそいつは、楽しそうな笑みを浮かべ、鞭を振り上げた。

あなたにおすすめの小説

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます

ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。 しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。 ——このままじゃ、王太子に処刑される。 前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。 中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。 囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。 ところが動くほど状況は悪化していく。 レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、 カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、 隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。 しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。 周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり—— 自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。 誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う—— ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。