全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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3.どこに行くんだろう……


 それから僕は、「何を企んでいるのか吐け」って怒鳴られ続けて、鞭で打たれて、城の外に突き飛ばされた。穴だらけの服だけ着て、靴も履かせてもらえないまま。

 ボロボロの僕に命じられたのは、数人の傭兵たちと、街の周辺に魔物がいないか調査してくること。

 だけどもう夜だ……今日も眠ることも許されずに戦わなきゃならないのか……

 だけど、それくらい街もその周辺も魔物で溢れている。

 それなのに、領主の代わりのアフィトシオは、酒を飲んで遊んでいるだけだし、息子のディラロンテは四六時中あの調子。

 おかげで、街の郊外には毒を持った魔物がうろつき、それに侵された人が倒れて、回復の薬の不足が続いている。
 隣町に続く道だって、魔物が出るから危険だという理由で閉鎖されたままだ。だけど、ここは物資も少ないので、その道を通って買付に行かないと、飢えて死ぬ。
 そして、閉鎖されたからと言って、そこを使わなかったら、もっと危険な魔物に襲われるので、結局はその道を通るしかない。

 こんな状態になっても、アフィトシオは「通らなきゃいいだろ」なんて言っていて、息子のディラロンテは「規則を破ってそこを通る方が悪い」としか言わない。意味が分からない。

 物資不足が続く街は、大通りやその周りは賑わっているけど、少し横道に入っただけで、物取りと暴力が横行するほど荒れている。

 暗い街をフラフラ歩いて、待ち合わせの場所につくと、そこには、数人の傭兵たちが待っていた。

 僕は、ボロボロの服を脱いで、彼らに、体の焼き印を見せた。僕が、アフィトシオに遣わされてきた証拠になるものだ。傭兵たちと魔物退治に行く時は、一応こうすることになっている。首につけられた首輪を見ただけでも分かるはずだし、いちいちこんなことをするのは恥ずかしいけど、しなかったら、また後で鞭で打たれる。あいつら、僕のことをとことん辱めたいらしい。

 傭兵たちは頷いて、無言で歩いていく。

 余計なことは話さないタイプらしい。僕と気があいそうだ。

 だけどこの傭兵たち……いつもディラロンテが雇う奴らとは違うみたいだ……

 こうしてついていくだけで、微かに魔力を感じる。
 これだけで魔力を感じるなんて……きっと、かなりの使い手だ。そんな人を集められるなんて、ディラロンテにしては珍しい。

 嫌だな……

 こうして集められた傭兵たちも、僕が悪徳領主の息子だと知っていることが多く、恨みを晴らすかのように殴られて、持っているものを奪われることが多い。魔力があって使い手なら、酷くなぶられる可能性が上がるだけだ。

 トボトボ歩いて、僕は彼らについて行った。

 しかし……

 ……こっちじゃない気がする……魔物退治に行くなら、街を出なくてはならない。それなのに、どこに行くんだ?
 もしかしたら、人気のないところに連れ込まれて、また罵声と暴力を浴びせられるのかもしれない。

 けれど彼らは、街の噴水の前で立ち止まった。

 そこには、一人の男が立っていた。どこか妖艶な金色の長い髪の、僕よりずっと背の高い、黒いローブを着た男だった。どこかで見たことあるような気がするんだけど……気のせいか?

 傭兵たちが彼に駆け寄り、その男は僕に振り向く。

「トルフィレ……」
「え?」

 僕のこと、知ってるのか? 確かにどこかで見たような顔だが……どこかで会っただろうか。

 思い出せない僕に、男は目を輝かせて駆け寄ってくる。

「俺だ! トルフィレっ……!! 忘れたのか!?」
「…………え?」

 そう言われても……どこかで見たような気はするんだが……

「え……えーーっと……」

 ……どうしよう……全く覚えていない。

 多分……どこかで見たことはあるんだけど…………どこだろう……?

「すみませんっ……あの……ど、どちら様でしょう…………」
「その余裕……さすがだな。トルフィレ」
「……」

 ……誰だよ。さっきからトルフィレトルフィレと馴れ馴れしい。

 僕にこうして親しげに話しかけてくる奴には二種類いて、優しいふりして近づいて、後で僕にいじめらられたーなんて言い出して、僕が罰を受ける様を眺めていたい奴。あとは、僕から何か搾取したい奴。僕から搾取できるものなんて、もう全くないんだけど。

 だけど、彼が僕に向ける笑顔は、そのどちらとも思えない。

「分からないか? 俺はロティンウィース! トルフィレに負かされた竜だ!!」
「へ!?」

 負かされた? なんのことだ?

 それはわからないけど、ロティンウィースという名前には覚えがある。この国の第二王子殿下だ!

「思い出したか!? トルフィレ!!!!」
「あ、あ…………も、申し訳ございませんでした!!」

 僕は叫んで、その場に跪いた。

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