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6.バイト募集の張り紙見てきましたー! 王子でーす!
騒いでいる猫と竜を放置して、ロティンウィース様は、僕から離れてくれた。
「トルフィレ。突然馴れ馴れしくして悪かったな」
「……」
これは、さっきの会話は聞こえていなかったていで話した方がいいのか……? 多分、そうだよな……小声で話していたし……
「い、いえ……と……とんでも……ございません……」
「そうか! では、もう一度近づいていいか!?」
「えっ…………!? え、えっ……と…………」
さっきみたいに肩を抱くってことか?
正直、恐ろしい。他人が僕に触れる時は、大体僕を痛めつける時だからだ。
だけど、相手は王子。しかも、僕はこの方に一度、あり得ないほど無礼な真似をしている。断るなんて、できるはずがない。
僕は、俯いたまま頷こうとした。だけど、体が震えて、言うことを聞かない。早く「もちろんでございます」って答えなきゃならないのに。何してるんだ……僕。構いませんって言わなきゃ。
それでも何も言えないでいると、ロティンウィース様は優しく言った。
「トルフィレ…………」
「は、はいっ……!」
「やはり、突然馴れ馴れしかったな! すまない!」
「えっ……!? そ、そんなっ……! とんでもございません……」
「近づくのは、もっと時間が経ってからにしよう……距離が近づいたら触れることにする! それは構わないか?」
「え……えっと…………はい……」
触れるって、何をされるんだろう……距離が近づいたらって…………?
よく分からないけど頷くと、ロティンウィース様は嬉しそうに笑っていた。そして、やっぱり僕に聞こえてしまっている小声で「……好印象だな……」なんて呟いている。独り言か? なんなんだ……一体……
訳がわからず立ち尽くす僕に、ロティンウィース様はにっこり笑う。
「トルフィレ! これから街とその周辺に魔物がいないか、調査に行くのだろう??」
「え!? な、なぜ……それを……ご、ご存じなのです?」
「俺はトルフィレのことなら、なんでも知っている」
「………………」
……なんでもって……なんで? ちょっと怖い。さっきから言ってることも訳がわからないし……
本当に、一体なんなんだ?
そもそも、なぜ僕はこんな風に王子殿下と話しているんだ?
だけど、王子は本当に楽しそうだ。
「俺も調査に行く」
「………………え?」
「俺も魔物の調査に行く! 連れて行ってくれ!! そのために、俺はここまできたんだ!」
「え…………?」
調査って、王子が? 僕と? 危険な魔物退治に? 何を言っているんだ?
本当に、訳がわからなくなりそうだった。殿下は何を言っているんだ?
一緒に行くって、そんなこと、できるはずがない。王子に何かあったらどうするんだ!
「な、何をおっしゃっているのです!? そ、そんなこと……き、危険です! どうかここは、僕にお任せください!!」
「なぜだ? アフィトシオはいいと言ったぞ」
「ええっっ……!? そ、そんな……ば、馬鹿なっ……」
「馬鹿じゃない。トルフィレと一緒に行って来い、だそうだ!!」
「…………」
そんなはずがない。
アフィトシオだって、王子にそんなことをさせるはずがない。以前魔物退治の援軍を頼んでおいて、また魔物を放置して領地に魔物が溢れているなんて、王家には絶対に知られたくないはず。
まして、王子を僕と魔物退治になんて、行かせるはずがない。
それに僕は、「傭兵達と一緒に魔物退治に行け」と言われていて、王子のことなんて、一言も聞いてないのだが……
「……あ、あの…………殿下……」
「どうした?」
「あの……アフィトシオ様には……も、もちろん、王子殿下として……お会いになられたのですよね?」
恐る恐るたずねると、ロティンウィース様は得意げにニヤリと笑う。そして古びたフードをかぶって、魔法で大きな剣を作り出し肩に担ぐと、わざわざ魔法で声を変えて言った。
「魔物調査のバイト募集の張り紙見て来ましたーーー!! 傭兵のロウィスでーす!! よーろしくーーーーっ!!」
「……………………」
アフィトシオの前ではそう言ったのか……
僕をここまで連れてきた傭兵たちも、そんなふりをした殿下の護衛達だったんだろう。
気づけよ、とも思うが、アフィトシオは傭兵を雇うとき、何にも考えてない。相手の顔も見てなくて、酒を飲んで「あとはやっておけ」って言うだけ。力量とか、魔物退治に行かせても大丈夫かとか、本当に行く気はあるのかとか、そんなことはどうでもいいらしい。あいつが雇った傭兵や魔法使いの中には、僕を殴り倒してわずかに持っていた回復の薬だけ奪っていったり、僕に殴られたと喚き出してアフィトシオに金をせびる奴までいた。
しかも、バイトの張り紙、まだやってたのか……凶暴化した魔物と戦うのはかなり危険だからやめた方がいいって進言したのに、まるで聞いてない。高額な報酬に釣られてきた街の人が危険な目に遭うのに……
魔物と戦うなら、ディラロンテやブラットル達がいるのに、あいつらはまた何もしないらしい。
とにかく、王子をそんな危ないところに連れてはいけない。アフィトシオに王子だということを隠してここにいるなら尚更だ。
「で、殿下!」
「どうした? トルフィレ!」
「そ、そんなっ……き、危険なところに、殿下を連れて行くわけにはまいりませんっっ!!」
「馬鹿を言うな!! 俺はトルフィレと共に戦うためにここまで来たんだ!!」
「え? ええ??」
「不満か!? 共に戦うのが俺では!」
「いえ、ふ、不満だなんて……」
不満なんじゃなくて、とても心配なだけです。
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