全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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15.もう分かったので、説明はしなくていいです

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「で、殿下っ……あ、あのっ…………! お、お言葉ですがっ……!」
「お言葉も聞かん!! 仕方ないな……」

 ロティンウィース様は、僕をベッドまで抱っこで運んで、そこに座らせた。

 広い部屋の、柔らかいベッドな上に、大切に下されて、怖くなる。

 何で僕が、こんなことをされているんだ……

 それなのに、殿下は僕を見下ろして言った。

「大人しく回復の魔法をかけさせてくれ……俺は早く、トルフィレに触れたいんだ」
「ふ、ふれ? ふれっ……触れる!?? え、えっと……」

 ロティンウィース様が何を言っているのか分からない……

 触れるって、なに? 僕に触りたいのか? だったら断る理由なんかない。

「え、えっと……よ、よく分かりませんが……ぼ、僕に触りたいのなら、どこでも、好きなように触っていただいて構いません……か、回復など、なさらなくても……」
「……そうじゃない……俺は、ただトルフィレに触れたいと言っているわけではないんだ」
「……え…………えっと…………? え? えっと……ぼ、僕なら、す、好きにしていただいて構いません…………あ、でも……死ぬような刑なら、もう少し待っていただけると……うむっ!!!!」

 まだ話している途中だったのに、ロティンウィース様は僕の口に手を当てて、僕の言葉を遮ってしまう。

 どうしたんだ?

 殿下が何を望んでいるのかは分からないし、死ぬのは困るが、僕のことなら、好きにしてもらって構わないのに。

 それなのに、ロティンウィース様がひどく辛そうにしているから、僕は、その手がなくても、何も言えなくなってしまった。だって、殿下の手は、微かに震えている。

 僕を魔法で打ち倒したロティンウィース様は、本当に強かった。多分、彼が本気で、僕を殺す気でやっていたとしたら、僕はきっと、あれだけじゃ済まなかった。

 そんなロティンウィース様が、今は震えていて、僕には、どうしていいのか分からない。

 それでも、彼は初めて僕に微笑みかけてくれた人だ。そんな苦しそうな顔をしてほしくない。僕のことなら、好きにして構わないから。

 ベッドの上で、僕まで苦しくて、殿下を見上げる。すると、ロティンウィース様の手が、僕の頬に近づいてきた。
 とっさに、目を瞑ってしまう。頬なんて、殴られたことしかない。ロティンウィース様がそんなことをするはずがないのに。

「あ……っっ!!」

 殿下の大きな手が、そっと僕の頬に触れて、僕の体が、ビクッと震える。けれど、それだけだ。殿下は、僕に優しく触れただけ。

 触れるって……こういうことなのか?

「トルフィレ……俺は、トルフィレに一言、愛していると伝えたくて、触れたいと言っているのだが……分かっているか?」
「…………あ、愛して……? え……えっと……何のことか、よくわからないのですが…………殿下が国民のことを大切に思っている方だということは、分かっています……ぼ、僕のことも……こ、こんなふうに、丁寧に扱っていただいて……感謝しています」

 そう感謝を伝えたつもりだったのに、ロティンウィース様は肩を落としてしまう。

「そうじゃない…………ここまで何も伝わらないとは…………」
「え……? え? えーっと……何が……」

 で、殿下の期待に応えられなかったのかな? 僕はまた何かしでかしてしまったのか?

 慌て始めた僕だけど、殿下はまた顔を上げて、僕の頬を優しく撫でてくれる。

「俺は、トルフィレに会いたくて、ここまで来たんだ」
「…………???? は、はい…………あの……ぼ、僕のことなら、す、好きに……して、い、いただいて…………」
「俺はトルフィレを愛している。トルフィレさえよければ、俺と婚約してほしい」
「はい………………はい?」

 なんて?

 つい、はいって言っちゃったけど、今、なんて言ったんだ?

 どうされてもいいけど、こんやくって…………婚約?? え? 僕と?

 何かの冗談か? それとも、僕が聞き間違えたのか? それとも、僕が思っている婚約とは、違うもののことだったりするのか!? だって、僕と王子殿下が婚約なんて。

 それなのに、ロティンウィース様は僕の返事を聞いて、顔を明るくする。

「そうだっ……!! トルフィレ!! やっと通じたか!!!」
「え…………え? えっと…………」
「俺と婚約してくれるか!?」
「えっっ!!?? ま、ま、待ってください!! あ、あのっ……僕、あのっ……こ、こんやくって聞こえちゃって…………あの、こ、こんやくって、なんで……すか?」
「何だと!? 知らないはずがないだろう!! 結婚を申し込んでいるんだ!」
「けっこんっっっっ!!?????」

 今、結婚って言った!? 僕と、王子殿下が!?? けっこん!??

 そんなことあるわけない。なんでいきなり結婚、なんて話になるんだ!?

 信じられない僕だけど、ロティンウィース様は「そうだ! 結婚だ! 婚姻を結ぶことだ!」なんて、丁寧に説明を続けている。

「俺は、トルフィレを妻にしたいんだ!」
「あ、あの……もう分かったので、説明はもういいです……そ、そうじゃなくて……」

 一体、どうなっているんだ?!

 あまりに突然で、びっくりする僕。

 驚いて当たり前なのに、殿下は、キョトンとしている。

「どうした? トルフィレ」
「だ、だって……け、けけ、結婚って……」
「そうだ。俺はトルフィレに求婚したいんだ! 求婚というのは……」
「もう分かったので、大丈夫です…………そうじゃなくて、そ、そんな、そんなこととは……お、思わなくて……け、結婚!? な、な、な、なんで…………」
「なんで? 俺がトルフィレのことを愛しているからに決まっているだろう?」
「………………」

 何言ってるんだろう…………王子殿下が? 僕を? 愛してる??

 そんなはずない。以前のことを怒っていて、僕を殺したいと言うなら分かるが、なぜ、そんな話になるんだ!!??

 さすがにもう信じないぞ!! だけど、ロティンウィース様が僕を騙すはずがないし……もしかして、殿下も何かに騙されているのか…………? それで、僕に求婚を……でも、殿下がそう簡単に騙されるとも思えないし……だめだ。ますます訳がわからなくて、混乱してきた。

「あ、あの……で、殿下…………僕……」
「もう婚約すると言ったからな……今更撤回はなしだぞ?」
「で……でも、でも、僕…………」
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