全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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24.巻き添え食らうよ! 帰りな!


 しばらく歩くと、目的の店が見えてきた。それはこの街でも一際大きい店で、武器や防具、回復の薬を売る以外にも、それを作ったり、修理なんかもしている。店の隣には、大きなお屋敷みたいな建物があって、そういった作業をするための大きな作業場になっている。中からは、よく魔法の光が漏れているんだ。その隣が、商品をしまっておくための倉庫。

 いつも賑わっている店だけど、今日は少し、様子が違った。店の周りに客らしき人が全くいない。今日は店を開けていないのかと思ったくらいだ。代わりに、作業場の前で、数人の男が立って、キョロキョロしている。そのうちの一人には、見覚えがある。体格のいい、短い茶髪の男性で、焦っているのか、額に汗をかいていた。店でいつも、売り物の武器の整備をしているレグラエトさんだ。

 彼に向かって、ラグウーフさんが走って行く。

「レグラエトっっ!!」
「ラグウーフっ……!? お前っ……遅いぞ!! 何してた!?」
「ご、ごめんっ……! 途中で魔物に襲われてっ……! そ、それで、そのっ……えっと……」

 彼は、かなり言いにくそうにしながら、僕らに振り向く。まずいと思って、すぐに隠れようとしたけど、間に合わずにあっさり見つかってしまった。

「お前っ……外道令息!」
「…………」

 今はそんな風に呼ばれてたかぁー……外道って……僕、外道なことしてないはずなのに……

 だけど、レグラエトさんは、僕を追い払うようにしっしと手を振る。

「何しに来たんだ!! 帰れ帰れ!!」
「す、すみません……!!」

 平謝りになる僕。だけどラグウーフさんが「ま、魔物を倒してくれたんだっ……」というと、帰れと言って追い払う仕草をするのはやめてくれた。

「魔物をっ……!?」
「そ、そうだよ! 僕のことを助けてくれたんだ!! こ、これっ……! 約束のもの!」

 ラグウーフさんから箱を受け取り、レグラエトさんは頷く。

「よかった……こ、これで少しは……」
「何かあったのか? 店の中が騒がしいようだが」

 そう言って、ロティンウィース様が前に出て、レグラエトさんにたずねる。その姿を見て、レグラエトさんも、いつものようにアフィトシオたちに雇われた傭兵だと判断したみたいだ。

「傭兵かい? アフィトシオのところのだろ? だったら今は帰りな! 報酬もらえなくなっても知らないよ!!」

 彼は、倉庫の扉の方に向き直る。その扉は開けっ放しになっていて、倉庫の中から、ひどい怒鳴り声がした。

「なぜまだ準備できていないっっ!? 俺を馬鹿にしているのか!?」

 喚く声が外まで聞こえて、僕まで震え上がる。

 この声っ……ブラットルの声だ…………

 ディラロンテやコンクフォージと一緒に竜退治に向かった平民の剣士で、街でも強いと有名だった彼は、ディラロンテに召し抱えられるようになってから、ますます乱暴になったらしい。ディラロンテたちのそばにいつも控えて、僕を指差しては「街でも恐れられる悪徳令息が来た!」と言っては喚き散らし、城では「コンクフォージ様をいじめた!」と、僕がやってもいないことをディラロンテに告げ口している。

 倉庫の中を覗くと、様々な箱や武器が並ぶ倉庫の中央にブラットルが立っている。彼に説明を続けているのが、店主のパーロルットさんだ。

 どうやら、ブラットルがずっと喚いているようだ。

 殿下が、「あれはなんだ?」と尋ねると、レグラエトさんが、中をのぞいて答える。

「……ブラットルって言う剣士だよ。昔から、弱い奴を見つけては練習の相手になれって言って木の剣で殴るような乱暴なやつでね……ディラロンテ様に召し抱えられて、さらに乱暴になったんだ。昨日も、突然倉庫に入ってきて、武器を寄越せって喚いて……出さないとディラロンテ様に報告して、反逆だって報告するって言い出して…………」
「ディラロンテに?」

 ついたずねてしまった僕に、レグラエトさんは、ますます苛立った様子で振り向く。

「黙ってろ!!!! ブラットルに聞こえるっ……! 傭兵さんたちもっ……! 離れてないと、巻き添え食らうよ!! ブラットルに目をつけられたら、街から追い出されるからな!」

 あいつ……城の外でもこんなことやってたのか……街でも暴れていることは知っていたけど……

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