29 / 96
29.なぜこうなったのかというと全部僕が馬鹿だったからです
沢山のお茶とお菓子を出してもらった僕は、それからしばらくして、ベッドに横になっていた。
なんでこうなったのかというと、僕が馬鹿だったからだ。
テーブルに並んだお茶とお菓子はどれも美味しくて、僕は食べまくった。
そしたら、パーロルットさんが、「魔物退治に行くのなら、ちょうどいいものがあるんです」と言って、魔法の武器と道具を持ってきてくれるって言い出した。
でも、そんなの悪いし、いいですって言おうとして、慌てて立ち上がったら、椅子の脚に足を取られて転んで、ちょうど、魔法の武器や薬が入った箱を持ってきてくれた人とぶつかってしまった。せっかくそれを持ってきてくれた人も転倒して、僕は頭に箱に入っていたものが当たり、隣の部屋にあるベッドまで運ばれた。
自分のしでかしてしまったことを、事細かに思い出す。
そして思った。
もう、今すぐ消えたいいいい……
僕、一体何をしているんだ……
ブラットルにあれだけ偉そうに啖呵切っておいて、自分は馬鹿なことやってみんなに迷惑をかけて……
もう、恥ずかしすぎる。
布団を頭からかぶる。
僕の頭にぶつかったのは、魔物と戦うための魔法の道具で、魔物を一瞬足止めするための、力の弱いものだった。僕も一瞬、気を失っただけ。すぐに僕は、ロティンウィース様に抱きかかえられて目を覚ました。だから、体はなんともない。僕は大丈夫って言ったけど、ロティンウィース様は心配して、パーロルットさんが、「それなら隣の部屋にベッドがあります」と言ってくれて、僕らをここに案内してくれた。
うわああああああ……もう、どうしたらいいんだ……
布団をかぶっていると、こんこんと、ドアを叩く音がした。
うわっ……だ、誰!? 僕、今は誰にも会いたくないい!!
つい、布団をかぶって、いないふりをしてしまう。
すると、ドアの向こうの人は、ドアを開けて、中に入ってきた。
「トルフィレ……起きたのか?」
「……殿下っ……!?」
びっくりして、僕は布団から飛び出した。すぐに立ち上がろうとするけど、焦ったせいでまた転びそうになって、すぐにロティンウィース様に抱き留められる。殿下の腕に包まれるようで、ひどく鼓動が高鳴った。
「……す、すみません…………」
「……謝ることじゃない。俺はトルフィレを抱きかかえられて、幸運だった」
「はい!!??」
ますます真っ赤になる僕を、殿下はベッドに座らせてくれた。
「もうしばらく寝ていた方がいい」
「そ、そんな…………もう大丈夫です……す、すみません……」
「……そんなことを言っていると、押し倒すぞ」
「はい!?」
つい、変な声を出して、身をひいてしまう。
なんて言った今!? 押し倒すって……え!?? な、なんで!?
驚く僕を、殿下はニヤニヤ微笑みながら眺めている。
本気……? まさか。本気じゃないよな!!?? あれか! 冗談ってやつか!! きっとそうだ!!
だけど、殿下はそっと僕に手を伸ばしてくる。
「……せっかくのチャンスだ。既成事実を作っておくか?」
「きっっっっ……!!????」
既成事実って何!?? 僕と!!?? なんで!? そもそも何するの!??
突然のことに混乱して、動くこともできない。布団をぎゅうっと握りしめて体を隠して震える僕を、殿下はじっと見つめている。
「あっ……ぁのっ……えっと…………ぼ、ぼく…………あのっ……っ!!」
震えてたせいで、舌噛んだ…………既成事実って、押し倒すって……!? そんなのしたことないっ……
どうしていいのか分からない僕に、殿下が手を伸ばしてくる。そして頬にそっと触れてくれた。
「冗談だ……何もしない…………」
「え…………」
「だから、怯えるな! 悪かったな! 怖がらせて!!」
そう言って、殿下は僕の頭を撫でてくれた。
だけど僕……ロティンウィース様が怖かったわけじゃない。怯えていたわけでもないと思う……震えてはいたけど、それは全部始めてで、突然そんなことをするのは怖かっただけだ。ロティンウィース様のことは、全然怖くない。むしろ、こうして今そばにいられることが嬉しいのに。頭に触れてもらえることも、声をかけてくれることも。
「あ、あの…………ロティンウィースさま……」
「ダメですよ。殿下。いきなりそんな、不埒な真似をしようなどと」
そばで声がして振り向けば、いつのまにかベッドのそばに立っていたフーウォトッグ様が、僕らを見下ろしている。
今度こそ本当に、心臓が壊れそうなくらいびっくりして、僕は飛び退いた。
さっきまでいなかったのに……
不思議に思っていると、微かに風が吹いて、さっきまで閉まっていたはずの窓が開いていることに気づく。あそこから入ってきたらしい。
殿下はフーウォトッグ様を睨んで言った。
「フーウォトッグ……魔物の調査に行ったのではなかったのか?」
「行きました。そして終わったので、帰ってきました。間に合ってよかった……」
「間に合う?」
「私は心配していたのです。ぐっすりと気持ちよさそうに眠るトルフィレ殿の魅力に負けて、殿下がとんでもないことをしでかすのではないかと」
彼に鋭い目で睨まれて、殿下は「俺はトルフィレにひどいことなどしない」と言って、睨み返す。
ど、どうしよう…………
慌てていると、ドアがこんこんとノックされた。だけど、二人とも睨み合いに夢中で気付いてない。
「あ、あの……ドア、開けますね……」
恐る恐る二人に言って、ドアに駆け寄ろうとしたら、殿下に毛布でくるんと包まれてしまう。そして、抱き寄せられた。
「行かなくていい。俺が開ける。トルフィレは寝ていろ」
「そ、そんなっ……! も、もう大丈夫でっ……ひゃっ!!」
いっぱい眠ったし、ドアを開けるくらいできるのに、殿下は、僕の体を抱きしめたまま、離してくれない。なんだか、こうして強く抱き寄せられることも、気持ち良くなってきた。
そんなことをしていると、全く返事がないことを心配したのか、ノックをした人が部屋の中に入ってきた。
「トルフィレ様……あの…………いらっしゃいますか?」
この声、パーロルットさんだ。彼は、ラグウーフさんとキャドッデさんを連れて部屋に入ろうとして、ロティンウィース様に強く抱きしめられた僕に気づいたみたいだ。
「……申し訳ございません……もうしばらくしてからまた来ます」
「え!?? あ、き、気にしないでください!! 入ってきてください!!」
そう僕が言うと、パーロルットさんは持っていた箱からいくつかの瓶を取り出して見せてきた。
「ちょうどいい媚薬などもありますが……」
「いりません!!」
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。