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37.やっぱり嬉しい
しばらく魔物退治を続けながら森の中を進んで、僕とロティンウィース様は、目的の砦に行き着いた。
かつては、領地を守る砦として利用されていたらしいが、長く放置されて、今は廃墟になっている。この空っぽの砦が、この領地の現状を物語っている気がした。
周りは背の高い木々ばかりで、僕の腰くらいまである草が生えていた。細い枝のような植物が、砦の窓を破壊して伸びている。中には動物でも住み着いているのか、鳴き声のようなものが聞こえた。
中にいるのは、強力な毒を持つ魔物だ。
僕は、自分とロティンウィース様に毒から体を守る防御の魔法をかけたけど、殿下もすでに魔法を使っていたみたいだ。
「殿下……毒から身を守る魔法、使えるんですか?」
「俺のこれは結界だ。トルフィレにも張ったが、必要なかったな」
「いえ……そんなことありません! ありがとうございます! 僕、結界の方は使えないんです……」
「俺は、トルフィレの魔法の方が、初めて見た。さすがは俺に勝った男だ!」
「……僕、勝ってませんよ?」
答えながら、殿下に褒められて、こんな状況にも関わらず、嬉しくなってしまう。
どうやるんだ? って聞かれて、僕は少し照れながら答えた。
「これ……防御の魔法みたいにかけるんです…………よ、よければ、今度……教えます……」
「本当か!?」
「はいっ!! そ、それには、まず毒の魔物をなんとかしないと……い、行きましょう!」
殿下と二人で砦の中に入ると、中も似たような状態だった。
誰もいない砦は、壁が崩れて窓も割れ、すでに中にも雑草が蔓延っている。天井はほぼ崩れ落ちて、そこにできた大きな穴の辺りに、黒い影が一瞬見えた気がした。やっぱり、この辺りに魔物が集まっているみたいだ。
このあたりで増殖した魔物が、街まで来て人を襲っているらしい。それは分かっていたけど、なかなかここまで魔物退治に来ることはできなかった。何しろ、街の魔物を退治するだけで、精一杯だったから。
しばらく進むと、背後で音がして、振り向き様に魔法を放とうとしてしまった。だけどそこにいたのはディラロンテたち一行で、僕は慌てて魔法の標的をそいつらの背後にいた魔物の方に切り替えた。魔物は僕の魔法に貫かれて、崩れて消えていく。
「…………だ、大丈夫ですか……? ディラロンテ様…………あのっ……う、後ろに魔物がいたので……」
「そんなことには気づいていました……」
そう苛立ったように言って、ディラロンテたちは、砦の中に入ってくる。
よかった……彼らに向かって魔法を放とうとしたこと、バレてない。
ホッと胸を撫で下ろす。
だけど、森の中で追いついて来た時は、あれだけ喚いていたのに、今はやけに言葉少なだ。ブラットルには、思いっきり睨まれたけど。
砦の奥から、ずるずると不気味な音を立てて、魔物が近づいてくる。またあの、泥の塊のような形の魔物だった。
それを、ディラロンテの魔法が撃ち抜く。すると、後ろにいる連中が一斉に拍手をした。
「素晴らしいです! ディラロンテ様!」
「あんな魔法、見たこともありません! 感服いたしました!!」
けれど彼らには何も答えず、ディラロンテは、僕に振り向いた。
「見ましたか? この程度の魔物なら、私たちだけで十分です」
「はい……」
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