全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編.その後の街の領主

56.頼りないですか?


 パーロルットさんの店は、この町で一番大きくて、武器や防具、魔法の道具、回復の魔法の薬なんかも売っている。そういったものの修理、整備もしてくれる、この街になくてはならない店だ。大きな店の隣には、お屋敷みたいな作業場があって、その隣には倉庫がある。
 店の主人のパーロルットさんは、いろんな商会に顔がきき、貴族達にもお得意様が多い。アフィトシオが領主の代理をしていて、流通がほとんど止まってみんなが困っていた時も、パーロルットさんはつてを使って、物資を仕入れてくれていた。彼には頭が上がらない。

 彼の店につくと、店の入り口の近くに、大きな馬車が停まっていた。その荷台から店の人が荷物を下ろしていて、パーロルットさんもそのすぐそばに立っている。彼は、すぐに僕らに気づいて振り向いた。

「おや? トルフィレ様。こんばんは」
「……こ、こんばんは……パーロルットさん……何をしてるんですか?」
「隣街から新しく仕入れたものがありまして、それを確認していたんです。トルフィレ様は…………」

 彼は、キョロキョロと僕の周りを見渡して、首を傾げる。

「ラグウーフでは、護衛には向かないと思うのですが……」

 不思議そうに首を傾げる彼に、ラグウーフさんが困ったように言う。

「……また一人でフラフラ歩いていたから……連れてきたんです。護衛の方も一人もいないし…………」
「なるほど……」

 パーロルットさんは、納得したように頷いている。

 …………僕って……そんなにフラフラして見えるのかな……もしかして、頼りなく見えてる!? 領主なのに……

 僕は一応、領主ってことになってるけど、まだまだなりたての領主。
 ある日突然ここにたくさんいた貴族たちはいなくなって、残ったのは僕とロティンウィース殿下と数人の魔法使いだけ。急に領主が変わって、みんなだって戸惑っているんだろうな……

 パーロルットさんは、僕に振り向いた。

「確か、ロティンウィース殿下は、今日は王都で会議でしたよね? アンソルラ様はどうされたのです?」
「……森の見回りをしてもらっているんです。もう少しすれば帰ってくると思います」
「……では、城に帰っても、トルフィレ様はお一人ですか?」
「いえ……今は、フーウォトッグ様がいらっしゃいます。明日、魔物の様子を調査に行くので、そのための計画を立ててくれているはずです。僕はもう少し、街の様子を見回っていく予定です」
「……そうですか………………最近、よく見回ってくださっていますね」
「……そんなことありません……隣町までの道路の開通のための会議もあって、普段は殿下の竜の部隊の方々に任せっぱなしで…………できる時は、僕がしたいんです」
「では、ちょっとくらい遅くなっても構いませんね」
「……え…………? えっと…………」
「城には、魔法使いたちに使い魔を飛ばしてもらいます。ですから、トルフィレ様はちょっと手伝ってもらえませんか?」
「え!??」
「実は、お店に人手が足りなくて、困っているんです。どうか私を助けると思って、少しの間だけ店を手伝ってもらえませんか?」
「で、でもっ…………ぼ、僕に……できますか?」

 焦る僕の隣で、ラグウーフさんも、びっくりして言う。

「パーロルットさんっ! 何言ってるんですか! トルフィレ様は、領主なんですよ?」
「トルフィレ様が、これから街を見回るつもりだとおっしゃっていたではありませんか。ここだって、街の中にあるもっとも繁盛してる私の店です」
「…………それ、屁理屈ですよね? しかも、ちょっと自慢してるし……」
「それに、ここには街の中で魔物の被害に困る方々や隣町に向かう方々、周辺の町からいらっしゃった冒険者の方々が集まります。トルフィレ様なら、この辺りの魔物のことにも詳しいでしょうし、魔物の情報を共有することは、街を魔物から守ることにつながるはずです」
「…………またそんなもっともらしいこと言って……バイトの人が集まらなくて困ってるだけですよね……」
「そんなことありません」

 キッパリと言うパーロルットさん。

 確かにパーロルットさんの言うことも一理あるかもしれない。
 まだフーウォトッグ様に帰るって告げた時間まではだいぶあるし……

「わ、分かりました! パーロルットさん!! お手伝い、させてください!!」

 僕が言うと、ラグウーフさんをますます驚かせてしまったようだ。

「トルフィレ様!?? な、何言ってるんですか!??」
「僕も…………やってみたいので……隣町への道の整備のためにもなると思うんです。普段、街を見回ることはあっても、冒険者の人とか、隣町に向かう人とか……道を使う人のことを、僕は知らないので……じ、実を言うと、パーロルットさんやラグウーフさんにも…………いずれその辺りのことを聞く気でいたんです……」
「そうなんですか? だったら言ってくださればいいのに! みんな喜びます!!」
「よ、喜ぶって…………なんでですか?」
「だって、嬉しいので!」

 ラグウーフさんは、そう言って笑ってくれた。

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