全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編.その後の街の領主

61.かつての僕


 僕が言っても、男たちはまるで武器を捨てる様子がない。それどころか、ひどく腹を立てているようだ。「ふざけんな! クソガキ!」と僕を罵倒してくる。僕、ガキじゃないって言ってるのに……

 すると、今度は冒険者さんが男たちを睨みつける。

「こいつのことはともかく……もう逃げられねえぞ。投降しろ。盗賊どもがっ……!!」
「……盗賊? 盗賊だと!? ふざけんな! 俺たちは盗賊じゃねえ!! ヴォーヤジュ様に派遣された、正式な魔物討伐隊なんだよ!!」

 男たちが怒鳴るのを聞いて、冒険者さんは訝しげな顔をする。

「……ヴォーヤジュ様……? 隣の領地の領主じゃねーか……」

 そんな名前を聞いて、僕も首を傾げていたら、男たちは勝ったと思ったのか胸を張る。

「ああ……そんな俺たちに手を出して……ただで済むと思ってるのか?」

 勝ち誇る彼らは、今度は怯えてうずくまっている人に向き直る。

「お前も。逃げられるなんて思うなよ……お前は、王族の結界を傷つけたんだ。そんなことがバレたら、王族に殺されるぞ!」

 言われて、男の人は震え上がっていた。

「あの結界の道具の傷は、お前がやったのか?」

 冒険者さんが彼に聞くと、彼はびくんと震えて俯いてしまう。

「…………ごめん……なさい…………」
「なんでそんな真似したんだ? あの杭見てみろ。王家の紋章がある。あれを設置したのが王族だって、分かっていたはずだ」
「…………」

 彼は黙って俯いてしまう。ひどく震えているし、怯えていることは明らかだ。

 怖がらせないように、僕はそっと声をかけた。

「あの…………怖かったんじゃないんですか? 追いかけ回されて……」
「………………」

 彼は黙って俯いているだけ。僕とは目も合わせようとしない。

 僕のことも、怖いのかな……

 結界を張ったのが王族だってこと、あの人だって気づいていたはずだ。勝手に壊したりしたら、王族に咎められるかもしれないことだって。それなのに、必死になってそれを破ろうとしたんだろう。それくらい、あいつらから逃げたかったんだ。

 僕は、結界を張っている杭に触れて、それを引っ張った。

「えいっ!!」

 あ、抜けた。意外に簡単に抜けたな……

 引っこ抜いたそれを、怯えた人に見せると、彼は目を丸くしていた。

「え…………」
「これでもう、結界はありません。だから、あなたが咎められることもありません。安心してください」
「……あ…………? え?」

 彼は驚いて、僕が握っている結界の道具と僕を見つめている。

 僕の隣にいた冒険者さんまで驚いたようで、青い顔で僕を怒鳴りつけた。

「こっ……このっ……馬鹿!! 馬鹿かお前は! 分かんねえのか!?? それ見てみろ!! 王家の紋章がある。王族が張った結界だ!!」
「はい。知ってます。ここには、以前強力な魔物たちがよく現れていたんです。何度も退治したけど、それでも集まってくるし、退治後に、それが残した毒目当てに入り込む人が増えたので、ウェクトラテス様が立ち入り禁止に指定したのです」
「はあ!!?? い、今なんて言った!!?? ウェクトラテス王子殿下がか!?」
「はい。そうです」
「だったら余計に、勝手なことすんなっっ!!!! 王族がわざわざ道具を用意してまで張った結界だ!! そういうのを解くときには、正式な手続きがいるんだよ! 勝手に結界消して、後で王族になんか言われても知らねーぞ!」
「大丈夫です。緊急の時には、僕が結界を破壊していいことになっています」
「はあっ!!?? お、王族の結界をか!??? それを王家が許可したのか!?」
「はい。王城に呼ばれたりして、大変でしたが。この街に設置する物のことです。殿下はこちらにいらっしゃらないことも多いので、あらかじめ協議しておかないと困るんです」

 答えて、抜いた杭に魔法をかける。すると、紋章が激しく光り、杭は縮んでいく。小さくなったそれを、僕は魔法をかけた布に包んでポケットに入れた。後でウェクトラテス様にお礼を言わなきゃ……

 今はウェクトラテス殿下はいないから、その道具に向かってお礼を言って、商店の周りに結界を張る。ウェクトラテス殿下が張ったものよりずっと弱いけど、少しの間なら、これで十分なはずだ。

 怯えていた人は、じっと僕を見上げていた。

「……あなたは…………」
「行きましょう。もしもの時には、僕が責任を取ります。だから、安心してください。あなただって……そんな、従いたくもない命令を聞くことなんて、ないんですっっ……!!」
「…………!」

 すると彼は男たちの手を振り払い、僕に飛びついてきた。

 すぐにその人を両手で抱きしめる。

 ひどく怯えて、弱りきっていて……まるでかつての僕みたいだ。

「大丈夫ですか!?」
「あ、ありがとうございますっ……!!」

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