全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編.その後の街の領主

65.嘘じゃないだろ?


 殿下とそんなことをしていたら、背後から声がした。

「全く、頼もしい限りですよ。ロティンウィース殿下……」

 言って、空からフーウォトッグ様が降りてくる。城にいたはずなのに。

「お迎えにあがりました。トルフィレ殿。帰りが遅いから、心配しましたよ。どこかで騙されて、さらわれてしまったのではないかと」
「す、すみませんっ……! 心配かけちゃって……」
「……いいえ。あなたが謝罪することはありません……何があったのかは聞いています」

 言って、フーウォトッグ様は、冒険者さんたちに振り向いた。

「……そちらが…………トルフィレ様が助けたと言う冒険者さん……ですか……」
「は、はい!! あ、あのっ……盗賊に追われていた人もいて……回復と食事もっ……ここでして行っていただきたいのですが……」

 僕が言うと、冒険者さんは焦ったように言った。

「お、おいっ……! なんでお前がそんなことまでするんだよ!!」
「だ、だって…………盗賊に追われて疲れているだろうし、回復しないと、帰ることも難しいですよね? ちゃんと回復してから出発してください!」
「はあ!?」
「だ、だって……そっちの方は……すぐに出発なんて、多分無理ですよ……」

 僕らが助けた人は、冒険者さんの後ろで僕らの様子をうかがっている。なんだかまたひどく怯えているみたいだ。

 フーウォトッグ様が、彼らの方に向き直って言った。

「トルフィレ様のおっしゃる通りです。どうか、ここでゆっくりして行ってください。歓迎しますよ。冒険者さん」

 すると、パーロルットさんも、にっこり笑って言った。

「いいですね。上の階があいています。美味しいお菓子もあるんです。どうかゆっくりして行ってください」

 すると、冒険者さんは、ますます苦い顔になって、僕を睨んでいた。







 パーロルットさんの計らいで、僕らは二階の部屋を貸してもらうことにした。

 広い部屋に通された僕らは、テーブルを囲んで座ったけど、冒険者さんも助けた人も落ち着かない様子。

 フーウォトッグ様が、席に着いた冒険者さんに向かって口を開いた。

「それで? このようなところで、何をされているのですか? ランクイズイル様」

 言われて、冒険者さんはさっと顔を背ける。

「……だから言ってるだろ。こいつ探しに来たんだよ……うるせーな……」

 そんなことを言いながら、彼は隣に座った、助けた人の肩を叩いて、フーウォトッグ様を睨みつけていた。

「え……? お、お知り合いですか? 冒険者さん……」

 僕が聞いても、冒険者さんは聞こえないふり。

 それを見て、アンソルラ様も声を上げた。

「どっかで見ことあると思った……お前っ……コーインクルリズのところの護衛の騎士だ!!!!」

 アンソルラ様が言うのを聞いて、冒険者さんは「うるせーな」と不機嫌に言うけど、否定したりはしない。

 コーインクルリズ様といえば、隣接する領地の領主様の名前じゃないか。街道の開通の件でよく連絡をとっている、ヴォーヤジュ様とは反対側。森の向こうの領主様で、深い森の向こうには切り立った岩山と谷が続いていて、まだ街道なんかも整備されていない。
 だけど、谷の奥にある暗い森のあたりを通れば、比較的安全にここまで来ることはできるらしい。だから、アフィトシオたちがここにいた時は、よく取引をしていたようだ。

 そんなところの護衛の騎士と聞いて、僕はパニックだ。

「な、なんで…………こ、コーインクルリズ様のところから……」

 フーウォトッグ様の方は、急に、冷たーーーーい目になって、冒険者さんに振り向く。

「冒険者…………ですか……一体、なんの真似ですか? 依頼のふりをして他人の領地に入り込み、スパイ行為とは……」
「あ? なんのことだ? スパイ? 遊びに来ただけだよ」
「王族と、それに仕える我々、竜の部隊の前で、随分ふざけた真似をしてくれます」
「…………冒険者でもあるんだ。嘘はついてませーん」
「…………殿下。王城に連絡を。コーインクルリズ様は、隣接する領地に間諜を送っています」
「ま、待て待て待て待て待て待て!!!! お、落ち着け! 俺は、行方不明だったうちの魔法使いを探しに来ただけで……」

 言って、冒険者さんは僕に向き直る。さっきまでより、やけに真剣な顔をするから、僕はひどくドキドキした。

「あ、あの……」
「領主、トルフィレ様……失礼をお詫びします。俺はランクイズイル……普段は、コーインクルリズ様のところで、魔法使いの部隊を率いています」
「………………コーインクルリズ様の……」
「あっ!! でも、冒険者って言ったのは本当だ! 嘘じゃない……!!」
「……なんで、冒険者なのに護衛をしているんですか?」
「元冒険者だったが、腕を見込まれたんだよ……今でも、冒険者としての仕事はしてる。ほら見ろ! 嘘じゃないだろ!」

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