全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編.その後の街の領主

66.そんなことなら


 ランクイズイルさんは、「嘘じゃないだろ?」と言って、僕を睨むけど、疑ってなんかいない。

「…………冒険者ってことは分かりました……で、でも……それなら…………」
「なんで領地に入ってきたのか、だろ?」
「え……?」
「言っただろ。久しぶりに領地の境の街へ行ったら、森で魔物から街を守っていた魔法使いが、魔物に襲われて行方不明になったって聞いて、それを探してきたんだ。コーインクルリズ様は今は湖の方の魔物退治に行っているし……盗賊に襲われたんじゃねーかっていうから、急いで来たんだよ……冒険者として依頼を受けてくるんなら、文句ねーだろーが!!」
「……護衛なのに、コーインクルリズ様のそばにはいないんですか?」
「護衛なんて、名ばかりだ。コーインクルリズ様は、俺のことを………………その……た、頼りになる魔法使いとして、そばに置いてくれてるんだよ……だから、あの辺りの魔物の調査を頼まれたんだ」
「…………」

 ランクイズイルさん……顔がちょっと赤い……なんだか嬉しそう。コーインクルリズ様のこと、信頼しているんだ……

 彼の顔を見ていたら、それに気づいたのか、彼は慌てて僕から顔をそむけていた。

「そ、そういうことだよ……それに、お、お前にも会ってみたかったしな!」
「……僕に……ですか?」
「ああ。魔物の増加を止めた領主がいるって聞いて、興味が湧いた。正式な手続きを踏まなかったことは詫びる。だが、諜報みたいなことは考えてない……悪かったな……」
「いいえ……事情はわかりました……」

 コーインクルリズ様は、魔物退治の腕に長け、王都でも一目置かれる存在らしい。少し前まで、領地の一部を強力な魔物が襲い、その鎮圧にかかりきりだったとか。それに乗じた貴族たちの陰謀による暗殺未遂なんかもあって、争いごとには敏感になっているらしい。

 僕が領主になって、彼にとっても隣人であるヴォーヤジュ様ばかり頼ったり、王家の部隊の方々が出入りしていたら、警戒するはずだ。もちろんそれは魔物退治のためだけど、結界の強化や魔物対策用の魔法の道具も集めている。
 フーウォトッグ様に、コーインクルリズ様の方とも話を通しておかないと、後で面倒なことになるって、忠告されていた。

 それに、隣人であるが故に、アフィトシオたちの圧政はよく知っていただろうし、危険な森の状態を放置していた僕らには腹を立てていたはず。

「コーインクルリズ様とは、僕が領主になってからほとんどお話ができていなくて……」
「…………そんなことより、いいのか?」
「何がですか?」
「間諜だのなんだのって疑いはどうした?」
「仲間の魔法使いを助けにきた方を、なぜ疑わなくてはならないのですか?」

 僕が聞くと、彼は少し驚いた顔をして、ため息をつく。

「…………お前なーー……素直すぎるぞ……俺の言ってることが全部嘘だったらどうする?」
「そ、そんなことありません!!」
「ありませんって…………」
「そ、それに……あ、あのっ……それならお願いしたいことがあるんです!!」
「なんだ? 盗賊の調査か?」
「そ、それもありますけど…………あのっ……! こ、ここ……コーインクルリズ様と……お、お話できる場を作っていただけませんか!??」
「はあ!? 会談の機会が欲しいってことか?」
「は、はい!!」
「……そう言われてもな…………コーインクルリズ様は、会議には乗り気じゃないんだ……」
「魔物の件で、お忙しいのは分かります!! ですがどうかっ……あ、あなたはコーインクルリズ様に信頼されているようだし……か、街道の件は、ヴォーヤジュ様だけでなく、コーインクルリズ様ともお話をしたかったのです!! 魔物を減らす手助けにもなります。そのことは、街道を整備したことでここに人が増えたことを見ていただければ分かるはずです!! どうか……コーインクルリズ様とも、安全な行き来のために、お話がしたいのです!! こ、今回のようなことを防ぐ力にもなります!! どうか、お願いします! ランクイズイル様!!」

 言って、僕は頭を下げた。

 ランクイズイルさんの後ろから、彼にお茶を持って来てくれたパーロルットさんも、彼ににっこり微笑んで言う。

「そうですよ、ランクイズイル様。今日はトルフィレ様のお陰で大繁盛した私の店で、あなたがトルフィレ様に絡むところを、多くのお客様がご覧になっています。下手をすれば、ますます疑われちゃいますよ?」
「お前な……絡んでなんかねーよ…………」

 すると、フーウォトッグ様まで、ランクイズイルさんに迫っていく。

「パーロルットの言うとおりです。私たちも、魔物退治で名を馳せ、一騎当千とも言われたコーインクルリズ様と喧嘩なんかしたくありません。トルフィレ様と同様、仲良くしたいと思っているのです」

 言われて、ランクイズイルさんは、彼らから顔を背けた。

「……扱いやすい領主だと思ったが…………めんどくせえ連中もついていたのか…………ちっ……!」

 そう言って彼は、僕を睨みつける。

「お前、少し前まで領地のことになんか関わったことなかったんじゃなかったのか?」
「え? は、はい……アフィトシオたちがいた頃は……」
「そうとは思えねーよっ……! 面倒な連中に、しっかり入れ知恵されてやがる!」
「い、入れ知恵!?」
「ああ……入れ知恵はなかったな……口の悪さは許せ…………本当に、間諜の意思はない。ただ、少し街道やこの街の状態を見てみたかったのは事実だ。魔物放置してたくせに、ヴォーヤジュや王家と組んで何か企んでるのかって、コーインクルリズ様も心配してたしな!」
「そ、そんなつもりありません!! そんなことなら、いつでも僕におっしゃってくだされば、ここに招待いたします!」
「ああ……それはよく分かった…………いろいろ言って、悪かったな! コーインクルリズ様には、必ず伝える!! あの方も、魔物の増加と街道の安全には悩んでいる。協力できたら、俺も嬉しい……これからよろしくな! 領主、トルフィレ様!」
「は、はいっ……!! 僕もです! あ、ありがとうございます!」

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