全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編2.その日の夜の二人

69*ロティンウィース視点*愛想を……尽かす?


「ああーーーー……なんでこうなるんだ…………」

 ついに、ベッドの上で頭を抱える俺。トルフィレのことは、何より大切にしたいのに、どうしてもうまくいかない。今だってトルフィレに会いに行きたいのに、結局は会いにすら行けないままだ。

 すると、アンソルラが呆れたように言った。

「なんだよ……お前らしくもない。さっさと会って来ればいいのに」
「そもそも、トルフィレは俺をどう思っていると思う?」
「婚約者だろ?」
「そうじゃない……その…………どこまでなら許していいと思っているんだ?」
「お前なーー……仕方ない! 俺が教えてやるよ!」

 そう言ったアンソルラに、フーウォトッグがまた飛び掛かっている。

 だが、彼らに聞くのもおかしな話だ。そもそも、そんなことは自分で聞くべきなんだ。

 こんなところで悩んでいても始まらない。何より、トルフィレに誤解されてしまっているかもしれないまま、今日を終えることなどできない。

「トルフィレに会いに行こう…………少し、話をするだけだ…………そうだ! 明日の打ち合わせをしようっ……!」
「そんなことより、書類に目を通してください!」

 フーウォトッグがそう言っているが、まずはトルフィレのことだ。

 そう考えたところで、窓の外に気配を感じた。風の音に混じって、微かに魔力の風の音がする。トルフィレだろう。窓の向こうに彼の可愛らしい髪が、微かに見えている。空を飛んで窓の外まで来たらしい。

 なんで入ってこないんだ? そもそも、なぜ窓の外から? 彼はいつも、ドアから入って来てくれるのに。

 いや、そんなことはどうでもいいか……トルフィレのことを話していたら、トルフィレが来てくれたんだから! それなのに、窓の外になどいたら、風邪をひいてしまう。

「トルフィレ……だろう? どうした? 入って来ていいぞ」

 俺は、窓を開こうとした。
 けれど、それを制止したアンソルラが耳元で「聞かれたかもな」と言い出す。

「まさか……そんなはずはない。すぐに気づいたはずだ。何しろ、トルフィレが来てくれたんだぞ! トルフィレも、俺に会いたかったんだ!」
「呑気なやつだな……それに、野暮だ。気づいてないふりしてやれよ。会いに来たんじゃない! 夜にお前の部屋に忍び込もうとしてるんだぞ!!」
「しのっ……!? 忍び込むだと!?? あ、あれは忍び込もうとしているのか!??」
「そうに決まってるだろ。夜に、お前の部屋の窓の外に佇んだりして」
「な、なぜそんなことをトルフィレがするんだ!? 入りたいならいつでも入ればいい! 俺はトルフィレなら、いつでも歓迎する!」
「それは分かっているが、トルフィレはそうじゃない。きっと忍び込んで押し倒しに来たが、予想に反してお前が起きてて、びっくりしてどうしていいか分からなくなっているんだ!!」
「な、なんだと……!??」
「窓の外に佇む理由なんてそれしかねーだろ!! でなきゃ暗殺かどっちかだ!! トルフィレが暗殺になんかするはずねえ……だったらやりに来たに決まってる!」
「そうだったのか!!!!」

 そうか……トルフィレ……そうだったのか……すまない。俺は……お前の気持ちを酌むことすらできずっ……! 俺たちは伴侶なのに!!

 俺は、深く反省した。

 しかし、そこで、猫の姿になったフーウォトッグが、俺を怒鳴りつける。

「そんなはずがないでしょう!! 殿下!! その品のない竜の言うことを真に受けてはなりません! さっきから聞いていればいい加減なことばかり言って! 夜に部屋に来るなんて、言いにくい相談がしたいに決まっています!! そんなことばかり言っている殿下に愛想がつき、婚約を白紙に戻したいのではありませんか!!??」
「なんだとっっ!!!!??」

 婚約を…………俺との婚約を……なかったことにしたいと……そう言うのか…………

 俺は、愕然とした。

 トルフィレが、俺との婚約を破棄したいだなんて……そんなはずがないだろう!!!!

「フーウォトッグ!!!! トルフィレが、そんなことを言うはずがないだろうっっ!! 今日だって、街であいつは、俺を愛していると……そう言ってくれたんだぞっっっっ!!」
「声が震えていますよ。トルフィレ殿だって、城に帰り、冷静になって考えてみれば、このままではいけないと、そう考えたのかもしれません……それも当然ですっっ!!!! 先ほどから仕事を放り出して、その竜といやらしい相談ばかりして! そんなことばかりしている男と、誰が結婚したいなどと思うでしょうか!!」
「ぐっ…………」

 い、言われてみれば……確かにそんな気もする……

 トルフィレは今、領地のことにかかりきりだ。忙しい彼の力になるために、俺はここにいるはずなのに、俺ときたら、アンソルラといやらしい相談ばかり……これでは、トルフィレが愛想を尽かすのも当然ではないか!!!!

 俺は、深く反省した。

 一体、何をしていたんだ……トルフィレを守ると言いながら、俺はあいつのことを、全く考えてやれていなかったんだ。トルフィレを支えると決めたのに……

「と、と、トルフィレが…………ほ、ほ、本当に、俺に……その……あ、愛想を尽かしたと言うなら……お、おおお、俺は……その……み、身を引く覚悟くらい…………」

 もちろん、そんなものはない。

 トルフィレを手放すなど、できるはずがない。

 アンソルラも、呆れたような、恐れているような顔をしていった。

「……無理すんなよ。大丈夫か……?」
「大丈夫? 大丈夫だと!? 大丈夫なはずがない…………や、やはり、トルフィレのそばを離れるなんてできない!! トルフィレはっ……俺の伴侶だ!!!! トルフィレっ……!!」

 あいつを手放すなど、それだけはできない。やっと、トルフィレの手を握ることができるようになったんだっ……!!

 トルフィレの手を離すなんて、絶対に嫌だ!

 俺は、窓を開いた。

 確かにそこにトルフィレの髪が見えていたのに、もういない。

 どこへ行ったんだ!?

「トルフィレ!? トルフィレ!! どこだ!? トルフィレーーーー!!」

 叫んで、俺は辺りをキョロキョロして、あいつを探した。しかし、トルフィレはいない。

 どこかへ飛んでいってしまったのか!!?? そんなっ……!

 焦るばかりの俺のところに、フーウォトッグが飛んでくる。

「すぐに探しましょう。引き出しに忍ばせていたなんてこんなものは、トルフィレ様に気づかれないうちに廃棄して」

 そういうフーウォトッグの周りを魔法で飛び回っているのは、俺が引き出しに入れておいたはずの媚薬。

「何をしているんだ! フーウォトッグ!! こ、これはただ、パーロルットに無理やり渡されただけだ!」
「……少しくらい、興味があったのではありませんか?」
「それは…………た、確かにそうだが、俺はトルフィレに無理やり触れようなどと考えたことは一度もない!!」
「だったら早く廃棄しましょう。そして、トルフィレ殿を探すんです。その悩みを聞いて、もう一度トルフィレ殿に惚れ直してもらうのです!」
「お前に言われるまでもないわ! 行くぞ! トルフィレを探すんだ!!」

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