全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編2.その日の夜の二人

70.口実が欲しい


 殿下に会いたい……

 最近の僕は、そんなことばかり考えるようになった。殿下と別れた後、すぐに殿下に会いたくなる。

 今日だってそうだ。

 城の玄関から出て、明日に備えて魔法の道具を持ってきてくれたパーロルットさんを迎え、荷物を受け取っている最中、ふと城を見上げたら、殿下の部屋の窓が見えて、それだけで急に殿下に会いたくなった。

 いつもは、竜の部隊の人が荷物を受け取ってくれて、今日もそうしてくれていたんだけど、僕も挨拶をしたくて、ここまで来たはずなのに、早速殿下のことを考えてしまっている。

 だけど、何か口実がないと会いに行きづらくて、明日の相談をするために、たくさん書類を持って、殿下に会いに行くことにした。

 玄関の扉の前からなら、城の中を歩くより、飛んで行った方が早い。

 書類を抱えて殿下の部屋の近くを飛んだら、ますます会いたいって気持ちが強くなった。

 だけど、そんなことばかりで頭がいっぱいになっていたから、パーロルットさんに今度必要な道具のリストを渡すのを忘れてしまっていた。

 それに気づいた僕は、大急ぎでパーロルットさんの方まで戻った。

 慌てて城門のところまで飛ぶと、パーロルットさんも竜の部隊の方々も、驚いて僕に振り向いた。

 竜の部隊の方々は、殿下に昔から仕えている竜族の魔法使いや騎士の方々で、いつも僕たちを手伝ってくれている。
 彼らにも、「すみません、忘れ物です」と謝って、僕は、パーロルットさんに持ってきた道具のリストを渡して、彼に頭を下げた。

「すみません……パーロルットさん……すっかり忘れていて……」
「謝ることはありません。まさか、トルフィレ様まで見送りに来てくださるなんて、思いませんでした。そうだ……結界の魔法の道具は、近いうちにキャドッデに整備させます」
「は、はい……あ、ありがとうございます。あ! 道具の整備の頻度のこと、殿下と相談しておきます!」
「はい。よろしくお願いします。殿下にお話ししても、どうも上の空でいらっしゃることが多くて……」
「……そうなんですか?」

 殿下……僕の前では、いつもとそんなに変わらないような感じなのに……

 もしかして、何か悩み事でもあるのかな……だとしたら、力になりたいけど…………

 考え込んでいると、パーロルットさんが微笑んで言う。

「…………気をつけてくださいね。最近、粗悪な武器や魔法の道具が出回り、無理な取引を強いるような輩が出て来ています。トルフィレ様は、素直で騙されやすいから心配です」
「ぼ、僕、そんなに簡単に騙されたりしません……」

 僕が言うと、パーロルットさんはにっこり笑う。

「ですから、トルフィレ様。一度、ロティンウィース殿下にも相談された方がいいです」
「え……? は、はい……」
「では、私からお礼の品をお渡ししましょう」

 そう言って、パーロルットさんは、僕に小さな瓶を渡してくれる。

「……これは…………?」

 見たことがある。媚薬の瓶だ……

 僕は、それを無言で返した。

「あの……パーロルットさん……僕、こう言うものは結構です……」
「そうですか? 申し訳ございません。トルフィレ様が、あまりに寂しそうな顔をしていたので」
「ぼ、僕、そんな顔してましたか……?」

 顔に出てたのかな……殿下に会えなくて寂しいのが。

 何してるんだろう……僕。パーロルットさんにまで心配かけちゃった。

 殿下と城に帰って来てからは、ずっと明日の用意をしていた。だけど、すぐに殿下のことが恋しくなった。

 ついさっきまで殿下と一緒にいて、夜が明けたらまた、おはようって挨拶ができるのに、少し離れているだけが嫌だ。

 ぎゅっと、持っていた書類を握りしめる。

 やっぱり、殿下のところに行きたい。まだ話したいことだって、たくさんあるんだ。

 夜も殿下と一緒にいたい…………殿下に悩みがあるなら、力になりたい。殿下に……そう話してみようかな……

 僕は、パーロルットさんに頭を下げた。

「あ、ありがとうございます! パーロルットさん!! き、今日は助かりました!!」
「どういたしまして。トルフィレ様。お元気になられたようで、なによりです」
「そ、そうですか……??」

 僕、元気なかったのかな……そんなつもりはなかったんだけど……

 やっぱり、早く殿下に会いに行こう。

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