全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

72.こんなところで会議!? 無理だろ!


 ランクイズイル様が僕の領地に来た日から数日が経ち、ついに、コーインクルリズ様からの使者が城にやってきて、彼も会議を開きたいとの返事をもらうことができた。

 それからまたしばらく経ち、今日はコーインクルリズ様との会議の日。

 前日の昼頃、自分の領地を出た僕は、殿下と、フーウォトッグ様とアンソルラ様と一緒に、コーインクルリズ様の領地に入った。

 この日のためにずっと準備してきた。誤解を解くために話すことも、殿下と一緒に考えて、アンソルラ様やフーウォトッグ様を相手に練習してきた。

 だから、できるはずなんだ!!

 ……と、強気になっていたのは、コーインクルリズ様の城に来る前まで。
 城が見える街まで来て、僕はすぐに帰りたくなった。

 コーインクルリズ様の領地は、深い谷と広い森、広大な湖と川が流れ、魔力の素材も豊富。

 魔獣や貴重な素材も多い森の上空を飛んで、街道に降りてからは馬車に乗り、街へ来ると、魔物対策のための塀や砦、強力な魔法使いが集まるギルドや、ここでしか手に入らないような魔法の道具や武器、防具を売る、見たこともないような大きな店が並んでいた。

 その様子を、馬車の中から眺めていたら、すっかり目を奪われてしまった。
 せっかくだから、武器や魔法の道具の店に寄りたくなったけど、まずはコーインクルリズ様との会議だ。

 こんな街はいくつかあり、湖の近くの街は、最近冒険者たちが集まって賑わっているらしい。

 こんなところの領主って……どんな人だよーーーー!

 最高速度の魔法で飛んで、自分の城に帰りたい……会議なんて無理。絶対に無理だーー!!

 だって、なんだよ……この立派な城……堅牢な壁と深い堀に守られて、いくつもの塔が並び、歩廊にはずらっと魔法使いが並んでいる。

 魔物や魔獣、敵からの襲撃に備えたものだろう。城壁の向こうには、国一とも言われる武器庫が並び、魔法の道具を研究する施設が城の内部の奥深い場所にあるらしい。

 コーインクルリズ様は、武人として名を馳せた人。魔物対策としての城や、そのための武器や魔法の道具の備えには、かなりこだわりがあるようだ。

 い、胃が痛くなってきた…………むしろ、心臓がドキドキしすぎて、変な汗が出てきた……

 こ、こ……こんなところで、か、かかかかか、会議!?? 無理だろ……そんなのっ……!

 ヴォーヤジュ様との会議でも、まだひどく緊張するのに……
 だけど、ヴォーヤジュ様は僕を知っているし、まだ領主として間もなかった頃、会議で緊張しすぎて噛みまくっていた僕に、落ち着いてくれと言ってお茶を出してくれるくらい、優しい人なんだ。

 でも、今回会うコーインクルリズ様は、初対面!!
 書簡や使者を通してのやりとりはあったけど、直接会うのは初めてだ。

 初めての人に会うのは今でも苦手……
 しかもコーインクルリズ様は、たぶん僕のことをよく思っていない。

 ぎゅっと握った書類から汗が落ちていくようだ。

 胃どころか心臓まで痛い……会議なんか始まったら、頭から全部壊れそう。

 城に入り、円卓のある部屋に案内された僕は、椅子に座ってガタガタ震えながら書類に目を通していた。

 すると、隣に座った殿下が声をかけてくれた。

「トルフィレ……緊張しているのか?」

 隣の殿下に聞かれて、僕の体は自分でも驚くくらいビクっっと震えてしまう。

「へっっ!!?? あ、あのっ……べ、別にっ……!! ………………いえ……やっぱり、き、緊張してます……も、もう……き、きき、気分が悪くて……」
「ここは俺に任せておけ!! 会議は得意だからなーー!!」

 そう言って、殿下は胸を張る。

 この前の夜から、殿下はだいぶ元気が出たみたい。今日の会議だって、全く緊張した様子がない。

 だけど、僕だって、立派な領主になるって決めたんだ!

「だ、だ! だだ、大丈夫です!! ま、任せてください!!!! ぼ、僕っ……!! 会議、がんばります! り、領主は僕ですからっっ!!」
「トルフィレ……」

 殿下は、嬉しそうに笑って、僕に抱きついてくる。

「さすがは俺のトルフィレだーーーー!!」
「わーー!! 殿下!! は、離してください!! 殿下!!」
「大丈夫だーーーー!! 今はこうして隣にいられる!! 俺はトルフィレと一緒にいるんだーー!!!! 何かあったら全部俺に任せろ!!」
「そ、それはできません!! あ、あの……そろそろ……離して…………こ、コーインクルリズ様がきちゃいます……」
「嫌だ。俺はもう、トルフィレのそばを離れない!!」
「殿下……」

 そんな話をしていたら、殿下と目があって、ちょっと落ち着いた。

 殿下がそばにいてくれるんだ……これから、領主としてこんな場を設けることも増えるはずだし……

 よ、よしっ……!! 僕も頑張る!!

「殿下!! 僕、も、もう一回街道の説明の練習したいんです!! つ、付き合っていただけますか!??」
「任せておけ! では、まず俺がどのくらいトルフィレを好きか、話してやろう!」
「や、やめてください!! コーインクルリズ様の前で言わないでくださいね! それ!!」

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