全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

73.無用です


 しばらく、会議の準備をしながら緊張した時間を過ごしていると、唐突に、会議室の扉が開いた。

 扉の向こうには、一人の長身の男が立っている。ロティンウィース殿下も背が高くて、いつも僕は見上げてしまうけど、それに匹敵するほどだ。そして、背中には大きな剣を担いで、魔法で強化された防具を身につけ、大きなマントを羽織っていた。

 あの方が、コーインクルリズ様か?

 茶色い長い髪を括っていて、眼光鋭く僕を睨んでいる。
 こ、これから会議だって言うのに、震え上がりそう……

 だけど、その人の傍にランクイズイル様が立っているのを見て、少し安心した。護衛の人は、ランクイズイル様だけなのか、部屋に入ってきたのは二人だけ。

 ランクイズイル様は、すぐに僕らに気づいたようだけど、無表情を決め込んでいた。僕の街であった時とは、だいぶ印象が違う。

 彼を連れて部屋に入ってきた人は、僕に向かってゆっくりと口を開いた。

「領主のコーインクルリズだ。あなたが……トルフィレか?」
「は、はっ……はいっっ……!! トルフィレ・ホーイルと申します!! は、はじめましてっ……!!」

 めちゃくちゃ緊張したまま、頭を下げて挨拶をする。

 声が裏返った……相変わらず、僕、情けない……

 すると、コーインクルリズ様も微かに笑った。

「お前が…………領主?」
「は、はい…………あ、あのっ……お、おお、お会いできて光栄です!! ほ、ほ、ほ、本日は、こ、ここここのような席を設けていただいたことにお礼をっ……」
「礼なら必要ない。もうしばらく待っていろ」
「……………………え??」

 早速会議だと思っていたのに、驚く僕。

 すると、コーインクルリズ様は僕を睨んで言った。

「……領地の奥地に魔物が現れた。かなり強力なものらしい。少し行って、片付けてくる」

 え? え……!??? い、行っちゃうの!?? せっかく緊張しながら挨拶したのに!??

 僕は、慌てて立ち上がった。

 だけど、魔物が出たのなら、それを倒すことを優先するべきだ。

「で、でしたらっ……ぼ、僕たちにもお手伝いさせてください!! 戦う準備ならできています!!」

 僕がそう言うと、コーインクルリズ様はますます険悪な目になって僕を睨む。

「戦う準備だと? そんなものを整えて、俺の領地に入り込んできたのか?」
「そ、そんなわけじゃ……」
「…………」

 彼は、無言で僕に背を向ける。そして、ランクイズイル様に、「後を任せた」と言って、部屋を出て行こうとする。

 そこで、殿下がコーインクルリズ様に声をかけた。

「待て、コーインクルリズ。トルフィレは……」
「ロティンウィース殿下。あなたは王族でしょう? 領主はあくまで、そこにいる男であるはずです。これは、俺とそいつとの話し合い。口出しは無用です」

 にべもなく言って、コーインクルリズ様は部屋を出て行く。

 焦った様子のランクイズイル様が、コーインクルリズ様を追って行った。

「お、おいっ……待てよっ……! コーインクルリズ様!!」

 出て行く途中で、ランクイズイル様はこちらに振り向いて「悪い、少し待っててくれ」と言って、部屋を出て行った。

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