74 / 96
番外編3.隣の領地で会議
74.みんなで行きましょう!
それから待てど暮らせどコーインクルリズ様は戻ってこなかった。
「……僕が、変なこと言ったからだ…………」
頭を抱えてしまう僕。
僕の馬鹿ぁぁぁ…………変なこと言うからこうなるんだ……
あれはそう言う意味じゃなくて、魔物とならいつでも戦えますっていう意味だったのに……
後悔ばかりの僕は、ずっと円卓に突っ伏して頭を抱えたまま。
殿下に「大丈夫だ!」って言われたけど、コーインクルリズ様に不快な思いをさせちゃったし、僕はどうすればいいんだ。
もうダメだ……
落ち込む僕に、殿下が声をかけてくれた。
「……おい。トルフィレ? そんなに心配するな!」
「……だって…………僕………………会いたくないと思われてしまったんでしょうか…………」
「どうだろうな? 単に魔物の討伐に時間がかかっているだけかもしれないぞ? 以前、魔物退治を終えていたところで、また魔物が現れた可能性もある」
「そんな……」
「魔物というものは、いつ現れるか分からないからな……コーインクルリズほどの力があれば、全く問題ないと思うが……」
「そう……ですよね…………」
それにしても、コーインクルリズ様……遅い。
そんなに強力な魔物なのかな…………
落ち着かない思いでいると、猫の姿になったフーウォトッグ様が、窓から外を眺めて言った。
「それにしても……だいぶ我々は警戒されているようですね……会議室の外にも、城の周りにも、だいぶ警備の者がいます」
「……僕ら、会議をしに来たのに…………や、ややや、やっぱり、僕の不用意な発言のせいで……」
「……落ち着いてください。トルフィレ様のせいではありませんよ。向こうも、魔物との争いに乗じた権力闘争の後と言うこともあって、神経質になっているでしょう」
「…………暗殺未遂まであった話ですか……?」
「はい。コーインクルリズ様を暗殺し、領主の座から引き摺り下ろそうとした貴族たちは、アフィトシオたちと取引があった商人たちと組んでいたようですし……」
「そ、そうなんですか!!??」
「はい。コーインクルリズ様自身は、領地に現れた巨大な魔物の鎮圧に手一杯で、城をあけることが多かったようで、その隙を狙われたのでしょう。暗殺が失敗に終わり、関わった者たちは処罰されたようですが、自分が城をあけている間に、信頼していた側近たちが豪商たちと組んで、自分の暗殺の用意をしていたのです。疑心暗鬼にもなるでしょう」
「……だとしたら、ますます早く誤解を解きたいです……ぼ、僕、た、戦うつもりなんて……」
「落ち着いてください。トルフィレ様。分かってます」
すると、今度は殿下が腕を組んで言った。
「もしかしたら、今日はもう、会議を開く気がないのかもな……」
「え……?」
確かに、来るのが遅い…………僕らだって、あまり自分の城をあけてばかりもいられない。このままじゃ会議を開けずに帰ることになる。
……だけど……ランクイズイル様は、僕らのことをコーインクルリズ様に話してくれたはず……
こうして待っていても、もう日が暮れてしまいそうだ。
も、もう……このまま待ってても仕方ない!!
「あ、あのっ……!! だったらっ……! コーインクルリズ様を助けに行きましょう!! 魔物が出るなら、みんなで倒した方が早いと思うんです!!」
すると、フーウォトッグ様が言った。
「そうは言っても、私たちが他人の領地で勝手な真似をするわけにはまいりません」
「そ、それは……そうですが…………それでも、このままじゃ会議だって開けないし、強力な魔物が出たのなら、協力した方がいいと思うんですっ!!」
僕が言うと、殿下が頷いてくれた。
「確かに、トルフィレの言うことも一理ある。このままずっとここで待つわけにもいかない。魔物を相手に苦戦しているなら、援軍に向かうことは、コーインクルリズの統治に干渉したことには当たらないはずだ。だが、それはコーインクルリズの承諾を得ていればの話だ。勝手に城を抜け出したりしたら、ますます疑われてしまう」
「だ、だったら……勝手じゃなかったらいいんですよね!?」
「何か、策があるのか?」
「ランクイズイル様を探しに行きましょう!! さっき、後を頼むって言われてたし、城のことを任されているなら、城のどこかにいるはずです! それで、コーインクルリズ様の魔物退治をお手伝いする許可をもらって、魔物を退治して会議を開くんです!!」
魔物に苦戦しているなら、放っておけない。コーインクルリズ様のことだって心配だし、魔物の増加を抑えることは、この辺りを治める領主みんなにとって、大事なことだ。
それに、このままじゃ会議だって開けないし、街道の整備も遅れてしまう。何より、コーインクルリズ様とも、ちゃんと話しておきたい!
「行きましょう!! せ、せっかく時間があるんだしっ……!!」
言って、僕は窓を開いた。
「えーーっと…………ランクイズイル様、い、いないかな……」
窓を開けて身を乗り出す僕に、フーウォトッグ様が焦って駆け寄ってくる。
「と、トルフィレ様っ……! 落ち着きましょう……」
今度は、殿下が胸を張って立ち上がった。
「そうだな! 俺も行くぞ!」
するとフーウォトッグ様が驚いて言う。
「殿下っ……! 何をおっしゃっているのです!?」
「俺はトルフィレと戦うと決めたからな!! 行くぞ!! トルフィレ!!」
アンソルラ様も「決まりだー!!」って言いだして、フーウォトッグ様も、仕方ないですねって言ってくれた。
あなたにおすすめの小説
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。