全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

75.険悪?


 僕らは、城の窓から飛び出した。

 僕を乗せてくれるのは、殿下の大きな竜の使い魔だ。その上に乗せてもらえて、殿下の使い魔の魔法を間近で見ることができて、僕は嬉しい。

「やっぱり、殿下の使い魔の魔法はすごいです……僕じゃ、こうはいかない……わっ!!」

 急に、殿下は横から僕を抱き寄せる。

「トルフィレが望むなら、いつでも見せてやるぞ!」
「え……え!!?? で、でもっ……!!」
「他にはどんな魔法が見たい? どんな魔法でも見せてやる!!」
「殿下…………」

 そんなことを言われながら、殿下のことを見上げていたら、もう我慢しているのが馬鹿らしくなりそうだ。

 彼は、そばに佇むフーウォトッグ様とアンソルラ様に向かって得意気に言った。

「どうだ!? いい感じだろう! フーグ!! アーソ!!」

 すると、アンソルラ様も嬉しそうに言った。

「いい感じだぞ!! きっと、トルフィレもすぐに惚れ直す!!」

 彼に言われて、殿下はますます僕のことを抱きしめてくれる。

 い、一応、これから魔物退治に行くはずなんですがっ…………!?

 殿下は殿下で、そばまで飛んできたアンソルラ様に、僕にも聞こえてしまうような小声で言う。

「これでまた一つ、キスに近づいたな……」

 殿下……聞こえてます…………というか、これだけ近いと聞かないほうが無理です!!

 たぶん、聞こえてないつもりなんだろう……この、僕に丸聞こえの相談、殿下はたまにしている。僕も聞こえていないことにした方がいいのかな……

 だけど、そろそろ聞こえていないふりも限界です!!

 殿下……キスがしたかったの!?? う、うまくできるのかな……?? じ、自信ない……抱きしめられるのだって、殿下が初めてだったのに……

 戸惑うばかりの僕を乗せて使い魔は飛んで、城の裏手にある、大きな建物の前まで来た。

 そこに、ランクイズイル様が立っているのを見つけたからだ。

 やっぱりいた……!!

「ランクイズイル様!!」
「あ? なんだよおおおお!!??」

 振り向いた彼は、ひどく驚いたみたいだけど、使い魔は構わず彼の前に降りていく。

 突然、巨大な使い魔が降りてきて、彼の周りにいた魔法使いたちが、僕らに向かって一斉に杖を構えた。

「やめろ!! あいつらは敵じゃない!!」

 叫んで制止してくれたランクイズイル様は、僕らに駆け寄ってくる。

 僕は、彼の前で頭を下げた。

「お、お久しぶりです!! ランクイズイル様っっ!!」
「お久しぶりじゃねえ!! 何してんだこんなところで!!」
「な、何って……ランクイズイル様を探していたんです……」
「なんでだよ!! 待ってろって言っただろ!!」
「だ、だって……コーインクルリズ様、来てくださらないし……も、もしかして、強力な魔物が現れて、苦戦しているのかと思いましてっ……!!」

 僕が言うと、彼は少し困った顔をして言う。

「苦戦っていうより……数が多いんだよ…………特に今日は……ここも、巨大な魔物の群れをやっと退けて、暗殺騒ぎも片付いたばかりだ……色々忙しいんだよ……」
「だ、だったらっ……僕らも、魔物を退治するお手伝いをしたいんです!!」
「はあ?? やめとけやめとけ!! 怪我でもされたらめんどくせえことになる……会議室で待ってろよっ…………って言っても、もう夜か……」
「は、はい…………それに、魔物退治なら僕らも手伝えるし……その許可をもらいたくて……」
「許可? 俺からか?」
「はい!!!!」
「無茶言うなよ……そういうのは、コーインクルリズ様じゃねーと……とにかく、もう少し待ってろっっ!!」

 怒鳴る彼から離すように、殿下が僕を抱き寄せてくれる。

「待っていたが、戻ってこないから探しに来たんだ!! お前こそ、こんなところで何をしている? 護衛じゃないのか?」
「……護衛はいらないから、ここで結界の魔法の道具受け取ってろって言われてんだよ…………コーインクルリズ様は、いつも俺を置いてくんだ……なんのための護衛だよ…………」

 ぶつぶつ言っているランクイズイル様に、アンソルラ様が彼の周りを飛び回りながら、「別にいいじゃん。パンでも食ってろよ」って言ってた。アンソルラ様も一応殿下の護衛なのに……

 ランクイズイル様は面倒臭そうにアンソルラ様を見上げている。

「ちっ……お前は能天気な護衛だな…………」

 すると、フーウォトッグ様が、彼らが馬車から下ろしているものに目をやって言った。

「こちらは……どういったものでしょう? 魔法の道具ですか?」
「うるせーよ……あんまり見るな! お前のところの、あのムカつく商人から送られてきたものだ」
「ムカつく商人? 誰ですか?」
「…………パーロルットって男だ」
「あの街で起こったことをまだ根に持っているのですか?」
「……お前も相変わらず、ムカつく猫だな…………」

 言って、ランクイズイル様は、フーウォトッグ様を睨んでいる。フーウォトッグ様はまるで気にしていないみたいだけど……

 な、なんだか険悪な雰囲気だ……

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