全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

78.それ、多分


 テアティリルさんは、僕らと彼の仲間たちを連れて、森の奥へ歩いていく。

 僕は、彼らには聞こえないよう、こっそり殿下に尋ねた。

「殿下……コーインクルリズ様の援軍は…………」
「もちろん、行く。だが、森の中に彼らのような連中がいるとは聞いていない」

 今度は、僕の隣を歩くフーウォトッグ様が、僕を見上げて言った。

「以前、こちらの方から盗賊に襲われて逃げてきた方もいましたし、彼らの意図くらいは確認しておいた方がよさそうです。魔物退治の途中で、背後から撃たれでもしたらたまりません」

 彼の背中に乗っている、小さな鳥の姿の使い魔たちもなんだかさっきまで揉めていたみたいだけど、頷いてくれた。頼むってことらしい。
 だけど、ランクイズイル様も、テリラフイル様も大丈夫かな……? 仲が悪いのか、使い魔同士で睨み合ったり揉み合いになったりしてたみたいだけど……

 それに、テアティリルさん、そんなに悪そうな人に見えないけどな……ここ、森の中だし、襲ってくるならわざわざ場所を変えなくても、こっそり取り囲んで全員で魔法を放つ方法もある。

 彼らに連れて行かれた先にあったのは、森の奥にあった古い建物。魔物に襲われたのか、壁にヒビが入っていて屋根には穴が空いている。かなりぼろぼろだけど、建物自体は大きくて、お屋敷みたいに見えた。

「ここに……住んでいるんですか?」

 僕がたずねると、テアティリルさんは頷いて言った。

「ああ。住めば結構いいところだぞ」
「あ、あのっ……!」
「ん? どうした?」
「……あ、あのっ…………ま……魔物退治をしていた人が……連れて行かれるような話を聞いたことがありますか……?」

 僕がたずねると、フーウォトッグ様とアンソルラ様がびっくりして僕を見上げている。
 だけど、そばにいた殿下は僕を見下ろして微笑んだだけ。

 テアティリルさんは、突然そんなことを聞かれて、首を傾げていた。

「ああ……聞いたことがある…………あ!! お前っ……もしかして、疑っているのか!?」
「……あ、えっと……そ、そんなんじゃなくて……」
「俺らは違うよ。だが、確かにそんな奴らがいるのは事実だ…………そいつら、雇われてるんだよ。領主に」
「り、領主様にっっっっ!!!?」
「ああ。俺たちみたいなのを見つけて、殺すように言われてるんだよっ……クソ領主が!」
「……え、えっと…………」

 僕が驚いていると、彼の隣を歩いていた彼の仲間が、僕に振り向いて言う。

「あの領主、魔物相手に魔法を振るうことしかできねーんだよ。だから俺らのことも、よく調べもせずに殺そうとする。そんな馬鹿領主が雇った奴らなんか、俺らが殴り倒してやったけどなっっ!! はははっ……俺らが追い払ったら、今度は森でそいつらが盗賊の真似事をしてるみてーだぞ!! ばっかみてーーーー!!」

 彼らは恨みたっぷりに話しているけど……コーインクルリズ様がそんな人たちを雇うはずがない。

 フーウォトッグ様の背中の使い魔二人も首を横に振っている。

 それに、この前、その盗賊たちに捕まって逃げていた魔法使いを、僕は僕の領地で助けている。そして、ランクイズイル様が彼を探して僕の領地まで来たんだ。

 それなのに、なんでコーインクルリズ様が盗賊を雇ってそんなことをさせているなんて言うんだ? 何か、誤解しているのか?

「あ、あのっ……!! それ……領主様が……こ、コーインクルリズ様が、盗賊たちを従えているところを見たんですか?」

 僕がたずねると、そんなことを聞かれるとは思わなかったのか、テアティリルさんは首を傾げてこたえた。

「いや……直接そんなところを見たわけじゃない。だけどあいつらは、領主から依頼された時の正式な書類を見せてきたんだ!! それに書いてあったんだよ! 俺たちを討伐しろってな!! ふざけんなよっ…………俺らが何したって言うんだよ!!」

 すると殿下が首を傾げて尋ねた。

「では、お前たちはここで何をしているんだ? 盗賊でないのなら、なぜ街に帰らない?」

 聞かれたテアティリルさんは、苦い顔で顔を背ける。

「少しな…………街の豪商と揉めたんだよ……それで一方的に悪者にされたんだ!! コーインクルリズだって、そいつの言うこと全部鵜呑みにしやがって…………討伐ってなんだよ!! 俺らは魔物かよ!!」

 苛立ちを隠さないまま言う彼に、僕は恐る恐る言った。

「あ、あの……その、あなた方を討伐するように命じられたって主張した奴らは、コーインクルリズ様が正式に討伐を依頼したっていう書類を持っていたんですよね……?」
「ああ。そうだ。コーインクルリズは俺たちを魔物扱いしてるんだっっ!!」
「お、落ち着いてください…………まだ、そうと決まったわけではありません……」
「はあ!!?? なんでそんなこと分かるんだよ!!!! 言っとくが、俺たちは確かに見たんだからな!! コーインクルリズが、俺たちを討伐するように命じた文書をっ…………」

 彼が言うと、彼の周りを歩いていた男たちも同調して、「あいつ、俺らなんか魔物と一緒に切り刻むつもりなんだ!!」って怒鳴りだす。

 みんな、コーインクルリズ様は敵だって信じてるみたいだけど……

 僕は、怒り出した彼らを宥めながら言った。

「お、落ち着いて……え……えっと…………あ、あの……し、失礼ですが、それ…………ほ、本物でしたか……?」

 僕がたずねると、テアティリルさんは目を丸くする。

「は? ほ、本物??」
「はい…………確実に、領主、コーインクルリズ様が用意したものだっていう証拠はありましたか?」
「……そ、そんなこと言われてもな…………あいつらがそう言ってたし、コーインクルリズのサインがあったんだ!!!!」
「……え、えっと……それ、多分偽物です」
「はあ!??? な、なんだって!?? なんでそんなことお前に分かるんだよ!!」
「え…………えっと、それは……わ、分かるわけじゃありません。その……僕も、それを直接見たわけじゃないし……でも、少し前に僕の領地……じゃなくて!! ま、街っ……僕が住んでる街でっ……! え、えっと……に、似たようなことがあったんです!! 偽物の契約書を使って、森の奥に迷い込んだ人を無理やり連れて行こうとする輩がいて…………そ、その時と似てるなって思ったので…………」
「まさか……そ、そんなはずない!! コーインクルリズは、俺たちがここで悪事を働いたって決めつけて……俺たちを殺そうとしているはずなんだ!!!!」
「お、落ち着いて……」

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