全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

83.僕はここに、会議をしに来たんです!


 結界でコーインクルリズ様の魔法を打ち消し、僕を守ってくれた殿下は、すぐに僕に振り向いた。

「怪我はないか? トルフィレ!」
「は、はいっ……!!」

 僕が答えると、殿下はこちらを攻撃してきたコーインクルリズ様に向き直る。

「まずはあれを止めるしかないな……そこの鳥二羽!!」

 言って、彼は魔法で鳥の使い魔たちを捕まえて下ろしてくる。

「手伝え。先ほどから傍観を決め込んで、どういうつもりだ?」

 殿下に迫られて、使い魔の鳥たちはビクッと震えている。そして、テリラフイルさんの使い魔の方が、殿下に握りつぶされそうになりながら、顔を上げた。

「すみません…………ご協力、感謝いたします……暗殺未遂事件の残党を探していて…………助かりました」
「それならそうと、最初から言えばいいだろう」
「そんなの話しちゃったら残党たちに気づかれちゃうんですよーー……いずれも有力な貴族の家の子息たちで……安易に告発なんて、できなかったんです……調査しようとしても妨害されちゃうし、僕らに手を上げようとした貴族に腹を立てたコーインクルリズ様が、ふざけた真似をする奴は全員処刑だなんて言い出したから、魔法使いたちが横暴だ! って騒いで、余計にこじれちゃって…………街道の件は協力します。コーインクルリズ様の説得には、こっちから人をやるので…………それまでの間、なんとか耐えてくれませんか?」

 彼がそこまで言ったところで、コーインクルリズ様の魔法の弾が飛んでくる。しかも、今度は僕らがいた周辺を、全部吹き飛ばしてしまうほどの威力だ。

 殿下が結界で僕を守ってくれていたから、僕と殿下の足元だけは、さっきまでと同じように草が生えているけど、魔法に吹き飛ばされたところは、地面の土ごと草木が消し飛んで、荒れた土だけになっている。

 テアティリルさんと彼の仲間たちのことは、フーウォトッグ様とアンソルラ様が守ってくれていたようで、全員無事だ。けれど、彼らが集まった場所以外は土塊が転がるだけの更地になっていて、みんな震え上がっていた。

 どんな威力だよ…………あれが、一騎当千と言われたコーインクルリズ様の魔法!!??

 しかも、それだけの魔法を放ったのに、コーインクルリズ様は、岩山の上で平然としている。恐ろしい威力の魔法を使ったあとだなんて思えない。恐らくさっきの魔法は、かなり手加減したものだったのだろう。あれで本気じゃないって、どれだけの力を持ってるんだよ!!

 慌てて僕は、僕と殿下に防御の魔法をかけた。

 会議のために用意した書類をぎゅっと握る。

 そんなことをしている間にも、次々魔法の弾が飛んでくる。全部殿下の結界が防いでくれるけど、森の中には、魔法が地面に着弾する激しい音がずっと響いてる。

 このままじゃ、話なんかできない。僕がどれだけ叫んだって、声すら聞こえないだろう。

 かと言って、拘束の魔法を使おうとすれば、ますます逆賊扱いされてしまいそう。あれだけの威力の魔法を使う人なら、拘束の魔法なんて、使おうとしただけで悟られてしまいそうだし……

 結界の向こうには、コーインクルリズ様と、彼の隣でにやにや笑うさっきの魔法使いがいて、コーインクルリズ様の背後から、魔法使いたちが走ってくる。どうやら、コーインクルリズ様が引き連れていた魔法使いの部隊のようだ。
 彼らにコーインクルリズ様は「下がっていろ」と言っているけど、みんな、領主を攻撃されたと思ったのか、僕らに向けて魔法を撃ってくる。

 このままじゃ、どんどん不利になるばかりだ。

 ずっと殿下の結界に守ってもらっているわけにもいかない。

「殿下…………僕、コーインクルリズ様と会議を開いてきます……」

 僕が言うと、殿下は少し驚いた顔で振り向く。

 今こんなことを言うなんて、自分でも変だと思うけど、僕はそのためにここまで来たんだ。

 すると、殿下も真剣な顔で答えてくれた。

「今か?」
「はい…………き、協力していただけませんか? おっ……お願いします!! こ、このためにっ……僕はこれまで準備してきたんです!! コーインクルリズ様だって、街道の件について会議がしたいと言ってくれました!! 僕はここに会議を開きにきたんです!!」
「…………だったらその間、俺がトルフィレを守る! トルフィレは予定通り会議だ!!」
「は……はいっっ!! ありがとうございます!! 僕は、絶対に会議を成功させます!!」

 いっぱい練習したんだ…………絶対に、これを成功させるっ……!!

 震えながら僕が言うと、殿下は僕に向かって力強く笑って頭を撫でてくれる。

「俺がコーインクルリズなら、とっくにトルフィレに協力すると叫んでいそうだな!!」
「……さ、叫ぶのはやめてください……」

 それは困るけど、心強く感じた。なんだかうまくいきそうな気がしてくる。

「アーソ! フーグ!! テアティリルたちを守れ!! 俺はトルフィレと向こうへ行く!!」

 叫んで指示を出した殿下は、僕の周りに強い結界を張ってくれる。そして、コーインクルリズ様の足元に、魔法をかけた。

 すると強い魔法の風が、コーインクルリズ様の足元から噴き出す。微かに彼がバランスを崩した隙に、僕は魔法を使い、僕に可能な最高の速度で飛んで、コーインクルリズ様に近づいた。

 ついにコーインクルリズ様が剣を構える。

 僕だって、少しくらいは剣も使えるけど、多分その腕はコーインクルリズ様に遠く及ばない。切り結んだりしたら、あっさり切り捨てられてしまうだろう。

 力不足な僕の代わりに、殿下の魔法の風が、剣を構えるコーインクルリズ様の四方から襲い掛かる。

 風に乗せて、僕は会議のために作った資料を飛ばした。

 それから思いっきり息を吸い込んで、叫ぶ。

「コーインクルリズ様あああーーーーーーっっ!! 会議です!!!!」
「はあ!? なんだこれはっ……!」

 彼は飛んでいく書類を剣で叩き落とそうとしているけど、資料は全部魔法で強化してある。そう簡単には切れないぞ!

「僕は、喧嘩をしにきたわけでも、反逆しにきたわけでもありません!!!! 僕はっ……会議をしにきたんです!!!! 今飛ばしたのは資料です!! どうか目を通してください!!」
「黙れ!! ……貴様どういうつもりだ!! 反逆者どもを率いて、俺の命を狙いに来たのか!?」
「来ませんよ!! 会議に来たのになんで命狙うんですか!! さっきから僕の話は聞かないのに、そっちの魔法使いの話ばっかり聞いてっ……か、会議開くって言ったのは、コーインクルリズ様です!」

 話している間にも、コーインクルリズ様は次々僕に向かって魔法を放ってくる。その攻撃には隙がない。

 だけど、殿下の魔法が僕を守ってくれて、アンソルラ様たちが、コーインクルリズ様の部隊の魔法使いたちが放つ魔法を弾き飛ばしてくれる。

 僕は、再びコーインクルリズ様の目の前に、書類を突きつけた。

「ちゃんと見てください!! 今日の資料です!! あっ……本日は協議の場を設けてくださったことに感謝申し上げます!」
「黙れっ!」

 コーインクルリズ様が飛ばした魔法が、僕が持っていた書類に直撃する。だけど、その程度じゃびくともしないぞ! 会議のために準備した大切なものだ。簡単に破られてたまるもんか!!

「無駄です!! 僕の力でかけられる、最強の防御魔法をかけて来ましたから!!」
「怖いわ!! なんだその執念は!! 戦いの最中にっ……!」
「戦闘ではありませんっっ!! 会議ですっっ!! えっと……まずは街道っ……じゃなくて、先日の盗賊……あ! 違う!! 今は逆賊の件でしたね!! 僕らは逆賊ではありません!」
「黙れ!! そんな話、誰が信じるか!!」
「し、信じてくれなんて、言いません!! 代わりにこれをっ!!」

 僕は、テリラフイルさんに渡された使い魔を彼の前に突き出す。

「僕らの行動は、テリラフイル様に筒抜けです!」

 僕が差し出した使い魔に、コーインクルリズ様も見覚えがあるんだろう。やっと剣を下ろしてそれを見つめている。

「なんだと……?」
「あ、あと、ランクイズイル様のものもあります! あなたが城を預けてきた彼らの言葉なら、あなたも信じられるはずです! 彼らが証言してくれます! 僕らは、あなたを害するために来たのではありません!!」
「……まさか…………貴様ら……監視付きで来たのか?」
「僕たちは本当に、敵意なんてありません! 会議に来たんです!! さあ!! 資料をご覧ください!!」

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