全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

85.任せられるか!


 コーインクルリズ様には、手出しさせない。

 そう宣言した僕を、ウェンダクドイスはひどく冷たい目で見下ろしていた。

「……そうか……」

 言って、その男はため息をつく。

「仕方がない…………ちゃんと準備をしてきて、本当に、よかった…………」

 ウェンダクドイスが魔法を放つ。

 巨大な使い魔と膨大な量の魔法の弾が、僕らに向かって飛んできた。

 なんだあの量っ……強化のための道具を使っているのか……?

 慌てて結界を張る。

 恐ろしい勢いで、僕の結界に魔法が襲いかかってきた。
 激しく打ち付ける魔法の弾の衝撃で、全身が痛い。

 だけど、僕の背後にはテアティリルさんと彼の仲間たちがいる。それに、このあたり、村があるんじゃなかったのか? それなのに、ウェンダクドイスが放つ使い魔は、どんどんその数を増している。

 まさか…………僕らをここで殺す気かっ……!?

 そのために、こんな無茶苦茶な量の使い魔を連れてくるなんて……見境がないのは向こうの方じゃないかっ……!!

 敵の攻撃を防ぐ僕の隣に、殿下が並んでくれる。

 彼と二人で結界を維持しながら、僕は、テアティリルさんに振り向いた。

「テアティリルさんっ……やっぱり、あなた方を討伐しようとしていたのはコーインクルリズ様じゃありませんでした!! 見てくださいっ……! あなたたちを狙っていたのは、あいつの方です!! コーインクルリズ様だって、この地の安寧を願っているはずです!!」
「トル……」

 彼は、じっと僕を見つめて黙っていた。まだ悩んでいるようだ。

 だけど、その間にも、僕らに向かって使い魔と魔法の弾が飛びかかってくる。このままじゃ、ここが使い魔と魔法で薙ぎ払われてしまう。

 魔法の弾と使い魔の群れの向こうで、ウェンダクドイスが僕らに背を向けるのが見えた。

 それを指差し殿下が叫ぶ。

「アンソルラ!! あの男を追え!! フーウォトッグ!! ランクイズイルの使い魔を連れて、コーインクルリズの城に戻れ!! あいつらの残党探しに力を貸すんだ! 連中は王族をも撃ち殺そうとしたっ……必要があれば援軍を呼べ!! 証拠を消される前に全て拘束するんだっっ!!!!」

 殿下が言うと、彼らは結界から飛び出していく。
 テリラフイル様とランクイズイル様の使い魔も、コーインクルリズ様に振り向いて、こっちは任せてください!! と力強く言って去って行った。

 城の方は、二人に任せておけば大丈夫だろう。

 だけど、残された僕らの方には、一斉に使い魔たちが向かってくる。

 テアティリルさんたちを守らなきゃ。僕も殿下も、ここを動けない。

 僕は、コーインクルリズ様に振り向いた。

 彼は、ここにいる僕らのことを気にしているらしく、強力な魔法は使わずに無数の使い魔たちを一つずつ破壊することに終始している。このままじゃ、いつか僕らの方が押し負ける。

「コーインクルリズ様!! ここにいる人たちのことは、僕たちが守りますっ……!! コーインクルリズ様は、使い魔をお願いしますっ!!!!」
「馬鹿を言うなっ……!! 貴様のようなひ弱な男にっ……民を任せられるかっっ!!!!」
「僕だって領主です!! いつも、魔物から領地を守ってるんですっ……!! だからっ……!! 大丈夫ですっ!!」

 僕が叫んでも、コーインクルリズ様は、まだ迷っていたようだ。

 彼にしてみれば、テアティリルさんたちを置いていくことは、自分が守るべきものをここに置いていくことに等しい。大切なものを、今日あったばかりの僕に任せる決断なんて、そう簡単にはできない。

 今度は、殿下が彼に言った。

「守ってきたはずのものを、他人に預けることはできないか?」
「……っ……!! 王族だからと言って口を挟まないでいただきたいっ……! 圧政の領主など、すぐには信用できません!」
「それは悪かったな。お前が信頼する奴らではなくて」
「………………」
「ランクイズイルやテリラフイルのことは、遠ざけたのではなく、あの二人なら、城を任せられると思ったからだろう。そうでもない奴に、後は頼んだ、などと言えるはずがない。ランクイズイルは、拗ねていたようだがな」
「……」
「お前は領主だ。この領地が、何より大切だろう。だが、ランクイズイルはそうじゃない。あいつには、お前が一番大切だ。分かったら、たまには連れて行ってやれ。拗ねていたぞ」
「…………今日来たばかりのあなたに何が分かるのです……!」
「分かるに決まってるだろーー! 特に、ランクイズイルの気持ちはよく分かる……俺のトルフィレも、領地と街と領民のことばかりで、俺にはちーーーーっとも構ってくれない! これでは拗ねたくもなる!」

 殿下っ……!! 何言ってるんだろう……もう……恥ずかしいよ!!

 それに、殿下………………拗ねてたの?? そんな感じなかったのに……僕だって、殿下のことはすごく大切なのに……

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