全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

88.最初からそう言え


 僕は、資料を握りしめて、コーインクルリズ様に振り向いた。

「で、では、街道と…………あ、先日の盗賊のことと森でのことについて……ご報告いたします……」
「それはいい」
「え!?」

 あっさり断られて、焦る僕。

 な、何でいいんだ!? 僕、まだ何も話していないのに!!

「で、でもっ…………これは聞いていただきたくてっ……!!」
「護送されてきた盗賊たちは、確かに引き取った。協力に感謝する。俺の側近だった者が雇った連中が、ここへ来てまでふざけた真似をしていたようで、悪かったな…………協力に対する謝礼と補償に関しては、後でテリラフイルが話す」
「は、はい……」
「資料も読んだ」
「え!? よ、読んでくださったのですか?」
「当然だろう……ヴォーヤジュのところとは、街道を整備中なのか?」
「は、はい…………」
「ずいぶん魔法の道具や武器を集めているようだな」
「あっ……! あれはっ…………二つの領地を行き来する人たちのためにしていることです!! 警備のためで……魔物退治の成果は出てきていますが、それだけではまだ不十分なんです! いつまた魔物が現れるか分からないし……そ、それに、街道が安全になった分、悪事を働く人も増えていますから……警備が必要なだけで……ですからあのっ……!」

 焦って説明する僕だけど、それを、テリラフイル様が遮った。

「だーいじょーぶですよーー。おちついてくださーーい」

 言って彼はニコニコ笑って、僕に向かって話し始める。

「そんなに焦らなくても、分かってます。僕らみんな、トルフィレ様がヴォーヤジュ様や王家と組んで、僕らに敵意を向けようとしているなんて、考えてませんから」
「へっ…………?」

 だって、そんな風に疑われていたんじゃなかったのか? 僕は、てっきり、そうだとばかり思っていたのに……

「え…………えっと……あの…………」
「トルフィレ様だって、そんなこと考えてないでしょう?」
「もちろんですっ!! 街道は、争いの準備をしているわけではなく、あくまで安全な通行のためで…………コーインクルリズ様へのご説明が遅れてしまったことは……本当に申し訳ございません」

 僕が言うと、コーインクルリズ様は僕から顔を背ける。
 フーウォトッグ様に、後ろめたいことはないのだから謝ることはないって言われてだんだけど……も、もしかして不快な思いをさせちゃった?

 けれどコーインクルリズ様は、腕を組んで言った。

「……そんなことはいい」
「……え…………い、いいんですか?」
「……別に………………街道に不快感を感じていたわけじゃない……」
「そうなんですか? よ、よかった…………あ、ありがとうございますっ!!」
「……? 礼を言われるようなことか?」
「は、はい! あのっ……でしたら、その…………ぜ、ぜひっ……!! こっ……こことの街道もっ…………せ、整備したいんです! ですから…………ご、ご提案をっ……提案があるんです!!」
「提案?」
「はい!! こ、ここから、森を抜けて街から街へ行き来する人は増えています! でもっ……その度に魔物に襲われることも増えてっ……お、お互いの領地の発展のためにも……コーインクルリズ様には、安全な街道の整備に協力していただきたいんです!! けっ……決して損はさせません!! こ、これはっ……あのっ……!」

 一番言いたかったことを話して、ますます緊張していく僕に、フーウォトッグ様が静かに言う。

「トルフィレ様。一度落ち着きましょう」
「え!?? あ…………そ、そうですね……」

 僕は、一度深呼吸をして、もう一度話し始めた。

「あ、あの……それで…………現在は、谷の底の森を通るか、ヴォーヤジュ様の領地の方へ向かう街道を通り遠回りして、そちらへ向かう方が多いんです。けれど、それだと、魔物の多い森を横切ることは避けられません……実際に事故も多いんです…………どうか……」

 恐る恐る僕が言うと、コーインクルリズ様は僕から顔を背けてしまう。また怒らせてしまったのかと思ったけど、なんだかニコニコしていた。すごく嬉しそう……?

「………………最初からそう言え」
「え!?? で、でも…………」
「魔物退治が課題らしいな。それに、物取りも多いとか」
「は、はい…………魔物は、最近になって数を減らしていますが、それでもまだ十分ではなくて……それに、貴重な物も運んでいますから、特にそれを狙って遠くから訪れる人も多くなっているんです」
「そんなもの、俺が討伐してやる」
「へ!?」

 驚く僕に、コーインクルリズ様は真剣な顔をして言った。

「…………街道には結界を張って安全なものにしているらしいな」
「え? え……? あっ……はい!! 警備隊を置いて、宿や武器や道具を取り扱う商店を置いて、より安全な行き来を……」
「周囲の魔物の討伐は? うまくいっていないのか?」
「……け、継続的に行なっている魔物討伐の成果は出ています! 街道周辺の魔物は確実に数を減らし、結界で魔物を遠ざけることばかりに頼らない安全性の確保を目指してっ……す、すぐには結果が出ないこともありますが……」

 すると、コーインクルリズ様は僕を鋭く睨みつけた。

「魔物の討伐が完了していないなら、俺が吹き飛ばしてやる」
「きっ……協力してくれるんですか!?」
「俺一人で十分だ」
「え!? ひ、一人でって…………そんなの危険です!! 僕もっ……!」
「俺が滅ぼしてやる」
「まっ……待ってください! コーインクルリズ様!!」
「邪魔をするものは薙ぎ払うだけだ」
「あのっ……」

 どう言うことなんだろう……協力とは違うのか? でも、魔物を倒してくれるって言ってくれてるのに……

 戸惑う僕に、コーインクルリズ様は目も合わせてくれない。
 だけど、話はしてくれたし、魔物だって、倒すって言ってくれたんだ!

「え、えっと…………あ、ありがとうございます……でもっ! あ、あのっ……整備に関しては、人手や費用、管理に必要な魔法の道具の問題もあるのでっ……」
「それはテリラフイルが話す。おい」

 呼ばれて、テリラフイル様が立ち上がる。

「はーーい…………」

 ぴょんっと椅子から降りたテリラフイル様が、僕の方に近づいてきて「詳しい話を聞きたいです」って言ってくれた。

「じ、じゃあっ……き、協力していただけるんですか!?」
「していただけるっていうか……最初から、コーインクルリズ様はその気でしたよ。仲間はずれにされて、拗ねてただけです」
「へ?」

 びっくりしていたら、コーインクルリズ様が、椅子を蹴飛ばして立ち上がる。

「テリラフイルっっ!!!!」
「だって、そうじゃないですか…………さっきから黙って見ていましたけど、なんて言うか……もう……見てらんないです。いつまで経っても、こういう場が苦手なんだから……」
「やめろっっ……! 苦手なんじゃない!! 好まないだけだ!!」
「好き嫌いの問題じゃないでしょ」

 そう言って、彼は僕に向き直る。

「あんなこと言ってますけど、コーインクルリズ様は、ずっと会議が苦手なんです。準備だってしてたくせに、気が重いなんて言ってて、僕らも困ってたんです……討伐のことばっかり口にするのも、それしか自信あることがないからなんで、気にしないでください」

 すると、それを聞いていたランクイズイル様が声を上げる。

「何言ってるんだ!! コーインクルリズ様は、それくらい討伐に自信があるんだよ!! 魔物退治だけなら、コーインクルリズ様に敵うやつはいないからな!!」

 得意げに胸を張るランクイズイル様だけど、その隣で、コーインクルリズ様、頭を抱えちゃってる。あんまり言われたくないらしい。顔も赤いし、恥ずかしいのか……??

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