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番外編3.隣の領地で会議
89.こういうことには
コーインクルリズ様は、だいぶ恥ずかしそうで、僕は少し戸惑った。
「あ、あの……コーインクルリズ様…………? では、街道の件は……」
すると、テリラフイル様が楽しそうに両手を上げた。
「街道の件…………協力するって言いましたよねー、僕。ちゃんと約束は守ります」
彼は天井を見上げながら、魔法でいくつも書類を取り出しては消している。
「えーーーーっとーーー……」
そう言ってしばらく黙ってしまうテリラフイル様。
コーインクルリズ様もランクイズイル様も何も言わなくて、みんなで黙ってしばらく待つと、テリラフイル様は、こっちに向き直った。
「あ…………今回は、ご協力ありがとうございました……暗殺未遂の残党は全て捕らえることができました…………」
すると、猫の姿のフーウォトッグ様が、険しい目をして言った。
「最初から、それに協力させるつもりで会議を開くと言って私たちを呼び寄せたのですか? 聞いたところによると、コーインクルリズ様に会議を開くすることを奨めたのは、あなただとか。テリラフイル様」
「えーー……だーれがそんなこと話しちゃったんですかーー?」
彼が、誰にともなく聞いて円卓の方に振り向くと、ランクイズイル様が平然と言う。
「ああ、それ、俺俺。聞かれたから。その猫に」
「…………多分そうだろーなーって思ってましたー……バーカ……」
「ああ!!?? お前っ……またバカって言ったな!!」
「うるさいなーー。バカだからバーカって言ってるんですーー」
「俺は馬鹿じゃねえ!! い、いつもいつも、俺のこと馬鹿にしやがって……!! どういうつもりだよ!!」
「いつも? しましたか?」
「しただろ!! 俺がコーインクルリズ様のところに飛んで行きたかった時だって……!!」
「うっわ……そんなこと覚えてたんですか……? さっさと行けばいいのに、もたもたしてるからバカって言ったんですーー。グリエイーレトの相手は、僕だけでなんとかなりました……バカの馬鹿力なんかなくても。コーインクルリズ様といてくれた方が、都合がいいんですー…………腕力では、僕は馬鹿に敵わないわけだし」
言って、テリラフイル様は、フーウォトッグ様に振り向く。
「えーーっと……そうです、僕がコーインクルリズ様に、観念して会議開いてって言ったんです。街道の件だって、ちゃんと話しておきたかったし……こっちもこんな状況だったし、それに……森の中の問題が片付かないと、街道の整備だってできません。だけど、こっちも何分人手不足で。手伝ってもらえないかなーーーーって思っただけです。ご迷惑でしたか?」
彼に聞かれて、僕が「とんでもないです!」って答えたら、フーウォトッグ様がすぐに、僕に振り向く。
「トルフィレ様は、しばらく黙っていてください」
「え!!??」
「こういうことには向きませんから」
「えっ……? え?」
戸惑う僕を置いて、フーウォトッグ様はテリラフイル様に向き直った。
「人手不足……私たちが森に入ると言い出した時に、許可を出したのは、確かあなたでしたね?」
「はーい。そうですよー?」
「グリエイーレトや、城に残る残党たちを自分たちで見張る間に、テアティリルたちと接触し、コーインクルリズ様に現状を報告するのに、ちょうどいい人材だったと言うことですか?」
「…………困ったなーーーー…………王子殿下の側近は、迫力が違う…………」
そんなことを言いながらも、テリラフイル様は、出窓の前の席で眠そうに丸くなり始めてしまう。なんだかあっちの方が猫みたい……
「だって……領主が派遣した魔法使いたちが森の中に入っていっても、みんな怖がって出てきてくれなくて……コーインクルリズ様が怖いから……」
そう言われて、コーインクルリズ様が項垂れちゃっている。気にしているのかな……
フーウォトッグ様は、ムッとして言った。
「テアティリルたちが警戒して出てこないと踏んで、私たちを行かせたのですか? 盗賊たちを引き取りに来ないと思ったら……ずいぶん体よく利用されたものです」
「…………そんなに怒らないでくださいーーーー……謝りますから! …………それに、街道の整備だって…………そちらにとっても、こちらに要望したいこと……だったのではありませんか?」
「要望というより、これは、提案です。二つの領地の発展のために、流通に不可欠な街道の整備は、どちらにどっても重要なことではありませんか?」
「確かに……そうです……トルフィレ様たちには、心から感謝申し上げます……」
彼がそう言って頭を下げると、フーウォトッグ様も、ため息をついて続けた。
「…………せめて、事情を話していただきたかったです。それさえ知っていれば、トルフィレ様なら二つ返事で協力すると言っていました」
「…………そうですね……すみません…………その点については、反省してます。何しろ、こちらも暗殺騒ぎを収めたばかりで、誰が信じられるかも分からない状態だったので…………利害関係のないあなた方に行ってもらえば、コーインクルリズ様にも信頼していただける証拠が出るのではないかと思ったんです」
「…………目的は、達成できましたか?」
「予想以上のものが得られました。残党は全員捕縛、彼らに利用されたテアティリルたちの無罪は証明され、残党に力を貸した商人も捕縛…………本当に、感謝しています。もちろん、こっちだって、領主であるトルフィレ様を危険に晒したことは理解しています…………だから、今回は僕達の方からお土産も用意しています」
「土産? 街道の整備に協力することですか?」
「はい。もちろんです」
言って、彼は、僕の方に振り向いた。
「整備に必要な魔物退治は、こちらでぜーーんぶ引き受けます! もちろんその後、街道で必要な警備もです!」
それを聞いて、僕も殿下もアンソルラ様も、目を丸くする。
フーウォトッグ様も、驚いて言った。
「……まさか……本気でその全てを、こちらで全て引き受けてくださると?」
「はーい。そーでーすー。お任せくださーーい!」
彼が両手を広げてそんなことを言い出すから、これにはフーウォトッグ様もますます驚いたようだ。
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