全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

90.ここに来てから


 フーウォトッグ様が、驚いてテリラフイル様にたずねた。

「まさかっ……魔物の討伐全てだなんてっ…………そちらだって、強力な魔物討伐と暗殺未遂事件の終結のために、戦力を消耗した直後のはずですっ……」

 けれど、テリラフイル様は平然とした様子で答えた。

「魔物討伐は、大した痛手じゃなかったんですー……それより怖かったのは暗殺の方で……コーインクルリズ様が、魔物の討伐に夢中になっている間に、背後から刺すような人たちが出てきちゃって…………しかも、そういう人に限って姿を隠すのはうまいんです……彼らが不穏な動きを繰り返していたあの森を整備するって言ったら、焦って湧いて出てくるかなーって思ってたら、本当に出て来てくれて。助かりましたー。ぜーんぶ、トルフィレ様たちのおかげです! おかげで、コーインクルリズ様も魔物の討伐に集中できます! 何しろうちの領主は、一騎当千と言われた戦士ですからーー」

 彼はそう言うけれど、そんなの、コーインクルリズ様に対する負担が大きすぎる。

「……あ、あのっ……待ってください! 魔物を全部なんてっ…………」

 戸惑う僕に、テリラフイル様は微笑んだ。

「街道を整備している時に、魔物なんか出たら、整備どころじゃなくなっちゃいますからねー…………特にこちらの森は、まだ街道と呼べるものもほとんどない。おかげで荒れちゃって……困っていたんです。けれど、こうして街道を整備する話が持ち上がって…………すーっごく感謝してるんです! 街道が整備されていけば、魔物退治に必要なものも、今までよりずっと早く安く仕入れることができます! 整備に必要な警備は、うちに任せてくださーい………………って言うのを、コーインクルリズ様はここに来てからずーーっと言いたかったんですよーー」
「へっ……!??」

 そうなの?

 振り向けば、コーインクルリズ様は相変わらず難しい顔をしていたけど、頷いてくれている。

「……任せておけ…………」
「ほ、本当に……協力していただけるんですか?」
「………………しないとは言っていない…………ただ、お前がどんな男か分からなかった。今回の話も、どこまで信じられるか、判断しかねていた」

 すると、ランクイズイル様が口を挟む。

「まーたそんなことばっかり言って…………俺はトルフィレは本気で安全のこと考えてるって言ったんだけどなーー」
「ランクイズイル様の意見は聞いてませーーん」

 そんなことを言い出すテリラフイル様に、ランクイズイル様が食ってかかりそうになるけど、テリラフイル様はそれをひらりと避けてしまう。だけど、避けた時に足を滑らせたのか転びそうになって、ランクイズイル様に手を取られていた。

 ランクイズイル様が、勝ち誇ったように言う。

「気をつけろよっっ!! ばああああああああか!!!!」
「…………馬鹿の一つ覚え……」

 ぼそっと言って、テリラフイル様は僕に向き直った。

「トルフィレ様が送ってくださった資料、読ませていただきました……あれだけでも街道を整備することの意味は十分あると理解できます……魔物討伐の際には、武器や道具、素材の運搬に協力してもらえませんか?」
「は、はい……」
「それと、あの……もう一つ、お願いが…………」
「お願い? なんですか?」
「街道の件、ぜひ、ヴォーヤジュ様の方ともお話がしたいんです。どうか、協議の場を設けてはいただけませんか? こっちから直接お願いしたいんですけど、ちょっと前にコーインクルリズ様が、喧嘩腰の書簡送った上に、境界の町で魔法を振り回してから、ちょっと仲が拗れちゃってて…………」
「喧嘩腰……? 振り回すって…………」
「コーインクルリズ様が喧嘩売ってるって誤解されるのはいつものことなんですけど…………今回はその上、僕らが使い魔と話していたのを、魔物に襲われていると誤解してしまい、街中でいきなり剣を抜いて、しかも運悪く整備中の街灯をぶっ壊して爆発させて、警備隊が飛んでくる事態になって…………あの時のこと、もう一度説明したいんです」
「…………そ、そうだったんですね……わ、分かりました……ヴォーヤジュ様も、分かってくださると思います」

 僕が引き受けると、コーインクルリズ様も、感謝するって言いながら真っ赤だ。恥ずかしいらしい。

 テリラフイル様も、嬉しそうににっこり笑って言う。

「ありがとうございます……魔法の道具に関しては、こちらからヴォーヤジュ様にもお土産を用意しているとお伝えください」

 すると、フーウォトッグ様が彼に振り向いてたずねる。

「それは、粗悪な魔法の道具に関することですか?」
「……あー……知ってましたかーー……さすがだな……」
「当然でしょう。トルフィレ様の領地に、粗悪な魔法の道具を送り込んでいた輩のことは、パーロルットから聞いていました。明らかに役に立たないどころか危険なものを町の商店に売りつけ、それによってトルフィレ様の街や魔法使いの部隊を害そうとしていたようです。トルフィレ様は、アフィトシオたちと付き合いがあった商人たちと手を切っていますが、それに腹を立てた嫌がらせでしょう。そうすることで、自分達に有利に取引を進めようと画策していたようです。グリエイーレトも、これに関わっていたようですし、他にも周辺の豪商たちと貴族が組んで、私益のために行っていたようです。ヴォーヤジュ様の領地でも、似たようなことをしていたはずです。証拠も掴んでいますから。ヴォーヤジュ様にも協力していただき、一網打尽にしてしまいましょう」
「…………これはこれは……大きな借りができちゃいました」
「借り? なぜそうなるのです? 私たちは、これからも領地の発展のため、お互いに協力していきたいだけです。何より、街でそんなものを撒き散らされることは、私たちにとって大きな問題です。是非、共同で調査をしませんか?」
「…………フーウォトッグ様……」

 彼は、丁寧に頭を下げた。

「ありがとうございます…………正直、手詰まりでした。心からお礼申し上げます…………」

 すると、コーインクルリズ様も立ち上がり、僕に歩み寄ってくる。

「こちらのこれまでの非礼を、あらためて詫びる…………それを知りながら、こうして協力したいと提案してくれたことに、敬意を表したい。魔物と盗賊の件は任せてくれ……俺も、あなたと領地の発展のために協力していけるなら、これ以上の喜びはない…………領主、トルフィレ」
「コーインクルリズ様………………ぼっ、僕の方こそ…………あ、ありがとうございます!! これからっ……よろしくお願いします!!」

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