全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

91.おやつです


 話がまとまり、みんなホッっとしたみたい。会議はしばらく休憩ということになった。

 すると、テリラフイル様が長い伸びをして、お土産ですと言って、紙袋を出してくれる。

「なんですか? これ……」

 たずねるフーウォトッグ様に、テリラフイル様は中から缶詰を一つ出して言った。

「ツナ缶です。僕、これ大好きなんです。フーウォトッグ様?」

 彼が話している途中であるにも関わらず、フーウォトッグ様は、紙袋の中に飛び込んで行ってしまう。

「ないですよ……? 大きな箱だけです」
「その箱の中ですよーー。それ、サンドイッチにすると、美味しいんです」

 テリラフイル様に言われて、フーウォトッグ様は紙袋の中で言う。

「ありました。シェフに渡しておきます」
「……お前、そろそろ出てこいよ。そのまま厨房連れてくぞ」

 紙袋の上を飛ぶアンソルラ様に言われても、彼は聞いていないらしい。紙袋の中で丸くなってしまう。そうしてアンソルラ様を見上げる仕草は、まるで渡さないと言っているみたい。気に入ったらしい。
 紙袋がちょうどフーウォトッグ様のサイズだから、まるでそのためにあった袋みたいだ。そして彼は、今度は紙袋の中の箱に爪をかけている。

「テリラフイル様……この箱……開かないです」
「人の姿にならないんですか?」

 テリラフイル様に言われて、フーウォトッグ様は、しばらく動きを止めて黙ってしまう。

「………………」
「思いつかなかったんですか?」
「………………」

 黙りこくるフーウォトッグ様。本当に思いつかなかったらしい。

 フーウォトッグ様は、無言で紙袋から飛び出すと、出窓に飛び乗った。けれどそれを、テリラフイル様が下ろしてしまう。

「ここ、僕が気に入りました……ちょっとお昼寝するので、どいていてください」
「ここは、私が座る席です。あなたはそちらにどうぞ」
「嫌ですー。僕、窓辺にもたれかかって寝たいんです……そっちがどいてください……」
「他人の城でくつろぎすぎです。私だって、嫌です。そこは、私の席です」
「……」
「……」

 二人はしばらく睨み合い、なんだか九に不穏な空気?
 焦った僕は、間に入ろうとしたけど、強い風が吹いて出窓のカーテンが揺れ出して、そこからの日が当たるテーブルの上に、テリラフイル様が魔法で取り出したクッションを置いてくれて、その上でフーウォトッグ様が丸くなり、そのそばの椅子にテリラフイル様が座ってテーブルに大きな猫のクッションを置いて突っ伏している。

 なんだか分からないけど……和解したみたい……

 窓から気持ちいい風が入ってきて、会議室なのに、急に仮眠用の部屋みたいな空気だ。

 ランクイズイル様も、コーインクルリズ様のそばで嬉しそうにしていて、僕も嬉しかった。

「珍しいな! コーインクルリズ様が会議でそんな顔するの!」
「……別に…………俺はいつもと変わらない……」
「そうか? すっげー嬉しそうだったぞ!」
「…………それはお前の気のせいだ……」
「そうか? あ!! そうだっ……トルフィレ!!」

 彼は、今度は僕に向き直る。

「これは、コーインクルリズ様からの土産だ!! コーインクルリズ様が選んだんだぞ!!」

 そう言って彼は、僕の前で取り出した箱を開こうとする。
 だけどコーインクルリズ様は渡されたくないのか、急に慌て出した。

「それはいい!! しまえ!」
「は? なんでだよ? トルフィレなら喜ぶだろ」

 焦るコーインクルリズ様を振り払い、ランクイズイル様が箱を開く。中には可愛らしい動物の形のお菓子が並んでいた。

 それを見たフーウォトッグ様がつぶやいた。

「魔物の殲滅とセットにするにしては……確かに可愛い…………」
「でも、うまいぞ!!」

 そう言って、アンソルラ様はすぐに放送を破いて口の中に放り込んでる。

 コーインクルリズ様は真っ赤な顔をして「開けるなと言っただろう」と言って両手で顔を隠しているけど、ランクイズイル様は首をかしげるばかり。

「……なんでだよ? 市場までわざわざ行って、あんなに悩んで選んだくせに」

 それを聞いて、僕はひどく驚いた。領主自ら市場に出向いて、お土産を選んでくれたなんて。

「あ、あ、ありがとうございます!! コーインクルリズ様!!」

 だけど、コーインクルリズ様は真っ赤な顔のまま、僕に背を向けてしまう。

「…………たまたま目の前にあったものを持ってきただけだ」

 そうは思えないけど……指摘しない方がいいかな……

 アンソルラ様が、ツナ缶とお菓子を全部袋に入れて、食事の用意を頼んでくると言って部屋から出ていく。

「厨房に持っていって、サンドイッチにしてもらってくる!」

 そう言って、部屋を飛び出していくアンソルラ様。

 すると殿下も、兄上に報告しなければならないと言って、部屋を出ていった。

 僕も立ち上がった。

「あっ…………そ、それなら、昼食の用意をします! 場所を変えましょう!! 僕、厨房に話してくるので……フーウォトッグ様!! 案内をお願いしてもいいですか?」
「構いませんが……これから準備をしてもらうので、少し時間を置いて向かいます」
「わ、分かりましたっ……! お、お願いします!! 失礼します! コーインクルリズ様!」

 僕は、コーインクルリズ様に挨拶をしてフーウォトッグ様にこの場を任せて部屋を出た。

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