全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.隣の領地で会議

92.僕も同じなんです


 まだ……会議の途中。

 せっかくコーインクルリズ様が遠くから来てくれたんだ。食事の用意をして、それに、森の魔物退治に関する資料も見ていただきたい。それはすぐに準備できる。毎日用意してきたから。フーウォトッグ様と、アンソルラ様も手伝ってくれた。そして、ロティンウィース殿下も。

 コーインクルリズ様の城から帰ってきてからは、盗賊を護送することや、コーインクルリズ様への報告の書簡づくりなんかで忙しくて、ロティンウィース殿下とゆっくり話す時間は取れなかった。

 会議も一段落したし、厨房に行くなら、殿下と歩きたい。

 コーインクルリズ様の領地で頑張れたのも、会議の用意をずっと進めてこれたも、全部、ロティンウィース殿下のおかげだ。

 彼がいて、やっと僕は頑張れる。彼が隣にいてくれるから、やっと僕は、ここに立っていられるんだ。

 廊下を走ると、二人で用意した会議の資料に目を通しながら廊下を歩いていくロティンウィース殿下の後ろ姿が見えた。

 静かな廊下に、僕の声が響いた。

「ロウィスっっ……!!」

 彼は、ゆっくりと僕に振り向いてくれる。

「トルフィレ? どうした?」

 そう言って振り向いた、艶やかな長い髪が、昼の日差しに反射して光る。真っ黒なローブを翻して僕の方を向く彼の姿を見たら、自然と、足が止まった。
 見惚れただけだと気づくまで、足は動かないままで、殿下に「トルフィレ?」って、また、声をかけられたくらいだ。

 ……殿下と再会した時のこと、思い出しちゃった。

 あの時は、殿下が来てくれるなんて思っていなかった。殿下の顔を見たって、それが彼だって分からなかったんだ。

 再会できて、ずっと泣いて謝る僕に、彼はもう一度一緒に戦いたかったと言ってくれた。

 その彼と、こうして二人で城の中を歩いていられてるんだ。

「……あ………………あ、の……」
「トルフィレ? どうした?」
「え……えっ……と…………あの……」

 見下ろされているだけで、ひどく鼓動が高鳴る。それはいつものことで、それなのに、いつまで経っても慣れない。

 ひどく落ち着かないのに、殿下がこうしてそばにいてくれれば、力強い気持ちになる。

 ずっと会いたかった彼に再会できた時も嬉しかったけど、今の方がずっと嬉しい。今ならいつでも、殿下のすぐそばに行けるんだ。

「えっ……と……ど、どちらに……」

 ……何聞いてるんだ。僕……どこに行くんだ、なんて。

 そんなこと聞きに来たんじゃないだろ。ロティンウィース殿下だって、兄上に報告に行くって、そう言ってたじゃないか。

 ロティンウィース殿下も、首を傾げていった。

「……? 兄上に今回の報告をしに行くところだ」
「あっ…………そ、そうです……よね……あ、あのっ……! 僕っ…………あ、僕、も……一緒に行っていいですか?」
「……もちろんだ!!」

 そう言って、殿下は僕を、ぎゅっと抱きしめる。

「でっ……殿下っ!!??」
「今日はいい日だ!! トルフィレが俺を追ってきてくれた!! 最高だ!!」
「で、殿下…………」

 そんなの……僕だって、そうです……

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