虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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65.逃げて!

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 向かってくる矢の勢いは全く緩まない。次々に降ってきては、僕が作った結界を殴りつける。

 なんなんだよっ……! この力っ……! 本気で僕らを殺す気なんじゃないだろうなっ……!!

 馬鹿力のロヴァウク殿下の魔法なだけある。恐ろしいくらいの威力だ。
 僕らに向かって降ってくる魔法の矢は、巨大な岩でも落ちてきたかのような音を立てて、僕の結界を叩いている。

 激しい攻撃に恐れをなしたのか、空き家の高いところで、僕らが罠にかかる様子を見物していた奴らは、外に出てきたり、窓から顔を出していた。そして、攻撃を続けるロヴァウク殿下を見上げて、口々に叫ぶ。

「なんだっ……!? あれっ……!」
「さ、さっきの警備隊だっ……!!」
「なんでっ……! そんな奴が攻撃してくるんだよ!!」

 窓から顔を出した人も、たまらず空き家から飛び出してきた人も、口々にあれはなんだと言って空から弓を放つロヴァウク殿下を指差している。
 みんな、警備隊がやり返してくるなんて、思わなかったんだろう。

 思っていたより人数が多い。出てきた人の中には、殿下の魔法に恐れをなして、逃げていく人もいた。

 けれど、やり返そうと魔法を使おうとしている奴らもいる。一人が放った炎の魔法は、僕の結界に阻まれて消えた。
 あの激しい光の矢に、その魔法で挑むのはどう考えても無謀だ。

 魔法を放った奴めがけて、さっきまでの倍以上の攻撃が来る。

 それを結界で防いでいる僕はたまらない。猛攻に耐える腕も体もそろそろ限界。骨の一本くらい折れるかも……

「さっさと逃げて!! これ以上殿下を刺激したらっ……もうっ…………!」

 苦し紛れに言った僕の言葉は、轟音の中でも、なんとか彼らに聞こえていたらしい。
 次々に空き家から人が出てきては、悲鳴を上げて逃げていく。その数、数十人くらい。

 こんなにいたのかよ……そりゃ警備隊もやめるよ。

 魔物は無尽蔵に増加、怪我人は増えて、討伐は困難なものになる一方。それなのに予算は切れてろくに回復の薬も買えず、頼みの綱の伯爵は知らん顔。守っているはずの街の住人からは、住処を奪った犯人扱いされる始末。

 タンヘットが「やめときな」って言うわけだ……
 やめられるんなら、僕も秒でやめている。

 だけど今の僕は、第五王子と警備隊に潜入中。殿下を置いて逃げるなんて到底できないんだけど、当のロヴァウク殿下は、僕らを絶対殺す気だ!!

 激しい矢は、勢いも数も無尽蔵に増えて、まるで雨。魔物の数倍たちが悪い。

 弓なんて構えているけど、殿下はもうそれで弓を打っていなくて、彼の周りに無数の光の矢が現れては、僕らに向かって降ってくる。
 じゃあ弓なくていいだろ。せめて王家の紋章を隠せ。

 けれど、逃げ惑う人たちには、そんなこと気づく余裕ないみたい。

 ほとんどパニック状態になった人たちを、クロウデライが「逃げろ!」と叫んで誘導している。

 いつのまにか、魔物まで増えてきたようだ。
 建物の陰から、黒いモヤでできた虫のような魔物がいくつも顔を出す。その数はどんどん増えて、僕らのことを狙ってきた。

 クロウデライに向かっていく魔物を、チミテフィッドが短剣で切り裂いて、僕に向かって叫ぶ。

「レクっ……! ロヴァウ……はどうしちゃったんだ! 止めて来てよ!!」
「止められるんなら止めてます!」

 もう耐えきれない。

 結界はもうもたない。軋むような音が鳴り、破壊される寸前だ。

 僕は、結界の破砕を少しでも引き伸ばすために、ありったけの魔力を込めて、背後のクロウデライに向かって叫んだ。

「クロウデライさんっ……! 背後守ってっ! もうっ……! 割れるっ……!!」

 言うのが遅かったかもしれない。次々に飛んでくる魔法の矢は、僕の結界を、音を立てて粉々に割ってしまう。

 防ぐものがなくなり、飛んできた矢は、ただでさえ崩壊寸前だった廃墟を貫いていく。

 なんなんだ、あの王子!! このままじゃ僕ら、魔物じゃなくて殿下に殺される!

 僕は、背後に振り向いた。

 クロウデライには守護の魔法が使えるらしく、彼の魔法のお陰で、そこにいた人たちは無事だった。
 先ほどまで僕らに罵声を浴びせていた人たちは、圧倒的な力を前にして、怯えている。

 でも……それも無理ないか……

 辺りにあった建物はズタズタに切り裂かれ、屋根や壁は穴だらけ。そんなものを目の当たりにして、次に貫かれるのは自分かもしれない、そんな恐怖を作り出した殿下は、まだ空に浮かんで僕らを見下ろしているんだから。

 数人は完全に腰を抜かしていて、あとは震えながら立ち尽くしている。

 そんな彼らに向かって、殿下が言った。

「逃げる奴は追わない。命が惜しければ尻尾を巻いて逃げろ」

 叫んだ殿下の周りに、また光の矢が現れる。本気で次の攻撃が来る。

 僕は、背後に向かって叫んだ。

「逃げてっ……!! 背を向けた人をロヴァウは追いません! た、多分っ……」

 確かかどうかはちょっと自信ないけど、さっき逃げていった人たちのことを、殿下は傷つけていない。多分、無闇に追ったりはしないだろう。

 するとそれを聞いた奴らは、悲鳴を上げて逃げ出す。なんだよ。元気じゃないか。逃げる力があるならよかった。

 けれど、負けん気の強い奴らも多くて、数人は殿下に向かって行こうと、魔法の光を携えて殿下に向ける。

「ざけんなっ……貴族どもがっ!!」

 怒鳴る彼らだけど、彼らが魔法を放つより先に、魔物が彼らに飛びかかっていく。死角から飛び出してきたそれに男たちが対応できないでいると、クロウデライが彼らを庇って魔物を殴り飛ばした。
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