極悪で役立たずな僕に責め苦を与えると脅迫した悪名高い公爵様が今日も僕に甘い。監禁されて迫られてるような気がするのなんて、きっと勘違いだ!

迷路を跳ぶ狐

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9.なんでここに!?

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 それからしばらくの間、僕は屋敷で素材を集める日々を送った。

 屋敷に住んでいるのは本当に僕だけで、どの部屋も好きに使えた。
 朝になれば、監視の人を連れて、素材を集めに森に出る。
 素材回収から帰ったら、それを公爵様に渡す準備をする。

 生活するのに必要なものは全部揃っていて、ご飯は毎日運んでくれた。テーブルの上に、たくさんの食事が並べられた時は、びっくりして何も言えなかった。いつも食事なんてほとんど与えてもらえなかったのに。これ、食べていいんですかって何度も聞いて、そのあとは恐る恐る口に突っ込んでいた。最近は、食事の時間が楽しみだ。

 魔法に関する本や道具なんかもあって、装備も、必要なものがあれば、監視の人に話せば、次の日には持ってきてもらえた。おかげで、魔物退治もぐっと捗るようになった。回復の魔法の薬も渡してもらえたから、回復の心配をしなくてはならないことも減った。

 外出は、素材を探しに行く時だけ。監視の人なしでは、どこへ行くことも認められないらしい。素材探しから帰ると、屋敷の扉には鍵をかけられた。

 そんな風にして、僕はしばらく、たった一人で素材を集める日々を過ごした。

 だけど、たまに様子を見にくると言っていた公爵様は、あれから一度も来ない。

 素材、結構集まったし、喜んでもらえたのかな……

 食事も装備も、素材集めの拠点となる屋敷まで用意してもらったんだ。公爵様は、僕を逃さないためみたいに言ってたけど、これまでの扱いに比べたら、破格の待遇じゃないか。

 その分、ちゃんとリストのものは集めなきゃと思って、僕は一生懸命、素材を集めた。

 それを毎日、公爵家の城からくる使いの人たちに渡す。

 一度食事を持ってくる人に、「公爵閣下には会えないんですか?」聞いたけど、「公爵様はお忙しいのです!」って言って、逃げるように去っていった。そんなことがあってから、公爵様に会いたいとは言いづらくなってしまった。

 公爵様、もう来ないのかな……それとも、僕に会いたくないのかな……?

 その日も日が暮れて、屋敷に帰った僕は、ベッドの上で転がりながら、そんなことを考えていた。

 毎日素材を渡しているだけだけど、僕はこのままでいいのかな……??

 もらったリストはそろそろ終わる。

 リストのものを全部集めたら、公爵様にお会いできないか、聞いてみるか……次のリストの内容によっては、特別な装備が必要になるかもしれないし、回収するための道具を工夫すれば、品質もずっといいものが手に入るかもしれない。その方が、公爵様も喜ぶだろう。

 公爵様に渡されたリストを見上げる。

 これ……公爵様が書いてくださったのかな……

 そうだ……今度は、今よりもう少し遠くまで集めに行ったらどうだろう。そうしたら、もっと喜んでもらえるかもしれない。僕も行ってみたかったし。

 だけど、それだと夜に屋敷に帰ることは難しくなる。何しろ途中で魔物に出くわしたりすると、しばらくそこで足止めされてしまう。森の奥まで行きたいけど、夜はここに帰らなきゃならないし……どうやったら行かせてもらえるのかな……

 一人での素材探しは、気楽でいい。だけど、公爵閣下の意見が聞きたい。

 本当に、満足してもらえているのかな……

 今もできる限りのことはして、いいものを渡せるように努力しているつもりだ。だけど、素材の回収を引き受けたからには、できるだけ要望に添いたい。

 監視の人に相談してみようかな……要望があれば教えてほしいって手紙を書けば、返事をくれるかもしれない。明日になったらやってみよう!!

 そう思って起き上がったら、部屋の外から音がした。廊下に出ると、玄関の方から何か飛んでくる。

 鳥……ではないみたいだ。まさか、魔物!? 強い魔力を感じる。この辺り、魔物が多いみたいだし、入って来たんだ!!

 僕は魔法で狙いをつけて、それを打ち落とした。

 これで一安心……だけど屋敷の中にまで、魔物が入って来るなんて。結界を強化した方がいいな…………

 そうだ!! 屋敷の結界の道具を、さらに強化しようと思っていたんだ!!

 とりあえず、強化しておいた杖で結界を張り直す。これで、魔物は入ってこないだろ。あとは、結界の道具の強化だ!!

 僕は、結界の道具がある部屋に急ごうと走り出した。

 廊下を走っていると、窓の外から音が聞こえた気がした。
 なんだろうと思って振り向けば、窓の外で公爵閣下が恐ろしい顔をして立っている。

「こ、公爵閣下!!??」

 え……な、何してるんだ!??

 あ、もしかして、結界、強化しすぎちゃったのか!? 魔物どころか公爵閣下まで締め出しちゃったんだ!!

 慌てて窓を開けたけど、遅かったみたい。

 公爵様の魔法の弾が、僕に向かって飛んでくる。慌ててしゃがんで避ける僕。すると、弾は僕の頭上を飛んで壁にぶち当たり、そこを黒焦げにしてしまった。
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