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10.嬉しかったんです
しおりを挟む「どういうつもりだ!! 貴様っ!!」
うわああああっ……公爵様、すっっごく怒ってる!! 結界で締め出したからだ!!
「ご、ごめんなさい!! あ、ああ、あのっ……まっ……魔物かと思ってしまって……」
慌てて謝るけれど、やっぱり公爵様はすごく怒っているみたい。僕を睨みつけて言った。
「…………この結界は貴様が張ったのか?」
「は、はい…………あ!! あああのっ……い、今すぐに結界を解きます!!」
慌てて、僕は結界を解いた。
すると公爵様は、そのまま窓から中に入ってきてしまう。そして、僕を睨みつけて言った。
「随分強固な結界が張れるようだな……」
「は、はい…………でも、あの……失敗しちゃったみたいで…………魔物だけ入れなくするつもりが、公爵様まで入れなくなっちゃったみたいで…………た、多分、僕以外の人を寄せ付けない結界になっちゃったのかも…………」
「……そうすると、貴様は幽閉されている分際で、公爵家の者全員を締め出すつもりだったのか?」
「へっ……!? い、いえっ……あのっ…………そ、そんなつもりはっ…………」
どうしよう……公爵閣下……すっごく怖い顔してる!!
あまりの恐怖に僕が後退りすると、追うように公爵様も僕に近づいてくる。
「……少し来い」
「へっ……!? で、でもっ……あれは、そのっ……」
「でも、だと? 俺の使い魔を撃ち落とした上に、俺を締め出しておいて、何か申し開きがあるのか?」
「へ? 使い魔??」
「屋敷の中に飛ばしただろう……俺が来たことを知らせる使い魔だ」
「え……あ!! あの鳥みたいな魔物っ…………」
魔物じゃなかったのかーーーー!!
てっきり、魔物だと思って……し、しまったああああああーーーー!! 思い出した!! 公爵様が何か連絡がある時は、使い魔を飛ばすって言われてたんだ!! すーっかり忘れてた!!
せっかく来てくれたのに……しかも、多分僕が会いたいって言ったから来てくれたんだよね!?
恐れ多くも公爵閣下を呼びつけておきながら、結界で締め出して、使い魔は撃ち落として、その上……さっき僕、魔物呼ばわりしたような気がする…………
「あ、あの…………公爵閣下……」
「俺に舐めた真似をして……ただで済むと思うなよ…………」
公爵は苛立った様子で近づいてきて、僕の手を強く握った。そして、恐ろしい顔でにやーーーーっと笑う。
「俺の噂はだてじゃないと教えてやる……」
「あ、あのっ……だてだなんて思ってないです……」
*
すっっっっごく腹を立てた公爵閣下に、いつも僕が使っている部屋に強引に連れてこられた僕は、いきなり三角木馬に跨ることを強要された。
嫌だと断ったら、手を後ろ手に縛られてしまい、魔法で木馬の上に放られた。
「服を脱がされないだけ、ありがたく思え!」なんて言われたけど、こんなのに乗せられて、誰がありがたいなんて思うもんか!!
股間を鋭い拷問器具で抉られて、痛くて痛くてたまらない。それなのに、僕は木馬の上でもがき苦しむことしかできない。少しでも痛みから逃れようと足を動かしたら、ますます木馬が僕の股間に食い込んでくる。
「いっ…………あああっ…………い、いたっ……! 痛いぃぃぃ…………」
股が痛い……千切れちゃいそう。
僕は足掻いて悲鳴をあげているのに、公爵様はすぐそばの窓辺でテーブルについて、僕からむしり取った、集めた素材のリストを眺めている。
「やはり……これだけの期間であれだけ集めたというのは本当だったのか…………」
本当だったのかって、嘘だと思ってたの!? 僕、一生懸命集めたし、頑張ったし、ちゃんと公爵様のお城にも送ってたのに!!
文句を言おうとして体を動かしたら、ますます木馬に股間を虐められてしまう。ぐりぐりとそこを責められるたびに、僕は喘いだ。
「いっっ…………いたっ……痛いよぉっ……こ、公爵閣下!! もう許してくださいっ……! 謝りますからぁっ……!」
「黙れ。俺がいいと言うまで、そこでもがき苦しんでいろ」
「そんなっ……! あっ……ぁあっ…………!」
「普段はこの部屋を使っているのか?」
「は、はいっ…………魔法の本もっ……ベッドもあったしっ……ち、ちょうど良くて…………あ、あぁっ…………! 公爵様!! お、お慈悲をっ…………!」
「そうだな。その木馬もこの部屋に置いておけ」
「いりませんよこんなの!!!! 捨てます!!」
「俺からの贈り物が受け取れないのか?」
「こんなもの受け取れません! 夢に見るっっ!! いっ…………いたっ……あうぅっ…………ああっ…………! も、もう無理っ……ぃっ……あぁっ……もうっ……許してえっ……!」
叫ぶと、木馬はパッと消えて、僕は床に向かって落ちていく。
「ひゃっ…………あっ……!」
そのまま床まで落ちるかと思いきや、僕の体は、床に打ち付けられる寸前で宙に浮いて止まった。それから床までゆっくり下ろしてもらえる。
驚いていたら、テーブルの方から声が聞こえた。
「これに懲りたら、二度と同じ真似をするなよ」
「…………はい……」
恨みを込めて振り向いたら、公爵はニヤニヤしながら、僕を見下ろしていた。
僕が落ちるのを魔法で止めてくれたみたいだけど……
床に落ちるのを止めてくれるなら、木馬にも乗せなきゃいいのに……股間、まだズキズキする……痛い……
「何をしている? 早く素材の件を報告しろ」
「……痛くて動けないんです! ひっ……ひどいっ…………!」
「回復の魔法をかけてやろうか?」
「いりません!!」
自分の魔法で飛んで、ベッドに転がる僕。せめてもの仕返して、自分にできる一番怖い目をして、公爵閣下を睨んでやる。
「ほ、報告なら、ここからします!!」
「分かった分かった。そこでいいぞ」
くそぉぉぉ…………楽しそうな顔しやがって!!
もう絶対に最初から最後までここでゴロゴロしながら素材のことを報告してやる!!
「集めた素材はリストにあるとおりです! 公爵閣下のお城にも、ちゃんと送りましたよね!?」
「ああ。全て受け取った。だが、俄には信じられなくて、ここへ来た」
「僕、嘘なんかつきません!! 拷問する公爵閣下に嘘なんて、怖くてつけませんよ!!」
怒鳴りつけてやるけど、公爵閣下は平気な顔。テーブルの上に置いた、僕が今日集めて袋に入れておいた素材を取り出しては頷いている。
「俺も、嘘だと思っているわけではない……実際に素材は届いていたしな……だが、あまりに量が多くて、すぐには信じられなかっただけだ」
「…………でも、集めろって……」
「確かにそう言ったが、それにしても、量が多い。それに、指定していないものまであった」
「屋敷と装備と道具とご飯のお礼です! あった方がいいかなって思っただけです!! お、多かったですか? たくさんあった方がいいかと思ったのですが……」
「確かに、俺の方はそうだ。だが、そっちはどうなんだ?」
「え?」
「あの森で、あれだけの量の素材を集めたんだ。無茶をしたんじゃないか?」
「無茶なんてしてません! 装備もたくさん用意してもらったし、魔法の道具も貸してもらえたので、捗っただけです………………だからっ……あ、ありがとうございました…………」
布団をかぶったまま、ずっと言えなかったお礼を言う。
そのことは本当に嬉しかったから言っただけなのに、公爵様は、また訝るような顔をしてこめかみを押さえていた。
「……なぜ礼を言うんだ………………分かっているのか? ここで監禁されて、危険な森に一人で向かうことを強要されて、素材を集めさせられているんだぞ」
「で、でも……こんなにいい屋敷を貸してもらっているし……装備も………………そ、それは、感謝しています」
「…………貴様のそのおかしなところは変わらないな」
「おかしなところなんてありません! もう木馬は出さないでくださいね!!!!」
僕が怒り出すと、公爵は笑ってる。なんであんなに楽しそうなんだ……
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