極悪で役立たずな僕に責め苦を与えると脅迫した悪名高い公爵様が今日も僕に甘い。監禁されて迫られてるような気がするのなんて、きっと勘違いだ!

迷路を跳ぶ狐

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11.明日は俺も

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 楽しそうな公爵様は、僕に振り向いて言った。

「とにかく、素材の件はよくやった……話を聞いた時は驚いたが……本当に一人で集めたようだな…………」
「か、監視の人には聞かなかったんですか?」
「いいや。聞いていたが、自分の目で見るまでは信じられなかった。渡したリストのものは、ほとんど集めたようだな」
「は、はい…………あ、あの……」
「なんだ?」
「お渡ししたものはどうでしたか? 量とか、質とか……劣化しやすいものには、そうならないように魔法の道具を使って質を保ったつもりでしたが…………な、何かご要望があれば、聞きたいです!」
「……要望はない。十分すぎる働きだ。回収を急ぐあまり、無茶な魔法を使っていないか、それを確認しておきたかったが……」

 公爵様の目が、じーっと僕を見つめている。な、なんだか恥ずかしくなりそうだ。

「……あ、あのっ…………」
「問題なさそうだな……回復の魔法の薬は使っているか?」
「え? は、はい!! もちろんっ……僕、よくドジを踏むのでっ……すごく助かってます!!」
「だろうな」
「…………」

 だろうなって、僕、ドジを踏みそうに見えるの!??

 見えるんだろうけど……僕だからな……

 でも、回復の魔法の薬がありがたかったことは事実だ。他に渡された道具の中には、回復の魔法の薬を強化するものもあって、それのおかげで、魔物退治はいつもよりずっと捗った。

 もしかして、僕が回復が苦手って言ったから……かな……

 公爵様を見上げていたら、彼は何か、考え込んでいるようだった。そして、僕に振り向いて言う。

「今度から、監視役には回復の魔法が得意な奴をつける」
「え…………?」
「回復に関してはそいつに頼めばいい。他にも、何か必要なものがあれば言え」
「は、はい…………あ、ありがとうございます……」
「新しいリストは、近いうちに持ってくる。よくやった」
「…………あ、ありがとうございます……」

 そ、そんなに何度も褒められたら、なんだか落ち着かない。満足してもらえているか、不安だったけど……よかったんだよな……

 普段そんなこと誰にも言われないのにっ……急によくやった、なんて言われて、なんだか頭がついていかない。

 褒められたんだよな……!? でも、強力な魔法を意のままに操る公爵が、僕のことを褒めるなんてっ……

「明日は、俺も魔物退治に同行する」
「えっっ……!? こ、公爵様自ら!??」
「ああ。普段、どうやって素材を回収しているのか、知っておきたい」
「で、でもっ……公爵閣下自らなんてっ……き、危険では…………」
「貴様は俺をなんだと思っている?」
「え…………?」

 あ、そうか…………公爵閣下、英雄といわれた魔法使いなんだ。
 だったら勝手知ったる森での素材の回収を、僕が心配するのもおかしいか……護衛の人も来るだろうし。

 だったら、僕もやってみたかったことがあるんだ!!

「でしたらっ…………」
「…………なんだ?」
「あのっ……ぼ、僕、もっと森の奥まで行ってみたいと思っていてっ……そしたら、もっといいものが手に入るかもしれないし……」
「そうだな……明日の働きによっては、検討してもいい」
「本当ですか!? あっ……ありがとうございます!!」
「単純な奴だ…………」

 そんなことを言いながら、公爵閣下はどこか嬉しそう。素材の回収に行きたかったのかな……僕も、回収は好きなんだ。

「俺は明日の準備がある。明日の朝にはまたここに来るから、準備をしておけ」
「はいっ!!」
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