極悪で役立たずな僕に責め苦を与えると脅迫した悪名高い公爵様が今日も僕に甘い。監禁されて迫られてるような気がするのなんて、きっと勘違いだ!

迷路を跳ぶ狐

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15.ここを

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 怯えた僕が震え上がると、公爵様は腕を組んで、僕から顔を背けてしまう。そして、少し拗ねたように、ぼそっと言った。

「俺がここを守りたいと言っているんだぞ…………そんなに嫌なのか……?」
「へ!? い、いえ……それはとても……ありがたいのですが……」
「ありがたいなら問題ないはずだ。魔物のことも、本当は怖いのだろう?」
「………………」

 バレていたのか……

 本当は、すごく怖い。ただでさえ、さっきからフィエイウル様の領地の森でずっと魔物に追われた時のことを思い出しているんだ。

 本当は一人でなんかいたくないけど、怖いから一緒にいてください! なんて、公爵様に言えるもんか。
 けれど怖いものは怖いし、多分、公爵様に嘘をついても無駄だ。

「…………魔物は……怖いです……」

 素直に僕が答えると、公爵様は胸を張る。

「いいか、貴様は俺をなんだと思っている?」
「え……? こ、公爵閣下です……英雄の魔法使いの……」
「そうだ。そして、ここを守るのに、俺ほど適している奴はいない。夜の間に、貴様に回復と結界の魔法も教えてやる」
「え…………」
「二度と俺におかしな魔法をかけられないようにしてやるから、光栄に思え」
「でも……」
「いると言ったらいる。嫌だと言うなら………………」
「ひっ……!」

 こ、怖いっ……!! このまま僕を殺しちゃいそうな顔をしている!!

「は、はい…………」

 つい頷いてしまう僕。

 公爵閣下は顔を近づけて凄んでいるのに、やっぱり楽しそう。来てくれた魔法使いに、城のことを頼むと話していた。

 公爵様…………たまに凄んでくるし、怖いこともするけど…………

 …………ここを守ってくれるんだ……

 公爵様に、城に戻ってからそこにいるみんなに伝えることを確認した魔法使いたちは、「何かあればすぐに使い魔で伝えてください」と何度も念を押して、空を飛んで公爵様の城がある方に戻っていく。

 これで、この屋敷には僕と公爵様だけ。

 公爵様が残ってくれなかったら、僕だけだった。

 僕は、公爵閣下に恐る恐る言った。

「あ、あの……公爵閣下……」
「なんだ? 今さら帰れとは言わないだろうな?」
「…………あ、ありがとう…………ございます…………」
「…………なに?」
「こ、ここを守ってくださって…………か、感謝いたします」

 結界の魔法の道具は閣下が修復してくれたけど、鍵だって壊れてるし、やっぱり怖い。結界のおかげで、もう大丈夫って分かっているけど、怖いものは怖いんだ。

「僕だけじゃ……ここを守れませんでした…………ありがとうございます……」

 僕、いっぱい迷惑をかけたのに、こんなことまでしていただいて、申し訳ない。それと同時に、ここまでしてくれたことに対する感謝でいっぱいになる。

 すると公爵様は、頭を下げた僕の腕を握って引いて、強引に頭を上げさせた。

「…………礼はいらん」
「え……? で、でも…………」

 戸惑う僕の耳に、そっと、公爵様が近づいてくる。
 彼の柔らかい髪の毛が僕の体に触れて、頬に触れて、くすぐったかった。
 そして、それよりずっと僕をくすぐるような声で、優しく囁く。

「俺の方が礼を言いたい」
「え?」

 な、なんで?

 なんで公爵閣下が僕にお礼なんて言うんだ?

 不思議に思って、顔を上げる。

 だけど、公爵様は何も聞くなと言わんばかりにさっさと屋敷の奥に歩いて行ってしまう。

 公爵様のすることも言うことも、僕を驚かせる。たまに、なんで? って不思議に思って、よく分からないこともある。

 だけど、僕は、ちょっと嬉しい。

「公爵様! 待ってください!!」
「当然だ。さっさと来い」

 僕も、公爵様の後を追って、中に入った。
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