極悪で役立たずな僕に責め苦を与えると脅迫した悪名高い公爵様が今日も僕に甘い。監禁されて迫られてるような気がするのなんて、きっと勘違いだ!

迷路を跳ぶ狐

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16.ここでですか!?

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 公爵様も、もう食事は済ませていたみたいで、結界の道具を強化して、それから、屋敷の周りに魔物がいないか魔法で確認して、その後で、僕はベッドの上で、公爵様に貸していただいた結界の魔法の本を読んでいた。

 公爵様は今お風呂に入っている。その前に、結界の魔法の道具を見せてくれて、それを強化する魔法についても、すごく詳しく教えてくれた。

 公爵様の教え方……かなり分かりやすい。聞けば、たまに魔法使いに魔法を教えているらしい。今度は回復の魔法を教えてもらう約束もした。代わりに僕が「だったら、強化に使えそうな素材をたくさん用意します!」と言ったら、嬉しそうにしてくれて、僕はそれがひどく嬉しかった。

 ベッドの上で転がって、魔法の本を読む。

 こうしている時間、好きだな……それに、ひどく安心する。公爵様が結界は任せろって言ってくれたからだ。

 まさか、英雄とも言われた公爵様が、そんなこと言ってくれるなんて思わなかったから……嬉しい。

 こんなにホッとしてる夜、初めてかもしれない。魔物の心配をしなくていい夜なんて、まずないから。

 公爵様と二人きりっていう緊張感はあるけど……

 な、何かあったら僕が公爵様を守らなきゃ!!

 そう思っていたところに、閣下が入ってくる。

「おい」
「は、はい!」

 慌ててベッドから飛び起きて跪く僕。

 お風呂上がりの公爵様は金色の長い髪が少しまだ濡れていて、やけに色っぽく見えた。初めて会った時も思ったけど、すごく美男子だよな……魔法の腕も魔力も恐ろしいほどだし、拷問も脅迫もしなければ、怖がられることなんてないだろうに。

「そろそろ寝るぞ」
「はい!! おやすみなさいませ………………え?」

 公爵様はなぜか、僕の部屋の僕のベッドの隣に、魔法で新しいベッドを出して、そこに腰を下ろす。

「あ、あの……公爵閣下? な、な……何をして……」
「寝ると言っただろう」
「ここで!? あの……他にも部屋はありますが…………」
「俺はここがいい」
「で……でも……」
「なんだ? 嫌なのか??」
「えっ!? だ、だって…………」
「なんだ?」
「…………さっき僕を拷問した人と同じ部屋だと……眠れないかなって思って……」
「そうか……どうやら……拷問希望なようだな……」
「なんでそうなるんですか!?」
「そもそも、俺はこの屋敷を守るためにいるんだ。それなのに、俺にここを出て行けと言うのか?」
「そ、そんな…………」
「二度も俺を締め出すとは、いい度胸だ。次は何で責められたい? 火か? 水か? それとも、朝まで裸で吊るすか?」
「ひっ……!! ご、ごめんなさい!! 同じ部屋でいいです!!」

 僕が慌てて言うと、彼はゲラゲラ笑っていた。何なんだよ!!

 怖い……

 怯える僕を尻目に、公爵様は、ベッドの上でゴロンと横になっている。
 わざわざ寝る時のパジャマまで持ってきたらしく、すでにそれに着替えて、魔法で髪を乾かしていた。ゆったりしたパジャマから肌が見えている。

 じっと見ていたら、彼は、魔法で取り出した袋を僕に向かって放った。

「うわっ……!!」

 びっくりした!!

 飛び退いたら、袋はベッドに落ちた。魔法の装飾が美しい袋で、宝箱のようにも見える。大きさは中にパンが入りそうなくらいだけど、落ちた時に絶対にそれじゃない音がした。鎖が鳴るような音だ!

「……何するんですか……公爵様。な、なんですか……? ……これ……」
「……さあな」
「さあなって、なんですか!! そっちが勝手に放ったのに!! 公爵様が中身を知らないはずがありません!!」
「さあな。貴様が怯えるせいで忘れた。開けてみろ」
「…………」

 何が何でも話さない気だなーーーー!!

 開けてみろって、そう簡単に開けられるものか! 中に何が入ってる分からないのに!!

 公爵様はずっとニヤニヤしてる。もう聞いても無駄だ!

「いいです! 魔法で中を見てから開けます!」

 僕は、ベッドの上に放られた袋の前にうずくまって、じーっと袋を見つめる。そして、それにそっと魔法をかけた。だけど中身は見えない。公爵様が僕の魔法を妨害する魔法をかけているんだ。こんな魔法、僕が打ち破ってやる!
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