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23.そんなことをした覚えはありませんが!?
しおりを挟むウェタフィル様に言われて、みんな慌ててこちらに向かって優雅に頭を下げる。
だけど……悔しいけど、彼らの言うとおりだ。
僕は、公爵様に渡される素材の代わりにここに来た。ここで素材を集めるためだけに生かされている存在なんだ。
僕……何しに来たんだろう…………
公爵様は、僕なんかが図々しく会いに来ていい相手じゃない。そんなこと、分かってるはずだろ。広大な土地を治める大貴族の一族だぞ。
それなのに僕は、公爵様を騙した奴らに送られてきただけのしがない魔法使い。それが偉そうに公爵様に会いたいなんて言い出したりして……何を図々しいことを言っているんだ。
公爵様に、少しでも喜んでもらえたらいい。そう思ったから素材なんかも持ってきたけど……僕が公爵様の前に出たりしたら、公爵様に恥をかかせてしまうんじゃないかな……
公爵様は、なんだかんだ言って優しいんだ。僕が会いたい、なんて言ったから、気を遣って僕を呼んでくれたんだろう。魔物退治が終わったばかりなんだ。今は、公爵様には休んでいただくべきだ。
「あ、あの…………ウェタフィル様……」
「どうしました?」
振り向く彼に、僕は、持ってきたものを入れた袋を差し出した。
「これを……公爵様に渡していただけませんか……?」
「……なぜですか?」
「あの……これ……も、もしかしたら、役に立つかも知れなくて、ぼ、僕……こ、これを渡したかっただけなんです。ず、図々しく、こ、こんなところに来たりして、本当に……ごめんなさい!!」
頭を下げた。
僕なんか……領主様の城で、不良品の道具扱いされていたんだ。いつも、ゴミみたいに倉庫の外に鎖で繋がれて、毎日役立たずと罵られていた。そんな僕が……何を勘違いしていたんだ……
けれど、ウェタフィル様はゆっくりと言った。
「それはできません。あなたが会いたがっているという話をしたら、公爵様は…………かなりお怒りになられたのです」
「……当然だと思います。こんな図々しいこと…………怒って当然です」
「そうではなく、なぜ早く言わなかったんだ、すぐに連れて来いと大声を上げていらっしゃいました」
「…………へ……?」
「ですから、絶対に公爵様には会っていただきます」
な、なんだかウェタフィル様、すごい迫力だ……ちょっと怖いくらい。
でも、彼がそう言うってことは……本当に会っていいの? 会いたいって思ってもらえているのかな……
ざわざわと声がする。
顔を上げれば、廊下にいた人たちが道をあけている。
そして、そこを通って公爵様が堂々と歩いてきた。
公爵様だ……
お会いするの、久しぶりだ。
威厳を感じさせるような美しいローブを着て、長い金色の髪を靡かせる姿に見惚れてしまいそうだった。
魔物退治の際に怪我をしたようだし、今だって、魔物退治から帰ったばかりだって聞いていたから、心配していたけど……元気そうだ。よかった……
「トグディウトル!!」
…………え? 僕??
驚く僕に、公爵様が近づいてくる。
え?? え?? 僕??
僕に会うために来てくれたのか?
驚いていると、駆け寄ってきた公爵様に簡単に引き寄せられて、抱き寄せられてしまう。
「トグディウトル……来てくれたのか……」
「こっ……公爵様!?? えっ……? え!!??」
な、何をされてるんだ!??? 僕!!
なんで僕、抱きしめられてるの!?
しかも、公爵家の城の中で!! みんなが集まる廊下で!!
いきなりのことにパニックになる僕。
こんなに抱きしめられるなんて、聞いてない!
焦っていたら、公爵様の後ろにいた一人の魔法使いが、どこか遠慮気味に、公爵様に尋ねた。
「…………公爵閣下。そちらの魔法使いの方は……お知り合いですか?」
「知り合いだと? その程度のものではない。彼は、東の谷に現れた魔物の群れとの戦いを勝利に導いた魔法使いだぞ」
それを聞いて、その魔法使いも、それを聞いていた周りの人たちも、驚いて声を上げる。だって、公爵様がやけに大きな声で言うから。
何大きなこと言ってるの!?? 僕、そんなことした覚え、全くないよ!!??
焦って、「公爵様! 何をおっしゃっているんですか!」って言おうとしたら、ますます強く抱きしめられて、なんだか口を塞がれているみたい。あんまり強くされたら苦しいよ!
それなのに、もがく僕を公爵様はあっさり押さえつけて、周囲を見渡し声を張り上げる。
「皆も知っているだろう! あの強力な魔物たちを倒せたのは、強力な魔法の武器と道具があったからだ! そして、それは、彼の協力なくしては集まらなかった。あの戦いの一番の功労者だ!」
ざわっと、どよめきが起こり、みんなが僕を見つめてる。そして、どこからともなく拍手と歓声が起こる。
な、なにっ……なんなの!?? もう……何が何だかわからない……
訳がわからなくて、青い顔で震える僕に、公爵様が微笑んだ。
「よく来てくれた。トグディウトル…………今日は礼を言いたい。ゆっくりしていってくれ」
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