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69.これに手を出したい者がいるのか?
しおりを挟む領主様は僕を指差して、ずっと怒鳴っていた。
「このっ……なぜ貴様が私の魔法を防げる!? 貴様程度がっ……」
「そんなの、あなたの魔法が僕に防げるものだっただけです。会議の最中だったんですよね? 暴れないでください」
面倒臭くなって最低限のことだけ言うと、そいつはますます怒鳴り出す。
「何を生意気なっ……!! 少し公爵家の方に気に入られたからと言ってっ……!! そもそも全て貴様のせいだろう! 貴様が余計なことをするから、こんなことになったんだ!!」
「まるで違います。あと、怒鳴らないでください。全部、あなたのせいです。強引に連れて来た人を脅して働かせていたのはあなた方だし、公爵様や他の方々を蔑ろにしてふざけた取引を持ちかけたのも、あなた方です。僕が公爵様のために用意したものを壊したのもあなた方ではありませんか。直しましたが」
言って僕は、さっき結界を張るために使った道具を取り出した。小さな石のようなそれは、少し光って結界をさらに強化してくれる。
「僕は、公爵様と約束したんです。公爵様の所望するものを集めて、壊れたものも、あなた方に破壊されたものも、必ずお返しするって。これも、やっと直ったんです」
今度は、さっきの書物を取り出す。すでにさっき外した道具は戻して、敵の魔法を打ち消す魔法で守ってある。
「また焼かれたら堪らないから、強化しておきました。もう、あなたの魔法なんか効きません。分かったら、二度と公爵様にも、公爵様の大切なものにも、僕の大切なものにも……手を出さないでください…………」
僕が言うと、書物から魔力の光が溢れる。
それを見て、その魔法をかけたのが僕だと知った領主様は、愕然としてその場にへたり込んでいた。
すでに兵士たちに取り囲まれ、護衛の魔法使いたちに杖を向けられているし、もう反撃はできないだろう。
僕はすぐに、公爵様に駆け寄ろうとした。
「公爵様!! ご無事ですか!?」
だけど僕は、あっという間に会議のために集まった貴族達に囲まれてしまう。
「なんだ!? 今の魔法は!!」
「え……? あ、あの……」
「どうやったんだ!! あれはっ……その書物にかけられた魔法か!?」
「へ!? えっと…………」
「あの結界は何だ!? あんな強固な結界……初めて見た! …………まさかっ……! あなたがトグディウトルだな!?」
一人がそう指摘すると、集まったみんなが驚嘆する。
「あなたが……公爵家が隠した魔法使いか!!」
「か、隠されているわけでは…………」
「そうか……こんな収穫があるとは思わなかったぞ! ぜひ話を聞かせてくれ!!」
「あの……」
「教えてくれ! トグディウトルっ……さっきのあの魔法はなんだ!?」
「えっと……」
どうしよう……
公爵様や僕のところに、しょっちゅう使いの方や使い魔は来ていたけど……こんなことになっていたなんて!!
僕が慌てていると、みんながますます僕に迫ってくる。
「森の中で部隊を率いていると聞いたが、本当なのか!?」
「えっと……」
「その書物はなんだ!?? う、うちの書物にもそんな魔法をかけられるのか!??」
「あ、あの……皆様、あの……」
すぐに公爵様のところに行きたいのに、こんなに囲まれていたら動けない。
押し退けて前に進みたいけど、みんな公爵様の大切なお客様。
それに、確か今日、王家の方もいらっしゃるんじゃなかったか?? それ以外にも、僕じゃ顔を合わせることもおこがましいような方もいるはず。
粗相は絶対に働けないし……どうしたらいいんだ。僕、公爵様以外に仕える気はまるでないのに……
「あ、あのっ……本当に皆さまっ……! 僕、あのっ……!」
焦る僕を、突然大きな手が捕まえて、抱き寄せた。
「公爵様!?」
僕を引き寄せる公爵様は、じっと僕を見下ろしてくれて、「無事か?」って聞いてくれる。
無事に決まっている。
だって、ここに現れた僕に気づいた公爵様が、すぐに僕の周りに結界を張ってくれていたから。
やっぱり最近の公爵様は過保護……僕、結界なら自分で張れるのに。
僕が来なくても、公爵様は多分無傷だったんだろう。それでも僕は、公爵様に誰かが剣を向けるなんて許せない。そんなものは、全部僕がへし折ってやる。
公爵様は、僕をマントで包んで覆い隠してしまう。
頭からそれに包まれちゃって、僕はすっぽりその中に収まってしまった。
なんだか、みんなの前で公爵様に包まれているみたいで恥ずかしい。だけど、公爵様にこうしてもらえると嬉しい……
僕は、隠されているのをいいことに、公爵様にしがみついた。
公爵様が、周囲を睨みつけて言う。
「……これは、俺のものだ。誰か、これに手を出したい者がいるのか?」
聞かれて、その場にいるみんなが息を呑んで、周りはしんと静まり返ってしまった。
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