従者になりたい犬と犬に悪戯したい魔法使い様

迷路を跳ぶ狐

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第一章

3.必ず助けてやる

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 自分を処分するために呼ばれたフィーレアとデスフーイを見上げて、チイルはもう泣き出しそうだった。


(もう……嫌だ……逃げなきゃ……!! 例えそれで殺されても、ここでずっと痛いことされるよりマシだ…………!!)



 それは、チイルがずっと考えていたことだった。


 これ以上ここにいるより、逃げて殺されたほうがいい。


 チャンスは、チイルが一人になった時。


 今、体に残っている魔力を全て使えば、鎖をちぎることは可能だろう。




 顔を上げたチイルに、デスフーイが近づいてくる。

 彼は、チイルの前で腰をかがめて、目を合わせてきた。

「……お前、名前は?」
「え……?」
「名前だ。お前の名前は?」
「…………」

 チイルと答えようとしたが、震えているせいでうまく話せない。

「少し、体を見せてもらうぞ……」
「…………ぃや…………」

 ポロポロ涙が流れてくる。これ以上の苦痛には、耐えられそうにない。こんな思いするくらいなら、もう殺して欲しい。


 デスフーイが手を伸ばしてくる。


 どれだけ嫌でも、逃げる術はない。


 チイルは目を閉じた。



 震えている裸の体に、デスフーイの掌が触れる。


 びくっと、チイルは体を震わせた。


 またひどく殴られる、そう思ったが、彼は、触れただけですぐ手を離した。

「少し……抑えられたみたいだな」
「え?」

 抑えられたとはなんのことだろう。魔力のことだろうか。けれど、体にはいつもと違うところなんてない。魔力が消えたような感覚もまるでない。


 意味がわからず、チイルは目を開け、顔を上げる。
 そしてデスフーイと目が合うと、彼は優しい顔で微笑んだ。



「必ず助けてやる」

「……え?」



 助けるとは、どういう意味だろう。意味がわからず、ぽかんとしていると、ずっとトルフィーダと話しこんでいたフィーレアが、こちらに振り向いた。

「デスフーイ、そろそろ参りましょうか」
「もうか?」
「はい。少し、村の方々に説明してほしいようなので」
「……十分話したと思ってたんだけどな……まあ、いい。行くか」

 デスフーイはそう言って、フィーレアと一緒に、トルフィーダに連れられ、牢を出ていく。
 チイルを閉じ込めるための扉が閉まり、外から鍵をかける音がした。
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